第十六話 足場
朝の空気は澄んでいた。
由貴は自然公園に入り、規制線を越えるとそのまま奥へ進む。
足取りは一定で、急がない。
立ち止まって準備運動を済ませ、枝を手に取る。
数回、軽く振って感触を確かめるだけだ。
ダンジョンに入る。
一層、二層は止まらない。
広場に出るたびに動きはあるが、あんずが前に出て処理する。
由貴は距離と配置を見るだけで、歩みは緩めない。
ここはもう、体を慣らす場所ではない。
三層の階段を降りる。
広場に出た瞬間、三つの影が動いた。
数は増えたが、速さも重さも変わらない。
由貴は位置をずらし、正面に一体だけを残す。
あんずが突進する。
二体に向かって、ぶつかるように入る。
一体が弾かれ、もう一体の動きが止まる。
その間に、由貴は目の前の一体へ入る。
枝を当てて逸らす。
踏み込みに合わせて位置を変え、同じ動作を繰り返す。
無理に速くしない。
確実に、同じ形で。
倒れる。
すぐに視線を切り替える。
横であんずが一体を押さえ、もう一体が立て直そうとしている。
由貴は間に入らず、角度だけ変える。
逃げ道を作らせない位置に立つ。
あんずが仕留める。
残った一体が動いたところで、由貴が入る。
同じ形。
同じ手順。
広場を抜ける。
少し進んで、また広場。
三体。
配置は違うが、やることは変わらない。
あんずが二体を引き受ける。
由貴は一体に集中する。
動きを増やさない。
同じ足運び、同じ角度。
途中で配置が崩れる。
弾かれた一体が近づく。
由貴は半歩だけ下がり、位置をずらす。
視界の端であんずの動きを確認し、先に一体を落とす。
数を減らす。
それだけで、場が落ち着く。
三層をいくつか回る。
同じ構図の戦闘が続く。
疲労は溜まるが、動きは崩れない。
一体ずつ、手順通りに。
やがて、下への階段が見えた。
由貴は足を止める。
今日は降りない。
理由を考える必要はない。
引き返す。
戻りも問題はない。
一層、二層を抜け、外に出る。
自然公園の空気は変わらない。
あんずは歩調を戻し、由貴の横につく。
由貴は時計を一度だけ確認し、そのまま家へ向かった。
朝のダンジョンは、もう特別ではない。
三層は、足場になり始めていた。
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