第十四話 教室の中の温度
学校が再開して、朝の時間割がいつもの形に戻った。
校門をくぐると、見慣れた校舎とグラウンドが目に入る。
特別なことは何もない。
ただ、人の数が戻ったぶん、音が少しだけ増えた。
教室に入ると、席はほぼ埋まっていた。
騒がしいわけでもなく、静かすぎるわけでもない。
休校前と同じ空気だ。
ダンジョンの話題は、出ない。
正確には、誰も口にしない。
休み時間に小声で何かを話している生徒はいるが、内容までは聞こえてこない。
授業が始まれば、全員が前を向く。
ノートを取り、黒板を見る。
それが当たり前のように続く。
由貴も同じように授業を受けた。
板書を写し、説明を聞き、要点だけを拾う。
頭の使い方は、ダンジョンにいる時と変わらない。
違うのは、体を動かさないだけだ。
昼休み、弁当を机の上に広げる。
教室で食べる生徒がほとんどだ。
誰かが外に行こうと誘うこともない。
自然と、この空間に留まる選択をしている。
食べ終わったあと、由貴は一人で道場に向かった。
部活は再開していない。
だが、鍵は開いている。
中に入ると、静かだった。
床の感触を確かめるように一歩踏み出し、枝の代わりに木刀を手に取る。
軽く振る。
音は乾いている。
朝に感じた動きと、ここでの動きは、ほとんど変わらない。
踏み込み。
間合い。
腕の角度。
違和感はない。
それだけ確認すると、由貴はそれ以上続けなかった。
長くやる必要はない。
教室に戻ると、午後の授業が始まる。
内容は難しい。
集中しなければ置いていかれる。
それでも、頭は自然と切り替わった。
放課後、校舎を出る頃には空が少し傾いていた。
家に向かって歩きながら、由貴は周囲を見渡す。
遠くに自然公園の方向があるが、視線はそこに留まらない。
今は、ここだ。
家に帰れば、夜がある。
調べる時間がある。
次に進むための整理をする時間がある。
由貴は歩く速度を一定に保ったまま、家へ向かった。
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