第十三話 日常
目覚ましが鳴る少し前に目が覚めた
時計を見る
余裕はないが、慌てる時間でもない
二階へ上がり、母の部屋をノックする
返事はない
もう一度声をかけると、短く返事が返ってきた
台所に戻り、朝食の準備を進める
特別なものは作らない
いつもの流れで、食べやすいものを並べる
母を起こして席につかせる
眠そうにしながらも、黙って食べ始めた
その様子を確認してから、次の準備に入る
玄関の音がした
姉が帰ってきたらしい
夜勤明けだと分かる足取りだった
顔を合わせると、短く目を合わせて、そのまま台所へ向かう
「ご飯あるよ」
そう声をかけると、姉は頷いて席につく
母と並んで食べ始めるのを見て、由貴は一度台所を離れた
散歩の準備をする
リードとハーネスを手に取る
枝も持つ
迷う理由はなかった
二人が食べ終わるのを待ち、あんずを呼ぶ
あんずはすぐに来た
落ち着いた様子で、言われたとおりに待つ
母と姉を見送ると、姉はそのまま二階へ上がっていった
今日はそのまま寝るのだろう
家を出る
あんずは横につけて歩く
前に出ない
しつけどおりの距離を保つ
自然公園へ向かう途中、街は静かだった
大きな混乱はない
ただ、補修された跡や、通行止めの看板が残っている
それ以上、由貴は気に留めない
公園に入ると、人の気配はなかった
規制線はそのまま
越えて進む
あんずの歩調が少しだけ変わるが、制止はしない
ダンジョンの入口で立ち止まる
由貴は軽く体を動かした
肩を回し、足を踏み替える
枝を握り、数回だけ振る
力は入れない
引っかかりがないかを見るだけだ
一層へ入る
広場に出ると、動きがあった
あんずが前に出る
由貴は距離と配置を確認する
今日は深くやらない
体を動かすことが目的だ
短い戦闘をいくつか挟み、時間を見る
二層へ行く余裕はない
戻る判断をする
外へ出ると、あんずはすぐに歩調を戻した
公園を出て、家へ向かう
途中で時計を確認する
問題ない
家に戻り、あんずを落ち着かせる
水を用意し、定位置へ
由貴はそのまま自分の部屋へ戻る
制服に着替える
荷物を確認する
黒いリュックは今日は使わない
いつもの鞄を手に取る
玄関を出る
鍵をかける
学校までは歩いて三十分
足取りは一定
頭の中で、朝の動きをもう一度なぞりながら、由貴は学校へ向かった




