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セ・パ・タ・!  作者: 日並うたたね
第1章

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9/18

第8話 黒い海賊船

「いいけど…でもその靴だとちょっと難しいかも」


「大丈夫!運動には自信があるんだ!」


そう言うと、染谷は坂下からボールを受け取った。


(さっきも思ったが...随分と軽いな)


直径は14㎝程。バレーボールとテニスボールの中間くらいのサイズ。

重さはスマートフォン程度とかなり軽い。

網目状になっており、材質はプラスチックでできているようだった。


ボールを放ると、染谷は落ちてくるボールを右足で蹴る。


「あっ!」


足の甲に当たったボールは角度を変え、明後日の方向へと飛んで行った。


「な、なかなか難しいね」


そう言うと、染谷はボールを拾い、再び蹴り始める。


「な?」


「あれ!?」


「ぐうぅ!!?」


ボールはあちこちに飛んでいき、一度も続くことがなかった。


(お、おかしい...こんなはずでは……!)


もう1度ボールを放り投げ、右足で蹴り上げると、今度は少し高くボールが上がった。


しかし、ボールは染谷の後方へ。


(くっ…そおぉぉっ!!)


何とかボールに食らいつこうと脚を思いっきり伸ばす。


すると__


ドスンッ!


「だ、大丈夫、染谷君!?」


心配した坂下が寺田とともに近づいていく。


するとそこには…


股割り状態で固まっている染谷の姿があった。


ふっふっ…


それを見た寺田はもう堪えることができなかった。


「あ~っはっはっはっは!!大地お前…それ……コ、コンパスじゃね~んだから!!!」


大笑いしている寺田の前で染谷は顔を真っ赤にしている。


「ぐうぅ…」


染谷は立ち上がると


「いや、これ明らかにこのボールがおかしいだろ!それに…」


そして、染谷は決して口にしてはいけない言葉を発してしまう。


「やってることもなんか地味だし…全然カッコよくないぞこれ!」


すると、先ほどまで心配していた坂下の表情がみるみると変わっていった。


「地味…ピクッ…カッコ悪いぃ……ピクピクゥ!」


「え、あれ?坂下さん…?」


坂下の異変に動揺する寺田。


すると坂下はボールを拾い上げ、天高く放り投げた。


そして____


彼女はふわりと宙に舞い上がる。

その姿は…美しい弧を描いていた。

その光景に染谷も寺田も目を奪われる。


だが、次の瞬間__


ッパアァン!!


とてつもない破裂音と共にボールが染谷のみぞおちに深々と突き刺さる。


「ぐふうぅ!!」


「大地ぃ~!!!」


崩れ落ちる染谷を見て叫ぶ寺田。

坂下は倒れ込んだ染谷の襟元をつかむと


「…今なんて言った!?」


(え?ちょ…これホントに坂下さんか!?ってか……坂下さんも二面性女子かよ~!???)


「ねぇ?なにが地味だって!?なにがダサいって!!?何がマイナースポーツのくせにだって!!???」


「いや、そこまでは言ってな…」


「言い訳すんな!そもそも...ボール一つまともに蹴れないくせに、セパタをバカにするあんたの方がよっぽどダサいんだよ!!」


怒りの火力は最高潮。


___その時、染谷のポケットからスマホが鳴った。


ピロリロリン♪ピロリロリン♪


染谷はスマホを確認すると


「テラ…帰るぞ」


「へ?」


「あと少しで"だてまき君とトマトちゃんの事件簿"が始まってしまう!」


そう言うと、染谷は慌てて立ち上がり走り出した。


「おい!ちょっと待てよ!!…ごめん、坂下さん!先帰るね!」


寺田も染谷の後を追いかける。


「因みにな~大地!その番組、今日の第2話で打ち切りらしいぞ?」


「なにぃ!?まだ事件すら起きてないんだぞ!?」


走り去ってゆく二人を坂下は遠目で見つめていた。


「なんなのよあれ」


坂下は再びボールを蹴り始めた。


トン・・トン・・タタン・・


(ホント…なんなのよ…)


(でも、アイツ......身体めっちゃ柔らかかったな……)


このとき、坂下はまだ知らなかった。

この出来事が、彼女の高校生活を大きく変えることになることを__





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