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セ・パ・タ・!  作者: 日並うたたね
第2章

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第17話 屋上のフラミンゴ

「練習場所?」


放課後の教室。 宮下との面談を終えて戻ってきた3人は、今後の活動について話し合っていた。


坂下「ええ。先生が確保してくれるとは言ってたけど、今日明日すぐに使えるわけじゃないと思うの。だから、それまでの間できることをやっておこうと思って」


染谷「なるほど。流石は副部長、用意周到だな。……で、どこで何をやるんだ?」


坂下「場所は屋上。やることは__『地獄のフラミンゴ』よ」


寺田「……は?」


***


春の風が心地よく吹き抜ける屋上。 青空の下、3人の生徒が並んで立っていた。


染谷「ボールは使わないのか?」


準備運動をしながら、染谷が不満げに尋ねる。


坂下「使わないわ。というか、今のあなたたちじゃ使えない」


坂下はピシャリと言い放つと、仁王立ちで二人を見据えた。


坂下「いい? セパタクローは、基本的に片足でボールタッチすることになるわ。つまり__」 「どんな体勢でも崩れない『体幹』と『バランス感覚』。これがなければ、ボールを蹴る以前の問題よ!」


染谷「ふっ……なるほど。基礎こそが奥義に通ずる、というわけか」


寺田「(また変な解釈してるよ……)」


坂下「じゃあ始めるわよ。まずは片足立ち。目を閉じて、その場でキープ!」


合図と共に、3人は一斉に片足を上げる。


染谷「なんだ、これくらい。造作もない」


染谷はスッと右足を上げると、微動だにせずポーズを決める。 背筋はピンと伸び、その姿はまるで修行僧のようだ。


(……へぇ。やっぱり凄いわね)


坂下は横目で染谷を見る。 普通の人間なら、視覚情報を遮断されると多少はグラつくものだ。 だが、染谷の重心はビクともしていない。 まるで足の裏が地面に吸い付いているかのような安定感。


(あんな適当な性格なのに、身体の軸だけはブレないんだから……悔しいけど、才能ね)


一方__


寺田「くっ……ううぅ……!」


開始5秒。 寺田は生まれたての子鹿のようにプルプルと震えていた。


寺田「ちょ、まっ……これ、地味にキツい……!」


坂下「寺田君、膝が笑ってるわよ。体幹に力入れて!」


寺田「い、入れてる! 入れてるけど……地面が揺れてる気がするぅぅ!」


ドサッ。


寺田がバランスを崩して倒れ込む。


染谷「ふっふっふ……修行が足りないな、テラ。心の目を開くんだ」


寺田「うるせーよ! お前がおかしいんだよ!」


坂下「はい、次は『手押し相撲』よ。片足立ちのまま、手を使って相手のバランスを崩した方が勝ち」


今度は向かい合っての対戦形式だ。


染谷「手加減はしないぞ、テラ」


寺田「望むところだ……!」


二人は片足立ちになり、互いの手のひらを突き出し合う。


染谷「ふんっ!」


寺田「っと!」


染谷の鋭い突きを、寺田は上体を反らしてかわす。 普通ならそこでバランスを崩しそうなものだが、寺田はグッと腹筋に力を入れ、体勢を立て直した。


染谷「ほう……?」


染谷が少し驚いた顔をする。 その後も、染谷の攻撃を寺田は粘り強く耐え続けた。 派手さはないが、倒れない。


坂下「(意外ね……)」


坂下は感心したように二人を見る。


坂下「寺田君もなかなか良い体幹してるのね。よく見たら身体も結構鍛えてるみたいだし。何かスポーツやってたの?」


寺田「え? いや、スポーツっていうか……」


寺田が口ごもると、染谷がニヤリと笑った。


染谷「筋トレだ」


坂下「筋トレ?」


染谷「こいつは毎日、腕立て、腹筋、背筋を欠かさずやっている。それこそ、狂気じみた回数をな」


坂下「え、凄くない!? なんでまたそんなに……」


寺田「いや、それはその……」


染谷「俺の姉貴の影響だ」


寺田「おい大地! バラすなよ!」


染谷「姉貴が昔言ったらしいんだ。『ジェイソン・ステイサムっておとこよね。と」 「それ以来、こいつはステイサムを目指して筋肉をいじめ抜いているというわけだ」


坂下「ジェイソン……ステイサム……?」


坂下の脳内に、ハリウッドのアクションスターと、寺田の姿が並ぶ。 あまりのミスマッチさに、思考が停止した。


寺田「ち、違う! 俺はただ、美空さんをお姫様抱っこできる腕力が欲しいだけで……!」


染谷「無駄な努力だ。あんなゴリラ、抱え上げたら腰が砕けるぞ」


寺田「貴様ァ! 美空さんをゴリラ呼ばわりするな! あの方はこの過酷な現代社会に存在する唯一のオアシスだぞ!!」


染谷「オアシス? ジャングルもいいとこだろ」


ギャーギャーと言い合う二人を見ながら、坂下はポツリと呟く。


坂下「(染谷のお姉さん……一体どんな人なんだろう)」


いろんな意味で興味が湧いてくる坂下だった。


***


そんな3人の様子を、屋上の入り口からこっそりと覗く影があった。


「おい……あれ見ろよ」


「一体……何してんだ?」


彼らの視線の先には__


片足で立ち、目を閉じ、何やらブツブツと呪文ステイサムがどうとかを唱えながら、奇妙なポーズで静止する3人の姿。


「あれ、染谷と坂下さんだよな?」 「入試トップの二人だろ……?」 「なんか……空に向かって交信してね?」


ザワッ……


「もしかして、UFO呼ぼうとしてるとか?」 「すげぇ……そんなことまでできるのかよ」


こうして、セパタクロー部が本格始動する前に__ 「染谷、坂下、屋上でUFOと交信」という噂だけが、学校中に広まっていくのであった。

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