第14話 熱い青春の幕開け
染谷「こいつらにはさ、坂下が言う"熱"っていうのがあるんじゃないのか?」
染谷は覚悟を決め、話を続ける。
染谷「坂下と同じだ。こいつらはセパタクローが大好きで、この競技に全力で取り組んでる」
「ここでだって......セパタクローはできるんだ!」
坂下「でも......また、競技のことを知りもしない人達から馬鹿にされたら......」
染谷「サッカーだったら良かったのか?」
坂下「え?」
染谷「野球だったら良かったのか? バスケットボールなら_____」
「違うだろ? 坂下は、セパタクローだったからやりたいと思ったんだ」
「なら、周りがどう思っていても関係ないだろう。この国でマイナーだからなんだ? そんなマイナーな競技を好きな奴だっている。"熱"を持ってる奴らだって......確かにいるんだ!」
言葉にさらに"熱"が足される。
染谷「それに......少しずつではあるが、競技人口も認知度も増えている。昔は部活動さえなかったのに__今は全国にまで広がっている。これがどういうことかわかるか?」
坂下「......」
染谷「熱は伝染するんだ。坂下の熱だって___きっと誰かに伝わる!」
坂下「私なんかが......誰かに影響を与えるなんて......」
染谷「俺には伝わったぞ」
そのとき......
先ほどまで吹いていた風が___
ぴたりと止んだ。
染谷「だから......俺はやりたいと思ったんだ。お前と」
「......一緒にやろう! 坂下!!」
どこまでも真っすぐな瞳。
その"熱"で、自分の中でなにかがほどけていくのを彼女は感じた。
坂下「ふふっ......」
染谷「な、なにがおかしい!?」
坂下「ううん。なんかね、一人で悩んでいたのが馬鹿みたいだなって思っちゃって。」
「そうね......周りを気にして、自分の大切なものに蓋をするなんておかしな話だわ!」
寺田「え~っと......ってことは」
坂下「......やるわ! 作りましょう! セパタクロー部を!」
彼女の言葉に、染谷と寺田は互いに顔を見合わせる。
染谷・寺田「うおぉぉぉぉぉ!!!」
二人の異様な盛り上がりに、坂下は驚いた表情を見せた。
坂下「ちょっと! 二人とも、なんでそんなにはしゃいでるのよ?」
寺田「いや、だってな!? 俺、絶対断られると思ってたし!」
染谷「そうか? 俺はいけると思っていたが......」
寺田「へぇ?__ここに来る前、あんなにガチガチになってたくせにか?」
染谷「そ、そんなことはないだろ!!」
はしゃぐ二人の様子を見て、坂下は大きな声で笑った。
つい先ほどまでの緊張が、まるで嘘のように。
坂下「それにしても__染谷。あんたは凄いね。私の悩みを......全部吹き飛ばしてくれた」
「どこまでも真っすぐで......迷いがなくて。きっと、あんたは昔からそういう人なんでしょうね」
染谷「はっはっは! まあな......」
ズキン.....
染谷「......ん?」
寺田「どうした、大地?」
染谷の中で何かが音を立てる。
だが、その痛みの理由まではわからなかった。
染谷「いや......なんでもない」
不思議そうな顔をする染谷の隣で、思い出したかのように坂下が話しを続ける。
坂下「それにしても......よくあんな凄いものを作ってきたわね。細かく編集もされてたし......」
染谷「テラに言われたんだ! "言葉だけじゃあ伝わらないかもしれない"と! それならば......"熱"を持ってる奴らを見てもらうのが一番だと思ってな!」
坂下「そうなのね......ありがとう、二人とも」
「でも、寺田君はいいの? この間、美術部がどうとかって言ってたけど......」
寺田「ああ......まあしばらくはね。新しく部員が入るまでは協力するよ」
寺田は少し困った顔をしながらも、"ニッ"と笑った。
坂下「でも、部員は私たち3人だけだし、顧問の先生だって必要でしょ? ___やることは沢山ありそうね」
染谷「問題ない! やると決めたなら......あとは動くだけだ!」
染谷は空に向かって"グー"を出した。
「なにそれ?」と笑う坂下に、染谷は大好きだったアニメの話をする。
「速攻で打ち切りになったんだよな?」という寺田の言葉に、坂下はまた大きな声で笑った。
***
懐かしいよな
坂下にセパタクローをやらせたいって
あの時のお前はえらく必死でさ
......今思えば、羨ましかったんだろうな
自分が持っていないものを
彼女は持っていたから
そんな坂下の大切なものが
今は、お前の宝物になってる
__あそこから始まったんだ
あの公園で、最初の3人が集まって
俺たちの青春は、一気に加速していった
そしてその熱は___
一気に伝染していったんだ
ーー第1章 完ーー




