第13話 同志
カタカタカタカタ......
染谷「よし。これくらいでいいだろう」
「___おっと、もうこんな時間か。そろそろ学校へ行く準備をしなければ」
***
キーンコーンカーンコーン......
朝のチャイムが鳴る。
席に着くと、染谷は後ろに座る寺田に声をかけた。
染谷「テラ。今日の放課後、付き合ってくれるか?」
寺田「ん? もしかして......例のやつ、できたのか?」
染谷「ああ。これを__あいつに見せてやりたい」
寺田「......わかったよ。でも、強制はすんなよな?」
染谷「わかっている」
***
放課後、芝原公園___
トン・・・トン・・・
タタン・・・トン・・・
トーン・・・パシッ
坂下は、ボールを蹴り上げるとそれを両手で掴んだ。
リフティングをやめたのは、見知った男が視界に入ったからだった。
坂下「どうかしたの? また、寺田君の絵の題材でも探しに来た?」
軽く笑う坂下を、染谷は真っすぐ見つめていた。
染谷「坂下......」
「一緒に、セパタクロー部を作らないか?」
坂下「またその話? 言ったでしょ。私は、ここでセパタクローをやるつもりはないって」
彼女はひとつため息をつく。
染谷「ああ、知っている。だが______お前こそ知っているのか?」
坂下「知ってるって......なにをよ?」
そよぐ風で、木々が微妙に揺れている。
染谷「お前と同じような奴らが、この国にもいるってことをだ」
染谷はバッグの中からタブレットを取り出した。
染谷「これを見てほしい。見れば......俺の言ってる意味がわかるはずだ」
坂下はタブレットを受け取った。
画面には「熱」とだけ書かれたものが映し出されている。
それが動画だと気付き、彼女は再生ボタンを押した。
・・・----・・・・----
ガヤガヤ......ガヤガヤ........
千葉県三沢高校
「え~っと......どうも! 千葉県三沢高校セパタクロー部です!
去年、日本代表の親善試合をネットで見て、僕たちもやってみたいなって話になって。それで、中学の同級生達と部を立ち上げました!
始めたばっかりだし、全員へたくそなんですけど......これからたくさん練習して上手くなりたいです! よろしくお願いします!」
沖縄県 嘉手納南高校
「沖縄県! 嘉手納南高校セパタクロー部でーす!
コート上で俺たちが一番楽しむ! をモットーに活動中!
ビーチで今日も砂まみれになりながら仲間と練習してまーす!
えーっと、あとは......あっ! 俺たちの華麗なプレイに......度肝抜かれんなよ!?」
神奈川県 百山高校
「神奈川県、百山高校セパタクロー部です。
チームとしての目標は全国制覇。個人としての目標は日本代表。
そして、プロになることです。よろしくお願いします」
・・・----・・・・----
坂下「これって......」
染谷「全国にある、セパタクロー部の紹介動画だ。各学校がSNSに上げていてな......セパタクロー発展のための取り組みらしい」
坂下「......」
染谷「まだまだ序盤だ。さあ、続きを見てくれ」
・・・----・・・・----
その後も部活紹介の映像が続く。
後半は、各校の練習風景が収められていた。
全部で約1時間にも及んだが、坂下は夢中になって映像を見つめていた。
坂下「ああ! そこで蹴ったらボールが変なところに飛んでっちゃう!」
「うわぁ! 砂浜だと、怪我を恐れず色々試せるのね!」
「この人たち......凄く上手......日本にもこんな人たちがいるなんて......」
・・・----・・・・----
動画が終わった後も画面をじっと見続ける坂下に、染谷はそっと声をかけた。
染谷「どうだった?」
坂下「......全然知らなかったわ。いるのね、こういう人たちも」
彼女は、どこか羨ましそうな表情を見せている。
そんな坂下を見て、染谷は意を決したように言葉を発した。
染谷「こいつらにはさ、坂下が言う"熱"っていうのがあるんじゃないのか?」




