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セ・パ・タ・!  作者: 日並うたたね
第1章

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12/18

第11話 熱

3限目 体育


「こっちこっち! パスパース!!」

「俺に回せ! 俺に!!」


授業は男女別で行われていた。

男子はグラウンドでサッカー。

女子は屋外コートでバスケットボール。


コート外で休憩中の女子が合間を縫ってちょこちょこ見に来るため、

男子はなんとか良い恰好を見せようと張り切っていた。


だが_

今日はこの男の独壇場。


榎本汰月えのもとたつき


スポーツ推薦で入学した彼は、桜川東高校サッカー部が、

初の全国への切符を掴む為の最後のピースであった。


ドンッ!!


鈍い音と共に撃ち抜かれたボールが、ゴールネットに突き刺さる。

キーパーは反応することさえできない。


「おいおい! あんなん、どうやったら止められるんだよ!」

「同じ人間の動きじゃね~ぞ!」


同級生たちは榎本の華麗なプレイに手も足も出ない。


安代「確かに凄い......止められる可能性があるとしたら__」


安代智樹あしろともき


中学でバレーボール部のマネージャーだった彼は、

榎本のプレイをじっと眺めていた。

そして、ふと染谷の方を向く。


フィールドの端では、ボーっと突っ立っている染谷に寺田が声をかけていた。


寺田「大地。お前、また坂下さんのことじ~っと見つめてんのかよ。」

「今日の朝言われたろ? 坂下さん、ここじゃセパタクローはやらないって」


染谷「......」



染谷「できないとは......どういう意味だ?」


坂下「......」


染谷「好きなんだろ? 公園で一人でボールを蹴るくらい! それなら__ここでも本格的にやってみたらいいじゃないか!」


坂下「......馬鹿にされたのよ」


染谷「なに?」


坂下「馬鹿にされたの。日本に戻ってきた時にね」

「クラスメートから声をかけられて、タイでの生活とか色々と話したのよ。で、セパタクローの話もしたわけ。......随分と熱く語った覚えがあるわ」


染谷「......」


坂下「そしたらね、その場で調べだした子が『へ~随分とマイナーな競技なんだ』って言ってね。終いには『これだけマイナーなら坂下さん、将来有名になっちゃうかもね』なんて馬鹿にしたような顔で......」


寺田「......なんだよそれ」


坂下「みんなはそれを聞いて笑ってたわ。多分、意味もなく笑ってただけなんでしょうけど......物凄く腹が立ってね」


染谷「もしかして......ぶつけてやったのか? あのボールを?」


坂下「そんなことするわけないでしょ! って、あんたにやっちゃったんだから説得力ないわね」


坂下は悔しさを表情に滲ませながら続ける。


「私は......結局その場で笑うしかなかった。ちゃんと笑えてたかなんてわからないけど.....結局なにも言い返せなかったの」

「そんな自分が......許せなかった」


染谷「......」


坂下「私にはね......夢があるの。タイに戻ってプロの選手になるっていう夢がね。あの国には、私と同じ熱を持った人たちが沢山いるわ」

「さっき、部活動が盛んになってるって言ってたわね? きっとたかが知れてるわよ。......現にあなたたちだって、セパタクローのことを知らなかったじゃない」

「だから__ここではやらない。もうこれ以上、好きなものを馬鹿にされたくない......」


坂下は俯きながらこぶしを握り締めている。


染谷「......なあ、」


染谷が何かを言いかけると


キーンコーンカーンコーン


朝のチャイムが学校内に鳴り響く。


坂下「もう__行かないと」


教室へと向かう坂下の背中を、染谷はじっと見つめていた。



寺田「無理やり誘ったってさ、坂下さんのためにはならないんじゃね?」


染谷「......本当にそうなのか?」


寺田「え?」


捉えどころのない空気が流れる中、安代が割って入る。


安代「二人とも、もうそろそろ授業に戻らないと!」


寺田「あ、そうだよ! 俺たち同じチームなんだから、二人も抜けたら不利になっちまうじゃんか!」


安代「うん。しかも、相手チームの榎本君が無双状態で誰にも止められないんだ!!」

「唯一止められるのは.....染谷君だけだと思う」


寺田「だってよ! 聞いたか大地!? サボってた分、しっかり働いてこい!」


染谷「......そうだな」


染谷は一つ息を吐くと、フィールドの中央へと走っていった。





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