食材
part.1
卵って、買って冷蔵庫に入れとくじゃん?
夜中にぴぃぴぃ鳴くんだよね。
で、パックごと外に出すと鳴き止むんだ。
寒くて鳴いてるのか可哀想に。
って鳴く卵だけ温めてやろうと思って
一個一個手にとろうとすると、そん時はやっぱり鳴き止むの。
……ずっと常温でいいのかな。どうしよう。
どうすりゃいいと思う?
冷蔵庫の中で、ぴぃぴぃ鳴いてる卵たち。
俺、卵焼き食いたくて買ったのに、
これじゃぁ料理できないよ。
なきたいのはこっちだよ、全く。
part.2
祓い屋だという友人,津田がくだんの卵を料理してくれることになった。
なぜか、外に出してもぴぃぴぃ大合唱する。
でも津田くんはそれを黙殺して、
全ての卵を割り、酒と塩、粉末出汁と水を加えて溶いていく。
熱した卵焼き器に、躊躇いもなく流し込む。
じゅわぁぁ、
ぴぃぴぃぴぃ。
じゅわぁぁ、
ぴぃぴぃぴぃ……ぴ……。
無言になった出汁巻き卵はふわふわで旨かった。
part.3
「刺し身が跳ねようが豚肉が走ろうが気にするな。
塩撒いて六字名号でも九字でも唱えれば大丈夫だ。
けれども調理は僕が担うので、風変わりな食材に出会ったら連絡を」
と津田くんに言われた。
俺の目の前で蠢き伸び続ける牛蒡についても連絡したほうが良いかな。