聖女大元帥の誕生
【世界平和機構本部 - 旧アーテミス王都】
西大陸1億人の危機を解決してから2ヶ月が経過していた。世界平和機構本部となった旧王都は、各大陸からの代表団や平和維持軍で活気に満ちている。
アリア・フォン・アーテミス世界平和機構最高司令官(21歳)は、愛馬フェリスと共に朝の散歩を楽しんでいた。
「フェリス、随分平和になりましたね」
美しい栗毛の牝馬は、主人の言葉を理解しているように静かに歩いていた。2ヶ月前の西大陸での決死の戦いを経て、フェリスもアリアとの絆をより深めていた。美しい栗毛の牝馬は、主人の変化を敏感に感じ取っているようで、いつもより誇らしげに見えた。
【世界平和の現状】
- 加盟国:248カ国(世界総国数の85%)
- 平和期間:全世界軍事紛争ゼロ件が2ヶ月継続
- 平和維持軍:40万人(各大陸統合軍)
- 古代技術普及:クリーンエネルギー、環境修復技術が段階的に展開
「最高司令官、本日の重要な式典の準備が整いました」
ガレス・ド・モンクレア副司令官が、厳粛な表情で報告した。
「聖女・大元帥昇格式典ですね」
アリアが少し緊張した様子を見せた。
「西大陸1億人を救った功績により、世界各国と12大信仰指導者から推薦された栄誉ある称号です」
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【午前10時 - 世界平和機構大聖堂】
世界平和機構本部に新設された大聖堂で、歴史的な昇格式典が開催された。
【式典参加者】
各大陸代表:
- カール・アイゼンハルト皇帝:ガルディア帝国代表
- エリック・ストームライダー大臣:極東連邦平和防衛省大臣
- アウグストゥス皇帝:サンクトゥス帝国代表
- ヴィクター・スチールハート議長:西大陸統合議会議長
- エレナ・クリスタルハート理事長:国際資源管理機構理事長
- アレクサンドル・アイアンフィスト顧問:世界平和維持軍顧問
12大信仰指導者:
- セラフィム・ライトブリンガー導師:光明教最高導師
- バランス・ハーモニウス大師:調和の道大師
- アース・ドルイダス賢者:自然信仰の森の賢者
- その他9名の各信仰代表
軍事指導者:
- マーシャル・ストラテジー議長:極東連邦統合参謀本部議長
- ジェネラル・ヴィクトリー司令官:西大陸軍事同盟最高司令官
- 各国軍事代表50名
【聖女称号の授与】
「アリア・フォン・アーテミス最高司令官」
セラフィム導師が厳粛に宣言した。
「あなたの自己犠牲的行動により、1億人の生命が救われました」
「この功績は、いかなる信仰の枠を超えた『聖女』としての行為です」
12大信仰指導者が一斉に立ち上がった。
「全世界の信仰を代表し、『聖女アリア』の称号を授与いたします」
金色に輝く聖女の冠が、アリアの頭上に置かれた。古代技術により作られた冠は、神聖な光を放っている。
【大元帥称号の授与】
「聖女アリア・フォン・アーテミス閣下」
マーシャル・ストラテジー議長が軍事的敬意を表した。
「40万人の世界平和維持軍を指揮し、数々の軍事的危機を平和的に解決された功績を称えます」
「全世界の軍事指導者を代表し、『大元帥』の階級を授与いたします」
七つ星の大元帥章が、アリアの軍服に装着された。これは人類史上初の、全世界軍を統括する最高軍事指導者の証だった。
【アリアの受諾演説】
「皆様からの過分な栄誉に、深く感謝いたします」
アリアが聖女の冠と大元帥章を身につけ、壇上で演説した。
「しかし、これらの称号は私個人のものではありません」
「共に戦った仲間たち、古代技術の守護者たち、そして平和を願うすべての人々の力によるものです」
「私は『聖女大元帥』として、さらなる世界平和の実現に尽力することを誓います」
会場から盛大な拍手が響いた。
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【式典終了後 - 世界平和機構情報分析室】
聖女大元帥昇格式典の興奮が収まらぬ中、情報分析室では不穏な報告が上がっていた。
「聖女大元帥、極めて重要な発見があります」
第5師団情報部長が、機密データを持参した。
「太平洋の深海から、未知の信号を受信しています」
【謎の海底信号の詳細】
- 発信源:太平洋海底3,000-5,000m地点
- 信号の特徴:高度に組織化された電磁波パターン
- 頻度:24時間周期で定期的に発信
- 範囲:太平洋全域をカバーする大規模ネットワーク
- 技術レベル:現代技術を遥かに上回る高度性
「これは...人工的な信号ですね」
アリアが分析データを確認した。
「しかし、どの国も海底3,000mに通信設備を設置した記録はありません」
「そうです。既知のいかなる技術でも説明できません」
情報部長が困惑した表情を見せた。
「可能性として考えられるのは...」
「...未知の海底文明の存在」
エドモンド・アルカナス博士(70歳)が重大な可能性を示唆した。
「古代文明の記録には、『海の民』に関する断片的な記述があります」
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【テクノス・アルカナ古代図書館】
エドモンド博士の案内で、アリアは古代文明の機密図書館を訪れた。
「こちらが『海の民』に関する最古の記録です」
博士が5,000年前の古代文献を開いた。古代文字が金色に光っている。
【古代文献『大陸と海の盟約』より】
『陸の民と海の民は、太古より異なる道を歩んできた』
『陸の民は大地を耕し、都市を築き、技術を発展させた』
『海の民は深海に潜り、水と共に生き、調和を保ってきた』
『しかし、陸の民の文明が拡大するにつれ、海は汚され始めた』
『海の民は深海に退き、5,000年の沈黙を守ることとなった』
『その沈黙が破られるとき、陸と海の最終的な対話が始まる』
「5,000年の沈黙...」
アリアが古代文献の意味を理解し始めた。
「つまり、海底には5,000年前から続く独立した文明が存在するということですね」
「その通りです」
エドモンド博士が確信を持って答えた。
「そして、現在の海底信号は、その『海の民』からの何らかのメッセージかもしれません」
【さらなる古代記録の発見】
「聖女大元帥、こちらの記録もご覧ください」
博士が別の古代文献を開いた。
『海の民の数は少なくない』
『彼らは太平洋の海底都市群に1,000万人以上が住まう』
『高度な技術により、海底での完全な自給自足を実現している』
『しかし、海洋汚染が限界に達したとき、彼らは行動を起こすであろう』
「1,000万人の海底文明...」
アリアが規模の大きさに驚いた。
「それだけの人口を持つ文明なら、確かに高度な技術を持っているでしょう」
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【午後2時 - 緊急評議会】
海底文明の可能性を受けて、世界平和機構緊急評議会が開催された。
「各大陸代表の皆様、重大な発見をご報告します」
聖女大元帥アリアが、新たな称号で初の重要会議を主宰した。
「太平洋海底に、5,000年の歴史を持つ独立文明が存在する可能性があります」
【各代表の反応】
カール皇帝(ガルディア帝国):
「5,000年の文明...我々の歴史よりも古い」
「彼らがこれまで隠れていたのには、何らかの理由があるはずだ」
ストームライダー大臣(極東連邦):
「海洋技術では我々が最も進んでいるが、海底3,000mの文明は想像を超えている」
「友好的な接触を試みるべきではないか」
アウグストゥス皇帝(サンクトゥス帝国):
「未知の技術を持つ文明...我々の魔導技術と比較してどうなのか」
「平和的な技術交流の可能性も考えられる」
ヴィクター議長(西大陸統合議会):
「つい2ヶ月前、我々は1億人の危機を経験した」
「海底文明が敵対的だった場合、対応が困難になる」
エレナ理事長(国際資源管理機構):
「環境問題の専門家として言えば、海洋汚染は確実に深刻化している」
「海底文明が行動を起こす理由として、環境問題が最も可能性が高い」
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【国際環境調査団の緊急報告】
「聖女大元帥、海洋環境の最新調査結果をご報告します」
国際環境調査団長が、衝撃的なデータを提示した。
【地球海洋汚染の現状】
太平洋汚染レベル:
- プラスチック汚染:年間800万トンの海洋流入
- 化学物質汚染:工業排水による重金属汚染拡大
- エーテル汚染:過去のエーテル実験による海底土壌汚染
- 酸性化:CO2増加による海水pH低下
海洋生物への影響:
- 絶滅危惧種:海洋生物の30%が絶滅危機
- 食物連鎖破壊:プランクトンから大型魚類まで全面的影響
- 珊瑚礁白化:世界の珊瑚礁80%が深刻な被害
- 深海生態系破壊:海底3,000-5,000m地域も汚染拡大
「これは...想像以上に深刻ですね」
アリアが海洋汚染データに愕然とした。
「海底文明が5,000年間沈黙を守ってきたのに、今になって信号を発信し始めた理由が理解できます」
エレナ理事長が環境専門家として分析した。
「彼らの生存環境が、限界に達している可能性があります」
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【夕方 - 王城の厩舎】
重大な決断を前に、アリアは愛馬フェリスと共に静かな時間を過ごしていた。
「フェリス、今度は海の文明との対話です」
アリアがフェリスの鬣を撫でながら、複雑な心境を語った。
「これまでは陸上の戦いでしたが、今度は海が舞台になりそうです」
フェリスが理解しているように、静かに首を振った。聖女大元帥の冠を被ったアリアを見て、誇らしげな表情を浮かべている。
【ベネリM3ショットガンの確認】
「ベネリも、海戦に対応できるよう準備が必要ですね」
アリアが愛用のベネリM3ショットガンを手に取った。
VRアーティファクトから最初に獲得した記念すべき武器は、数々の戦いを共に戦い抜いてきた。
「海底文明との戦いになるかもしれません」
「でも、できれば平和的な解決を実現したいのです」
【VRアーティファクトの新機能解放】
「VRアーティファクト、海洋戦闘に対応した新シナリオはありますか?」
アリアが愛用の装置に相談した。
『新シナリオ解放:深海外交プロトコル』
『新シナリオ解放:海洋環境危機管理』
『新シナリオ解放:水中戦闘戦術』
『新シナリオ解放:海底文明ファーストコンタクト』
『新シナリオ解放:環境外交戦略』
「海底文明とのファーストコンタクト...」
アリアが興味深いシナリオに注目した。
『5,000年の孤立を経た海底文明との初接触シミュレーションです』
『文化的相違、技術格差、環境問題などの複合的要因を考慮した外交戦略を学習できます』
「これで準備は整いました」
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【深夜11時 - 世界平和機構通信センター】
その夜、太平洋海底から正式なメッセージが届いた。
「聖女大元帥!海底からの信号が文字化されました!」
通信技術者が興奮して報告した。
「これは...古代文字に似ていますが、独特の海洋文字です」
エドモンド博士が急いで解読作業を開始した。
【海底文明からの公式メッセージ】
『陸の支配者たちへ』
『我々は太平洋海底国家連合、5,000年の沈黙を破り、緊急事態を宣言する』
『海洋の汚染が我々の生存限界に達した』
『陸上文明による海洋破壊の即刻停止を要求する』
『48時間以内に責任ある回答がない場合、我々は自衛のための行動を開始する』
『海底都市群代表:ネプチューン・アトランティス議長』
『科学顧問:アクア・マリーナ博士』
『軍事司令官:アビス・クラーケン提督』
「48時間の最後通牒...」
アリアが深刻な表情を浮かべた。
「彼らは本気で怒っています...!」
【海底文明の警告の深刻さ】
「聖女大元帥、さらに詳細な情報が入りました」
情報部長が追加報告をした。
「海底文明の技術力は、我々の想像を遥かに超えています」
【海洋国家連合の推定戦力】
- 人口:1,500万人(当初推定の1.5倍)
- 海底都市:太平洋全域に50以上の巨大都市群
- 技術レベル:古代技術に匹敵する独自の海洋技術
- 軍事力:詳細不明だが、海洋全域を制御可能
- 歴史:5,000年間の独立した文明発展
「1,500万人の海底文明...」
ガレス副司令官が軍事的脅威を分析した。
「海洋を戦場とした場合、我々の40万人平和維持軍では対応が困難です」
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【環境危機の全容判明】
海底文明からのメッセージを受けて、緊急環境調査が実施された。
「聖女大元帥、海洋汚染の実態は予想以上に深刻でした」
国際環境調査団が、衝撃的な調査結果を発表した。
【海洋汚染による文明存亡危機】
海底文明への直接的脅威:
- 居住環境破壊:海底都市周辺の水質汚染拡大
- 食料供給危機:海洋生物の大量死により食料不足
- 健康被害:化学物質汚染による住民の健康問題
- 文化的危機:5,000年維持してきた海洋文化の危機
地球全体への長期的影響:
- 気候変動加速:海洋の二酸化炭素吸収能力低下
- 食料危機:陸上文明の海洋食料への依存度70%
- 経済的破綻:海洋関連産業の壊滅的打撃
- 生態系崩壊:地球全体の生態系バランス破壊
「これは陸と海、両文明の存亡に関わる問題です」
エレナ理事長が環境専門家として警告した。
「海底文明の怒りは当然であり、同時に我々自身の生存もかかっています」
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【極秘情報の入手】
「聖女大元帥、海底文明の真の力に関する情報を入手しました」
極東連邦の海洋調査船から、機密報告が届いた。
「彼らの技術力は、我々の軍事力を遥かに上回っています」
【海洋国家連合の実際の能力】
海洋制御技術:
- 海流操作:太平洋の海流を自在に制御
- 気象操作:台風、津波などの自然現象を誘発可能
- 海底地震誘発:海底プレートを操作し地震発生可能
軍事技術:
- 深海戦闘艦:水深10,000mでも活動可能な戦闘艦
- 海洋生物兵器:海洋生物を軍事利用する生体兵器
- 水圧兵器:海水の圧力を利用した破壊兵器
防御システム:
- 海底バリア:海底都市を完全に保護する防御結界
- ステルス技術:現代技術では探知不可能な隠蔽能力
- 自給自足システム:海底での完全独立生存能力
「これは...軍事的対決では勝算がありません」
ウォルター・オールドガード統合軍参謀長が軍事的現実を認めた。
「海洋という彼らの本拠地での戦いでは、我々に勝機はないでしょう」
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【翌朝 - 緊急戦略会議】
海底文明の48時間最後通牒を受けて、世界平和機構の緊急戦略会議が開催された。
「各代表の皆様、事態は極めて深刻です!」
聖女大元帥アリアが会議を主宰した。
「軍事的対決は不可能、しかし環境問題の根本解決も短期間では困難です」
【各大陸の対応提案】
極東連邦の提案(ストームライダー大臣):
「海洋技術の専門家として、段階的な環境改善計画を提示します」
「3年間で海洋汚染を50%削減、10年間で完全回復を目指します」
西大陸統合議会の提案(ヴィクター議長):
「工業生産を30%削減し、環境に配慮した生産システムに転換します」
「ただし、経済的影響を最小限に抑える段階的移行が必要です」
ガルディア帝国の提案(カール皇帝):
「魔導技術による海洋浄化システムを開発します」
「古代技術との融合により、短期間での改善も可能かもしれません」
サンクトゥス帝国の提案(アウグストゥス皇帝):
「技術的解決と並行して、外交的接触を試みるべきです」
「相互理解なしには、根本的解決は不可能でしょう」
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【聖女大元帥としての決断】
各代表の提案を聞いた後、アリアが重大な決断を下した。
「皆様の提案はすべて重要です」
「しかし、48時間という期限では、根本的な環境改善は不可能です」
「そこで、私は直接海底文明との外交交渉を提案します」
会議室が静寂に包まれた。
「聖女大元帥、それは危険すぎます!」
ガレス副司令官が強く反対した。
「海底5,000mでの交渉など、前例がありません」
「だからこそ、私が行かなければなりません」
アリアが確固たる意志を示した。
「世界平和機構代表として、人類を代表し交渉を行います」
【古代技術による海底外交の可能性】
「守護者、海底での外交交渉は可能ですか?」
アリアが古代技術装置に相談した。
「困難ですが、不可能ではありません」
守護者の声が慎重に答えた。
「古代技術『時空間制御技術』により、海底への安全な移動と、水中での活動が可能です」
「ただし、未知の海底文明との交渉には、予測不可能なリスクが伴います」
「承知しています」
アリアが決意を固めた。
「ここまで来ることができたのは、常に困難に立ち向かってきたからです」
「今回も例外ではありません」
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【史上初の海底外交団】
アリアの決断により、人類史上初の海底外交団が編成された。
【外交団メンバー】
- 聖女大元帥アリア・フォン・アーテミス:首席交渉官
- ガレス・ド・モンクレア副司令官:軍事顧問
- エドモンド・アルカナス博士:技術顧問、古代文明専門家
- エレナ・クリスタルハート理事長:環境問題専門家
- コーラル・シーシェル博士:海洋科学者(30歳、若手研究者)
- マーシャル・ストラテジー議長:軍事代表
【海底外交のための特殊装備】
古代技術により、海底活動用の特殊装備が準備された。
- 古代技術潜水艦『ディープハーモニー』:深度10,000m対応
- 水中活動スーツ:古代技術強化、完全生命維持機能
- 水中通信システム:海底文明との通信対応
- 平和の証明装置:敵意がないことを示す古代技術装置
「愛馬フェリスは、今回は同行できませんね」
アリアが寂しそうに呟いた。
「でも、ベネリショットガンは持参します。万一の場合に備えて」
海底でのベネリM3使用は困難だが、アリアにとって精神的な支えとなる重要な装備だった。
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【外交団出発前夜 - 最終準備】
海底文明からの48時間最後通牒まで、残り12時間となった。
「聖女大元帥、本当に大丈夫でしょうか?」
ガレス副司令官が最後の確認をした。
「海底5,000mでの交渉は、これまでの戦いとは全く異なります」
「分かっています」
アリアが古代技術潜水艦『ディープハーモニー』を見つめながら答えた。
「でも、1,500万人の海底文明と、陸上13億人の文明の平和的共存を実現するには、直接対話しかありません」
【世界各国からの支援メッセージ】
外交団の出発を前に、世界各国から支援メッセージが届いていた。
カール皇帝からのメッセージ:
「聖女大元帥の勇気ある行動を、ガルディア帝国民全員が支持します」
ストームライダー大臣からのメッセージ:
「海洋国家である極東連邦として、海底文明との平和的対話を心から願っています」
12大信仰指導者からの祈り:
「聖女アリアの外交使命が成功し、陸と海の調和が実現されることを祈ります」
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【午前6時 - 太平洋中央部】
海底文明の48時間期限まで残り6時間となった午前6時、古代技術潜水艦『ディープハーモニー』が太平洋の深海へ向けて出発した。
「全システム正常。深度3,000mまで潜航開始」
ガレス副司令官が艦内システムを確認した。
古代技術により強化された潜水艦は、通常の潜水艦とは比較にならない性能を誇っている。
【潜航中のアリアの心境】
「海底文明との初接触...」
アリアが潜水艦の窓から、深まりゆく海の青さを見つめていた。
「あの頃は、王城の庭を歩くのがやっとでした」
「それが今では、海底5,000mまで潜って、異文明との外交交渉を行おうとしている」
「VRアーティファクト、愛馬フェリス、ベネリショットガン、そして仲間たち...」
「すべてがこの瞬間につながっています」
【海底文明からの応答信号】
深度4,000mに到達したとき、海底文明からの応答信号が届いた。
『陸上外交団の接近を確認』
『海底都市ネプチューンドームへの案内を開始する』
『ただし、武装解除と平和の意思確認が前提条件』
「平和の意思を示してください」
アリアが古代技術平和証明装置を起動した。
淡い青い光が潜水艦を包み、敵意がないことを示すエネルギーが放射された。
『平和の意思を確認。案内を開始する』
海底の暗闇から、巨大な発光体が現れた。それは海底文明の案内艦だった。
「ついに...海底文明との接触が始まります」
アリアが歴史的瞬間を迎えながら、決意を新たにした。
「陸と海の5,000年の分離を終わらせ、真の調和を実現します」
深海の暗闇の中で、人類の命運を賭けた最も重要な外交交渉が始まろうとしていた。




