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人類存亡の時


【3ヶ月後 - 世界平和機構本部】


 深海決戦から3ヶ月が経過し、世界は表面上の平和を享受していた。アーテミス大陸の王都は、今や世界平和機構の本部として、各大陸からの外交使節や平和維持軍で賑わっていた。


しかし、アリア・フォン・アーテミス世界平和機構最高司令官(21歳)のもとに、不穏な報告が相次いで届いていた。


「最高司令官、西大陸からの緊急報告です」


 ガレス・ド・モンクレア副司令官が、深刻な表情で厚い情報ファイルを手渡した。彼の表情には、これまでにない緊張が浮かんでいた。


「西大陸35カ国で、資源をめぐる対立が急激に悪化しています」


「調和の創造技術の効果が及んでいないのですか?」


 アリアが眉をひそめた。根源の神殿から発せられた調和のエネルギーは、理論上は世界全体をカバーしているはずだった。


「地理的距離と、独特な文化的背景により、神殿の影響が限定的なのです」


 ウォルター・オールドガード統合軍参謀長が、大型スクリーンに西大陸の詳細地図を表示した。


【西大陸の複雑な状況】


 西大陸は、アーテミス大陸から海を隔てて4,000km離れた巨大な大陸だった。面積はアーテミス大陸の約3倍、人口は1億人を超える。


- スチールハート工業同盟:15カ国、重工業中心、人口4,000万人

- クリスタルハート資源連邦:12カ国、エーテルクリスタル産出、人口3,500万人

- アイアンフィスト軍事帝国:8カ国、軍事国家群、人口2,500万人

- 争点:エーテルクリスタル採掘権、工業用水源、領土境界線


「3年前から断続的に続いている対立が、ここ1ヶ月で決定的に悪化しました」


 情報部長が詳細を説明した。


「各陣営とも、大規模な軍事動員を開始しています」


---


【機密情報室での緊急会議】


「さらに深刻な問題があります」


 エドモンド・アルカナス博士(70歳、新テクノ・アルカナ平和研究所所長)が、震え声で最重要機密を明かした。


 改心して平和研究に転じた元ドクター・プロメテウスの表情は、青ざめていた。


「西大陸には、私が50年前に研究していた『エーテルクリスタル反応兵器』が存在している可能性があります」


 会議室に重い沈黙が流れた。アリアの顔が一瞬で緊張に満ちた。


「それは...どの程度の威力なのですか?」


「噂や神話で言われる核兵器に匹敵する破壊力を持ちます」


 エドモンドが苦渋の表情で詳細を説明した。


【エーテルクリスタル反応兵器の恐ろしさ】


- 破壊力:半径50km完全破壊、核兵器級の威力

- 放射能汚染:エーテル汚染により数百年間居住不可能

- 環境影響:大気・水・土壌の長期汚染

- 製造条件:西大陸でのみ産出される特殊エーテルクリスタルが必要

- 現存推定数:7発(各陣営が秘密保有)


「この兵器が実際に使用されれば、西大陸は壊滅的被害を受けます」


 エドモンドが続けた。


「そして、エーテル汚染が海流と風によって他大陸にも拡散し、大陸どころかすべての地域全体の生態系が数百年にわたって深刻な影響を受けることになります」


「つまり、文明の存続に関わる危機ということですね」


 アリアが事態の深刻さを理解した。


「守護者、この危機への対応策はありますか?」


 アリアが古代技術装置に問いかけた。


「非常に困難な状況です、アリア様」


 守護者の声に、これまでにない深刻な懸念が込められていた。


「エーテルクリスタル反応兵器は、古代技術でも完全に無力化することは不可能です」


「発射される前に阻止するか、使用の意志そのものを変えるしかありません」


---


【王城の厩舎】


 重大な決断を前に、アリアは久しぶりに愛馬フェリスのもとを訪れた。


「フェリス、元気にしていましたか?」


 美しい栗毛の牝馬は、主人の帰還を喜ぶように首を振った。フェリスは、アリアが病痩だった頃からの相棒で、数々の戦いを共に駆け抜けてきた。


「最近は海戦ばかりで、騎兵戦闘から遠ざかっていましたね」


 アリアがフェリスの鬣を撫でながら語りかけた。


 愛馬フェリスが準備されている。美しい栗毛の牝馬は、主人の変化を敏感に感じ取っているようで、いつもより誇らしげに見えた。


 3年間の戦いを通じて、病弱で弱々しかった王女は、今や世界平和機構を率いる指導者になっていた。フェリスもその変化を理解しているようだった。


【騎兵装備の準備】


「久しぶりに、騎兵としての装備を整えましょう」


 アリアが愛用のベネリM3ショットガンを手に取った。VRアーティファクトから最初に獲得した記念すべき武器だった。


- ベネリM3ショットガン:12ゲージ、特殊弾薬32発装備

- 騎兵用サドル:古代技術強化、クッション性と安定性を向上

- 戦術ハーネス:騎乗中の武器使用を補助

- 通信装置:フェリスの首輪に統合軍指揮システム


「フェリス、また一緒に戦場に向かうことになりそうです」


 アリアが鞍にまたがると、フェリスが嬉しそうに嘶いた。


---


【世界平和機構緊急評議会】


 午後2時、各大陸代表による緊急評議会が開催された。会議室には、世界平和を支える重要人物たちが集結していた。


【参加者】

- アリア・フォン・アーテミス:世界平和機構最高司令官

- カール・アイゼンハルト皇帝:ガルディア帝国代表

- エリック・ストームライダー大臣:極東連邦平和防衛省大臣

- アウグストゥス皇帝:サンクトゥス帝国代表

- セラフィム導師:12大信仰指導者代表

- エドモンド・アルカナス博士:技術顧問


「西大陸の状況は、人類存亡に関わる危機です」


 アリアが厳粛に評議会を開会した。


「エーテルクリスタル反応兵器の使用を阻止し、1億人の生命を守らなければなりません」


 カール皇帝が軍事的観点から発言した。


「ガルディア帝国として、統合平和維持軍15万人の緊急派遣を提案します」


「賛成です」


 ストームライダー大臣が同調した。


「極東連邦も全面的に協力いたします」


「しかし、相手は1億人の人口を持つ35カ国です」


 アウグストゥス皇帝が現実的な困難を指摘した。


「軍事力だけでは解決不可能でしょう」


 セラフィム導師が精神的観点から提言した。


「これは技術的・軍事的危機であると同時に、人間の心の問題でもあります」


「憎悪と恐怖に支配された心を、どう平和へと導くかが重要です」


【統合平和維持軍の緊急編成】


 評議会の決定により、統合平和維持軍の大規模派遣が決定された。


- 第1師団:アーテミス精鋭部隊5万人(古代技術装備)

- 第2師団:極東連邦平和維持軍3万人(現代技術装備)

- 第3師団:ガルディア重装部隊2万人(魔導技術装備)

- 第4師団:サンクトゥス技術部隊2万人(特殊技術装備)

- 第5師団:西大陸情報収集隊1万人(現地協力者含む)

- 統合海軍:空母機動部隊、古代技術強化艦隊

- 統合空軍:戦略輸送機、平和維持航空隊

- 後方支援:2万人(医療、補給、通信、人道支援)


---


【史上初の最高司令官現地指揮】


「私自身が西大陸に向かいます」


 アリアの発言に、評議会が一瞬静寂に包まれた。


「はぁ!?最高司令官、それは危険すぎます」


ガレス副司令官が強く反対した。


「エーテルクリスタル反応兵器の脅威がある地域への最高司令官の派遣は、世界平和機構の存続に関わります」


「だからこそ、私が行かなければなりません」


 アリアが毅然として答えた。


「古代技術『調和の創造』を最大効果で発動するには、現地での直接操作が必要です」


「そして、1億人の生命がかかった交渉には、最高責任者自らが当たるべきです」


 カール皇帝が軍人として意見した。


「指揮官が前線に出ることの意味は理解できます」


「しかし、リスクがあまりに大きすぎる!」


「リスクを恐れていては、真の平和は実現できません!!」


 アリアが確固たる意志を示した。


「ただの病弱だった私が、ここまで来ることができたのは、常に困難に立ち向かってきたからです」


「...今回も例外ではありません」


---


【アリア直属騎兵隊の編成】


 アリアの決断により、久しぶりに騎兵隊が編成されることになった。


【直属部隊メンバー】

- ガレス・ド・モンクレア司令官:副司令、軍事顧問、愛馬シルバーナイト

- ウォルター・オールドガード提督:統合軍参謀長、戦術指揮

- トム・ファーマーソン中佐:第1航空団長、元農民出身

- ハリー・ソードマン艦長:海軍戦術指揮官、元剣士

- セルゲイ・モロゾフ艦長:潜水艦部隊指揮官、元ガルディア軍

- エドモンド・アルカナス博士:技術顧問、エーテル兵器専門家


「久しぶりの騎兵戦闘になります」


 ガレスが愛馬シルバーナイトの手綱を確認した。


「最高司令官の護衛騎兵隊として、全力でお守りします」


【VRアーティファクトの新機能解放】


「VRアーティファクト、新しいシナリオの解放をお願いします」


 アリアが愛用の装置に相談した。


『新シナリオ解放:大規模人道危機管理』

『新シナリオ解放:核兵器級兵器対処プロトコル』

『新シナリオ解放:多国間緊急外交システム』

『新シナリオ解放:文明存亡危機対応戦略』

『新シナリオ解放:騎兵戦術・現代戦融合』


「騎兵戦術の新シナリオまで...」


 アリアが驚いた。


『古代から現代まで、あらゆる騎兵戦術を統合したシナリオです』

『愛馬フェリスとの連携戦闘も含まれています』


「これで準備完了ですね」


---


【リアルタイム情報収集】


 出征準備の最中、西大陸からの情報が刻一刻と悪化していた。


【スチールハート工業同盟の動向】


「工業同盟軍200万人が、クリスタル鉱山地帯への進軍を開始しました」


 情報部からの緊急報告が入った。


「重装戦車5万両を投入し、『資源確保作戦』と称して侵攻準備中です」


 ヴィクター・スチールハート皇帝(55歳)の強硬発言も傍受されていた。


「我が工業同盟の4,000万人民の生活を支えるエーテルクリスタルを、必要なら武力を用いてでも確保する」


【クリスタルハート資源連邦の対応】


「資源連邦も報復準備を開始しています」


 エレナ・クリスタルハート大統領(45歳)が緊急声明を発表していた。


「不法な侵攻には断固として対抗する。エーテルクリスタルは我々の主権的資源である」


 資源連邦軍150万人が防御態勢を強化し、エーテルクリスタル兵器の配備を開始していた。


【アイアンフィスト軍事帝国の介入】


「軍事帝国も独自の行動を開始しました」


 アレクサンドル・アイアンフィスト皇帝(60歳)が両陣営への最後通牒を発していた。


「工業同盟と資源連邦の争いは、西大陸全体の安定を脅かしている」


「48時間以内に自発的な停戦が実現されない場合、我が軍事帝国が両国を軍事占領する」


 軍事帝国軍120万人が、戦略的要衝への配備を完了していた。


---


【衛星観測による情報収集】


 極東連邦の偵察衛星と、古代技術強化された観測システムにより、さらに深刻な情報が判明した。


「各陣営が保有するエーテルクリスタル反応兵器の総数が、推定を大幅に上回っています」


 エドモンド博士が青ざめながら報告した。


【判明したエーテル兵器配備状況】

- 工業同盟:5発(主要工業都市に配備)

- 資源連邦:4発(エーテルクリスタル鉱山地帯に配備)

- 軍事帝国:3発(戦略ミサイル基地に配備)

- 総計:12発(当初予想の約2倍)


「これは...想像以上に深刻です」


 アリアが状況の重大性を認識した。


「12発全てが使用されれば、西大陸の面積の80%が数百年間居住不可能となります」


「そして、エーテル汚染が海流に乗って全世界に拡散し、他大陸までをも含む全体の文明が数百年後退する可能性があります」


 エドモンドが震え声で続けた。


「『エーテルの冬』が...地球を覆うかもしれません...」


---


【緊急出航命令】


「各陣営の軍事動員が完了するまで、残り48時間です」


 ウォルター参謀長が最終警告を発した。


「それまでに現地に到着し、平和的解決を実現できなければ、人類史上最悪の戦争が始まります」


 アリアが重大な決断を下した。


「統合艦隊、緊急出航を命令します!」


「古代技術『時空間制御技術』を最大出力で発動し、通常2週間の航海を3日間に短縮します」


【統合艦隊の緊急編成】

- 空母『アルテミア』:旗艦、航空戦力の中核

- 強襲揚陸艦5隻:15万人の陸上部隊とVRドロップ装備輸送

- 補給艦12隻:15万人分の物資、医療設備、人道支援物資

- 護衛艦隊20隻:駆逐艦、潜水艦による護衛任務

- 病院船3隻:1億人規模の人道支援に対応

- 騎兵輸送艦:愛馬フェリスを含む騎兵隊専用輸送艦


「フェリス、久しぶりの長距離遠征ですね」


 アリアが愛馬の首を撫でながら、騎兵輸送艦に搭乗した。


「今度の戦いは、これまでで最も重要な戦いになりそうです」


 フェリスが理解しているように、静かに首を振った。


---


【時空間制御技術の発動】


 午後6時、統合艦隊がアーテミス大陸主要港から緊急出航した。


「古代技術『時空間制御技術』、艦隊全体に適用開始」


 アリアが古代技術装置を最大出力で起動した。


 統合艦隊の周囲に、淡い青白い光の障壁が形成された。海水の抵抗が大幅に軽減され、艦隊の速度が通常の5倍まで上昇した。


「これは...!素晴らしい技術です」


 ハリー艦長が驚嘆した。


「駆逐艦『ガーディアン』の速度が時速150kmまで上昇しています」


「燃料消費も通常の半分以下です」


【艦隊内での最終準備】


 超高速航行中の艦隊内で、15万人の統合平和維持軍が最終訓練を実施していた。


「今回の作戦は、これまでとは規模が全く異なります」


 トム中佐が航空隊員たちに説明していた。


「相手は1億人、我々は15万人。しかし、我々には正義と古代技術があります」


「そして何より、女王最高司令官の『慈悲の統治』への信頼があります」


【愛馬フェリスとの訓練】


 騎兵輸送艦の特設馬場で、アリアは愛馬フェリスと騎兵戦闘の訓練を重ねていた。


「フェリス、ベネリショットガンとの連携を確認しましょう」


 アリアがフェリスにまたがり、模擬標的に向けてベネリM3を構えた。


 愛馬の疾走中でも、VRで習得した射撃技術により、正確な射撃が可能だった。


「騎兵戦闘とショットガンの組み合わせ...古代とVRの技術の融合ですね」


 ガレス司令官が感心して見守っていた。


「女王...あの頃からは、想像もできない成長ですよ...」


---



【48時間後 - 西大陸中立海域】


 古代技術により加速された統合艦隊が、予定通り3日間で西大陸沖に到着した。しかし、現地の情勢は予想以上に悪化していた。


「最高司令官、西大陸の情勢が極めて危険な状況です」


 情報収集を担当していた第5師団長が緊急報告した。


【到着時点での危機的状況】


- 工業同盟軍:クリスタル鉱山への軍事侵攻を6時間後に開始予定

- 資源連邦軍:工業地帯への先制攻撃を8時間後に実行予定

- 軍事帝国軍:両陣営への「平定作戦」を12時間後に発動予定

- 戦争開始予想:6-12時間以内(エーテル兵器使用の可能性:極めて高い)


「これは...予想以上に深刻ですね...!」


 アリアが状況の重大性を認識した。


「外交交渉の時間的余裕がほとんどありません」


【緊急上陸作戦の開始】


「第1師団、第2師団は即座に上陸を開始」


 ガレス司令官が緊急命令を発した。


「各陣営の首都に平和維持部隊を派遣し、エーテル兵器の監視を開始します」


「最高司令官は中立地帯に臨時平和会議場を設置し、三大陣営指導者との緊急会談を要請します」


---


【工業同盟首都スチールシティ】


 西大陸最大の工業都市スチールシティは、巨大な煙突と工場群に覆われた灰色の都市だった。人口800万人の大都市圏には、重工業に従事する労働者たちが住んでいる。


 ヴィクター・スチールハート皇帝(55歳)は、30年間をかけて15カ国の工業国家を統合した強力な指導者だった。


「我が工業同盟こそが、西大陸の真の発展を支えている」


 皇帝は高さ300mの大工場の最上階から、工業地帯を見渡しながら語った。


「鉄を精練し、機械を作り、文明を築く。これこそが人類の進歩だ」


【工業同盟の実力】


- 総人口:4,000万人(西大陸の40%)

- 工業力:大陸最大の重工業・兵器生産能力

- 軍事力:重装歩兵200万人、主力戦車5万両、戦闘機2万機

- 技術力:機械工学、冶金学で大陸最高レベル

- 弱点:エーテルクリスタル不足によるエネルギー問題


「エーテルクリスタルさえあれば、我が同盟の工業力は10倍に向上する」


 皇帝の側近である工業大臣が説明した。


「しかし、クリスタルハート連邦が独占的な採掘権を主張し、我々への供給を制限している」


「それならば、武力を用いてでも確保するまでだ」


 皇帝が冷徹に宣言した。


【エーテルクリスタル反応兵器の配備】


 工業同盟が秘密裏に開発していたエーテル兵器は、5発の大型弾頭として主要都市に配備されていた。


- スチールシティ基地:2発(首都防衛用)

- アイアンバレー工場群:2発(工業地帯防衛用)

- ファクトリーランド要塞:1発(国境防衛用)


「この兵器があれば、他の陣営も無謀な攻撃はできまい」


 皇帝が最終兵器への信頼を示した。


「しかし、必要なら使用する覚悟はある」


---


【資源連邦首都クリスタルタワー】


 西大陸中央部のクリスタルタワーは、巨大なエーテルクリスタルで建設された美しい都市だった。建物全体が七色に輝き、まるで宝石でできた都市のようだった。


 エレナ・クリスタルハート大統領(45歳)は、12カ国のエーテルクリスタル産出国を代表する女性指導者だった。環境保護と持続可能な開発を重視する理想主義者でもある。


「エーテルクリスタルは、我々の祖先が5,000年前に発見した神聖な資源です」


 大統領は、巨大なクリスタル鉱山を背景に宣言した。


「この美しい結晶は、適切に管理されなければ、地球環境に致命的な影響を与えます」


【資源連邦の特色】


- 総人口:3,500万人(西大陸の35%)

- 資源力:世界最大のエーテルクリスタル産出(全世界の70%)

- 軍事力:機動部隊150万人、エーテルクリスタル兵器装備

- 技術力:クリスタル技術、エネルギー技術で世界最先端

- 理念:環境保護、持続可能な開発、平和主義


「工業同盟の無制限な採掘要求は、環境破壊と資源枯渇をもたらします」


 大統領の環境大臣が説明した。


「現在の採掘ペースでも、100年後にはクリスタルが枯渇する可能性があります」


「それに、軍事帝国の領土拡張主義も断固として阻止しなければなりません」


【エーテルクリスタル兵器の配備】


 資源連邦は、4発のエーテル兵器をクリスタル鉱山地帯に配備していた。


- グランドクリスタル鉱山:2発(最大鉱山の防衛)

- ライトクリスタル採掘場:1発(第二の鉱山防衛)

- レインボークリスタル精製所:1発(精製施設防衛)


「我々は平和を愛しますが、侵略には断固として対抗します」


 大統領が決意を示した。


「エーテルクリスタルの力を、防衛のために使用することも辞さません」


---


【軍事帝国首都アイアンフォート】


 西大陸南部のアイアンフォートは、巨大な要塞都市だった。城壁の高さは100m、全市民が軍事訓練を受けている完全な軍事国家だった。


 アレクサンドル・アイアンフィスト皇帝(60歳)は、8カ国の軍事国家を鉄の規律で統合した軍事的天才だった。40年の軍歴を持つベテラン指揮官でもある。


「軍事力による秩序こそが、真の平和をもたらす」


 皇帝は大規模な軍事パレードを閲兵しながら宣言した。


「工業同盟と資源連邦の醜い争いを見よ。話し合いでは何も解決しない」


「我が軍事帝国による統一支配こそが、西大陸に真の安定をもたらす」


【軍事帝国の圧倒的軍事力】


- 総人口:2,500万人(西大陸の25%、ただし全員が軍事訓練済み)

- 軍事力:精鋭軍120万人、最新兵器完全装備

- 技術力:軍事技術で大陸最高レベル、戦略兵器保有

- 戦略兵器:大陸間弾道ミサイル100基、戦略爆撃機500機

- 理念:軍事的統一、力による平和、秩序重視


「我が軍は、工業同盟の200万人でも、資源連邦の150万人でも、単独で撃破可能だ」


 軍事帝国の参謀総長が自信を示した。


「精鋭の120万人は、烏合の衆の数百万人に勝る」


「そして、我々には最新の戦略兵器がある」


【エーテルクリスタル反応兵器の戦略配備】


 軍事帝国は、3発のエーテル兵器を戦略ミサイル基地に配備していた。


- ストロングアーム要塞:1発(首都防衛用)

- アイアンハンマー基地:1発(工業同盟攻撃用)

- スチールフィスト基地:1発(資源連邦攻撃用)


「この兵器こそが、我が軍事帝国の絶対的な力の象徴だ」


 皇帝が最終兵器への絶対的信頼を示した。


「必要なら、両国を核の炎で浄化し、新たな秩序を築く」


---


【三方向同時展開作戦】


 統合艦隊から上陸した15万人の平和維持軍が、三大陣営の首都に同時展開された。


【第1師団:スチールシティ展開】


「アーテミス第1師団、工業同盟首都に平和維持部隊として展開完了」


 トム中佐率いる航空隊が、スチールシティ上空をパトロール飛行していた。


「F/A-18戦闘機30機で、工業同盟軍の動向を監視中」


「エーテル兵器5発の位置も確認済み」


 しかし、工業同盟軍の反応は冷淡だった。


「外国の軍隊が我が領土に侵入することは認めない」


 工業同盟軍司令官が強硬に抗議した。


「平和維持などという偽善的な名目は通用しない」


【第2師団:クリスタルタワー展開】


「極東連邦第2師団、資源連邦首都に展開完了」


 ストームライダー大臣直属の平和維持部隊が、クリスタルタワーに到着していた。


「現代技術装備による平和維持活動を開始」


 資源連邦の反応は、やや好意的だった。


「平和を重視する姿勢は理解できます」


 エレナ大統領が条件付きで受け入れた。


「しかし、我々の主権を侵害しない範囲でお願いします」


【第3師団:アイアンフォート展開】


「ガルディア第3師団、軍事帝国首都に展開完了」


 カール皇帝率いる重装部隊が、アイアンフォートの周辺に布陣した。


「魔導技術と重装備による威圧効果を期待」


 軍事帝国の反応は、興味深いものだった。


「ほう、なかなか見事な軍装だ」


 アレクサンドル皇帝が軍人として評価した。


「しかし、我が軍の精鋭と比べればまだまだだな」


---


【中立地帯での騎兵隊展開】


 アリア最高司令官は、愛馬フェリスと共に三大陣営の境界にある中立地帯に展開していた。


「フェリス、久しぶりの実戦展開ですね」


 美しい栗毛の牝馬は、主人の緊張を感じ取っているようで、いつもより慎重に歩いていた。それは主人の変化を敏感に感じ取っているようで、いつもより誇らしげに見えた。


【騎兵隊の装備と配置】


- アリア:愛馬フェリス、ベネリM3ショットガン、古代技術装置

- ガレス司令官:愛馬シルバーナイト、L85A3アサルトライフル

- 護衛騎兵10名:各自の愛馬、SASタクティカルスーツ装備


「騎兵隊による機動力で、三大陣営への迅速な対応を可能にします」


 ガレス司令官が戦術的意義を説明した。


「愛馬なら、どんな地形でも迅速に移動可能です」


【臨時平和会議場の設営】


 中立地帯の丘陵地帯に、統合平和維持軍が48時間で会議場を建設していた。


- メイン会議場:三大陣営指導者会談用

- 通信施設:世界平和機構本部との連絡

- 医療施設:緊急時対応

- 宿泊施設:各陣営代表団用

- 騎兵厩舎:愛馬フェリスとシルバーナイト用


「アリア最高司令官の『慈悲の統治』を実現するための、完璧な設備です」


 建設責任者が完成を報告した。


---


【史上初の三者同時会談招請】


 アリアが愛馬フェリスにまたがり、三大陣営の首都を順次訪問して直接招請を行うことになった。


「フェリス、重要な外交任務です」


 アリアがフェリスの鬣を撫でながら語りかけた。


「世界の運命がかかっています」


【第1訪問:スチールハート皇帝への招請】


 午前10時、アリアは愛馬フェリスと共にスチールシティの皇帝宮殿を訪問した。


「ヴィクター・スチールハート皇帝陛下」


 アリアがフェリスから降りて、正式な外交礼儀で挨拶した。


「世界平和機構最高司令官として、緊急会談を要請いたします」


「ほう、病痩の王女と呼ばれていた少女が、今や世界平和機構の最高司令官か」


 皇帝が興味深そうにアリアを見つめた。


「だが、我が工業同盟4,000万人の利益を、一人の少女に委ねることはできない」


「陛下、私は病痩の王女ではありません」


 アリアが毅然として答えた。


「世界12億人の平和を守る責任を負う者です」


「エーテルクリスタル反応兵器12発が使用されれば、陛下の愛する工業同盟も永久に失われます」


 皇帝の表情が変わった。


「なんだと...12発だと?我々が把握していたのは7発だったが」


「各陣営の情報が不完全だったのです。真の危機の規模を理解していただくため、会談が必要です」


【第2訪問:クリスタルハート大統領への招請】


 午後1時、アリアはクリスタルタワーのエレナ大統領を訪問した。


「エレナ・クリスタルハート大統領」


 アリアが環境を重視する指導者に敬意を表した。


「あなたの環境保護への情熱は、世界平和機構も共有しています」


「アリア最高司令官、あなたの『慈悲の統治』は聞き及んでいます」


 エレナ大統領が好意的に応答した。


「しかし、工業同盟の無制限な採掘要求には応じられません」


「大統領、古代技術により、環境を破壊しない採掘方法と、完全な環境復旧技術が提供可能です」


 アリアが解決策を提示した。


「エーテルクリスタルと環境保護の両立が実現できます」


 大統領の表情が明るくなった。


「それは...本当に可能なのですか?」


「可能です。ただし、三大陣営の合意と協力が前提条件です」


【第3訪問:アイアンフィスト皇帝への招請】


 午後4時、アリアはアイアンフォートのアレクサンドル皇帝を訪問した。


「アレクサンドル・アイアンフィスト皇帝陛下」


 アリアが軍事的指導者に敬意を示した。


「陛下の秩序重視の理念は理解いたします」


「...小娘が何を言うか」


皇帝が軍人らしい直接的な反応を示した。


「軍事力による統一こそが、最も効率的な平和実現の方法だ!」


「陛下、真の秩序は恐怖ではなく、信頼によって築かれます」


 アリアが確信を持って答えた。


「世界平和機構の平和維持活動に参加していただき、陛下の軍事的経験を平和のために活用していただけませんか?」


 皇帝が考え込んだ。


「平和維持...確かに、それも軍事力の正しい使い方かもしれない」


---


【工業同盟の内部議論】


「皇帝、アリア最高司令官の提案をどう思われますか?」


 工業大臣が皇帝に相談した。


「彼女の『慈悲の統治』の実績は確かです。極東連邦でも、サンクトゥス帝国でも、軍事力ではなく話し合いで平和を実現している」


「だが、我が国民4,000万人の生活がかかっている」


 皇帝が慎重に考えていた。


「エーテルクリスタルなしには、工業生産が維持できない」


「皇帝、古代技術による代替エネルギーの提供があれば...」


 技術顧問が可能性を示唆した。


「会談に参加する価値はあるかもしれません」


【資源連邦の前向きな姿勢】


「大統領、古代技術による環境保護は魅力的です」


 環境大臣がエレナ大統領に助言した。


「これまで不可能だった、採掘と環境保護の両立が実現できるかもしれません」


「そうですね。アリア最高司令官の誠実さも信頼できます」


 大統領が前向きに検討していた。


「会談に参加し、具体的な提案を聞いてみましょう」


【軍事帝国の興味】


「皇帝、世界平和機構の平和維持活動は興味深いものです」


 参謀総長がアレクサンドル皇帝に意見した。


「我が軍の精鋭を、世界規模の平和維持に活用できれば、真の『軍事による平和』が実現するかもしれません」


「確かに...武力による征服ではなく、武力による守護」


 皇帝が新しい理念に興味を示した。


「一度話を聞いてみても良いかもしれない」


---


【国境地帯での偶発的衝突】


 しかし、会談開催決定の直後、最悪の事態が発生した。


「最高司令官!緊急事態です!」


 通信士が血相を変えて報告した。


「工業同盟軍と資源連邦軍が国境地帯で偶発的戦闘を開始!」


「何が起こったのですか?」


 アリアが急いで状況を確認した。


「工業同盟の偵察部隊と資源連邦の警備部隊が、国境の小さな村で遭遇しました」


「双方とも緊張状態にあったため、些細なトラブルから銃撃戦に発展」


「現在、両軍とも増援を派遣中です」


【エスカレーションの危険】


「両軍の増援規模は?」


 ガレス司令官が軍事的観点から確認した。


「工業同盟軍:戦車200両、歩兵1万人」


「資源連邦軍:機動部隊5,000人、エーテルクリスタル兵器装備」


「このままでは全面戦争に拡大します」


 エドモンド博士が恐怖で震えていた。


「...エーテル兵器が使用される可能性が急激に高まりました」


---


【緊急出動命令】


「騎兵隊、緊急出動!!」


 アリアが愛馬フェリスにまたがり、ベネリM3ショットガンを装備した。


「フェリス、戦場に向かいます!」


美しい栗毛の牝馬が理解しているように、力強く嘶いた。


「偶発的戦闘を停止させ、全面戦争を阻止します」


【騎兵突撃による戦闘介入】


 午後6時、国境地帯の戦場に騎兵隊が到着した。


 工業同盟軍と資源連邦軍が、村を挟んで激しい銃撃戦を展開していた。既に数十名の死傷者が出ている。


「フェリス、行きます!」


 アリアが愛馬を駆って戦場中央に駆け込んだ。


 両軍の銃撃の中を、フェリスが巧妙に避けながら疾走する。


「両軍、戦闘を停止してください!」


 アリアが大声で叫びながら、ベネリM3ショットガンを空に向けて発砲した。


「ドォン!ドォン!」


 ショットガンの轟音が戦場に響き渡った。


【騎兵による戦場制圧】


「あれは...アリア最高司令官だ!」


 両軍の兵士たちが、愛馬にまたがった指揮官の姿に驚愕した。


「世界平和機構の最高司令官が、単騎で戦場に現れた!」


 フェリスの美しい疾走と、アリアの堂々とした姿に、戦場の兵士たちが感動していた。


「戦闘を停止し、負傷者の救護を優先してください!」


 アリアの明確な指示に、両軍が自然と従った。


「病に臥せっていたあの王女から世界平和機構最高司令官まで成長した彼女の言葉には、不思議な説得力がある」


 工業同盟軍の指揮官が呟いた。


「散弾銃と愛馬...他国から漏れていたその伝説の組み合わせですね」


 資源連邦軍の将校が感心していた。


---



【戦場での直接交渉】


 愛馬フェリスと共に戦場中央に立ったアリア・フォン・アーテミス世界平和機構最高司令官は、両軍の指揮官を直接説得していた。


「工業同盟第3装甲師団長、資源連邦第5機動旅団長」


 アリアがフェリスの背から両軍に向けて呼びかけた。


「この戦闘は偶発的なものです。ここで止めなければ、1億人を巻き込む全面戦争に発展します」


【工業同盟側の反応】


「アリア最高司令官...」


 工業同盟第3装甲師団長(45歳、20年の軍歴)が複雑な表情を見せた。


「我々は侵略の意図はありませんでした。しかし、資源連邦軍が先に発砲したのです」


「それは誤解です」


 アリアが冷静に状況を整理した。


「双方とも緊張状態にあり、些細なきっかけで戦闘が始まったのです」


「重要なのは、これ以上の犠牲者を出さないことです」


【資源連邦側の反応】


「最高司令官の言葉は理解できます」


 資源連邦第5機動旅団長(40歳、女性指揮官)が同意した。


「しかし、我々の領土に侵入してきた工業同盟軍への対応として、やむを得ない行動でした」


「旅団長、境界線の認識に齟齬があったのです」


 アリアが根本原因を指摘した。


「明確な停戦ラインを設定し、双方が撤退すれば解決できます」


【ベネリによる威嚇効果】


 アリアがベネリM3ショットガンを肩に構えた姿は、両軍に強い印象を与えていた。


「『あの頃』から愛用している武器で、数々の奇跡を起こした伝説の武器だ」


 工業同盟の兵士が噂していた。


「愛馬フェリスと共に戦場を駆け抜け、常に正義を貫いてきた」


 資源連邦の兵士も感動していた。


「あの組み合わせには、不思議な説得力がある」


--


【即席停戦協定】


 戦場での直接交渉により、両軍が停戦に合意した。


【停戦条件】

1. 即時戦闘停止と現状維持

2. 負傷者の相互救護と医療協力

3. 24時間以内の現地からの撤退

4. 三大陣営首脳会談への参加約束

5. 今後の偶発的戦闘防止のための連絡体制構築


「両軍の指揮官、停戦協定に署名をお願いします」


 アリアが愛馬フェリスの背から降り、即席の署名台で協定書を準備した。


「フェリス、お疲れ様でした」


 アリアがフェリスの首を撫でながら労った。愛馬は誇らしげに首を振り、主人の外交成功を喜んでいるようだった。


【負傷者救護活動】


 停戦合意により、両軍が協力して負傷者の救護を開始した。


「工業同盟軍負傷者18名、資源連邦軍負傷者12名」


 医療班が状況を報告した。


「幸い、重篤者はいません。適切な治療により全員回復可能です」


「素晴らしいニュースです!」


 アリアが安堵した。


「偶発的戦闘による犠牲者を最小限に抑えることができました」


 両軍の兵士たちが、負傷した敵兵を助ける姿が印象的だった。


「敵も同じ人間なんだな」


 工業同盟の若い兵士が、資源連邦の負傷兵を介護しながら呟いた。


「なぜ戦っているのか、分からなくなってきた」


---


【第4師団技術部隊の極秘任務】


 偶発戦闘の収束と並行して、サンクトゥス技術部隊が極秘の調査を実施していた。


「エドモンド博士、エーテルクリスタル反応兵器の詳細が判明しました」


 技術部隊長が、衝撃的な調査結果を報告した。


「予想を遥かに上回る深刻な状況です」


【調査で判明した真実】


 各陣営が保有するエーテル兵器は、当初の推定を大幅に超えていた。


工業同盟のエーテル兵器:

- スチールシティ基地:2発(1メガトン級、都市破壊用)

- アイアンバレー工場群:2発(500キロトン級、戦術用)

- ファクトリーランド要塞:1発(2メガトン級、戦略用)


資源連邦のエーテル兵器:

- グランドクリスタル鉱山:2発(1.5メガトン級、鉱山防衛用)

- ライトクリスタル採掘場:1発(800キロトン級、採掘場防衛用)

- レインボークリスタル精製所:1発(1.2メガトン級、精製所防衛用)


軍事帝国のエーテル兵器:

- ストロングアーム要塞:1発(3メガトン級、首都防衛用)

- アイアンハンマー基地:1発(2.5メガトン級、工業同盟攻撃用)

- スチールフィスト基地:1発(2メガトン級、資源連邦攻撃用)


総破壊力:約15メガトン(広島型原爆の1,000倍)


「これは...人類史上最大の破壊兵器です」


 エドモンド博士が青ざめていた。


「12発全てが使用されれば、西大陸の面積の85%が居住不可能となり、エーテル汚染が全世界に拡散します」


---


【中立地帯平和会議場】


 偶発戦闘の収束を受けて、予定より12時間早く、三大陣営指導者の緊急会談が開催された。


【歴史的会談の参加者】

- アリア・フォン・アーテミス:世界平和機構最高司令官(仲裁者)

- ヴィクター・スチールハート皇帝:工業同盟盟主(55歳)

- エレナ・クリスタルハート大統領:資源連邦代表(45歳)

- アレクサンドル・アイアンフィスト皇帝:軍事帝国皇帝(60歳)


「諸君、我々は人類存亡の危機に直面しています」


 アリアが歴史的な開会宣言を行った。


「エーテルクリスタル反応兵器12発の総破壊力は、人類文明を終わらせるに十分です」


 会議場に重い沈黙が流れた。三大指導者の表情が、一瞬で緊張に満ちた。


【各指導者の初期反応】


ヴィクター皇帝:

「15メガトンの破壊力...それほどの威力だったのか」

「我が工業同盟も、その攻撃を受ければひとたまりもない」


エレナ大統領:

「エーテル汚染が全世界に拡散するなら、環境破壊の規模は想像を絶します」

「これは西大陸だけの問題ではなくなります」


アレクサンドル皇帝:

「確かに、この破壊力では勝者は存在しない」

「軍事的勝利を得ても、統治すべき領土が失われる」


---


【工業同盟の主張】


「アリア最高司令官、我が同盟の立場を理解していただきたい」


 ヴィクター皇帝が4,000万人の代表として発言した。


「我々工業同盟は、30年間の努力で西大陸最大の工業力を築き上げました」


「鉄鋼生産、機械製造、インフラ建設—これらすべてが我が同盟の技術力によるものです」


「しかし、エーテルクリスタルの供給制限により、工業生産が30%も低下しています」


皇帝の声に、4,000万人の生活を背負う重圧が込められていた。


「我が国民の多くが失業し、生活水準が著しく悪化している」


「工業同盟として、この状況を座視することはできません」


【資源連邦の反論】


「ヴィクター皇帝の苦境は理解できます」


 エレナ大統領が環境保護の立場から応答した。


「しかし、無制限な採掘は持続不可能です」


「現在の採掘ペースでも、エーテルクリスタル鉱床の枯渇が100年後に予想されています」


「工業同盟の要求通りに採掘を拡大すれば、50年で資源が完全に枯渇します」


 大統領が具体的なデータを示した。


「そうなれば、工業同盟の産業基盤そのものが崩壊することになります」


「短期的な利益のために、長期的な持続可能性を犠牲にすることはできません」


【軍事帝国の第三の道】


「両者の議論はもっともだが、解決策が見えない」


 アレクサンドル皇帝が軍事的現実主義の観点から発言した。


「工業同盟の経済危機も、資源連邦の環境保護も、どちらも重要だ」


「しかし、話し合いで解決できる問題なら、既に解決しているはずだ」


 皇帝が軍事統一論を展開した。


「我が軍事帝国による西大陸統一こそが、唯一の現実的解決策だ」


「統一された指導の下で、資源配分と環境保護を両立させる」


---


【古代技術による解決提案】


「三陣営の皆様の主張は、それぞれ正当性があります」


 アリアが慈悲深い口調で調停を開始した。


「しかし、世界平和機構として、より良い解決策を提案いたします」


「古代技術を活用することで、工業発展と環境保護、そして平和的統治を同時に実現できます」


【具体的解決策の提示】


第1案:古代技術によるエネルギー革命

- 工業同盟への代替エネルギー技術提供

- エーテルクリスタル依存度を50%削減

- 生産効率を従来の200%まで向上


第2案:環境復旧・保護技術の提供

- 採掘後の鉱山を完全に環境復旧

- エーテルクリスタルの人工生成技術開発

- 持続可能な採掘システムの構築


第3案:西大陸統合議会の設立

- 35カ国による民主的意思決定機構

- 軍事力ではなく合意による統治

- 各陣営の自治権を尊重した緩やかな統合


「これらの技術と制度により、三陣営すべての利益を実現できます」


 アリアが確信を持って提案した。


【指導者たちの反応】


 ヴィクター皇帝が興味を示した。


「代替エネルギー技術...それは本当に実現可能なのか?」


 エレナ大統領も前向きだった。


「環境復旧技術があれば、採掘と環境保護の両立が可能になります」


 しかし、アレクサンドル皇帝は懐疑的だった。


「理想的な提案だが、実現可能性に疑問がある」


「これまでの歴史を見れば、話し合いによる解決は常に破綻している」


---


【交渉決裂の危機】


「アリア最高司令官、あなたの理想は理解できる」


 アレクサンドル皇帝が立ち上がった。


「しかし、我が軍事帝国2,500万人の忍耐にも限界がある」


「この無意味な対立を終わらせるため、最後通牒を発する」


 会議場に緊張が走った。


【軍事帝国の最後通牒】


「工業同盟と資源連邦は、24時間以内に以下の条件を受け入れよ」


1. 軍事帝国による西大陸統一政府の樹立

2. エーテルクリスタル資源の軍事帝国による一元管理

3. 工業同盟と資源連邦の軍備削減(90%削減)

4. 統一政府による資源配分と経済政策の決定


「この条件を拒否する場合、我が軍事帝国120万人の精鋭により、両国を軍事占領する」


「エーテルクリスタル反応兵器の使用も辞さない」


【工業同盟と資源連邦の強硬反発】


「断固として拒否する!」


 ヴィクター皇帝が激怒した。


「我が工業同盟4,000万人が、軍事独裁に屈することはない!」


 エレナ大統領も同様に反発した。


「民主的な資源連邦が、軍事的脅迫に屈するわけにはいきません!」


「それならば、戦争やむなしだ」


 アレクサンドル皇帝が冷徹に宣告した。


「24時間後に軍事行動を開始する」


---


【三陣営同時の軍事動員】


 会談決裂により、三大陣営が同時に最高レベルの戦闘準備を開始した。


【工業同盟軍の動員】

- 動員:重装歩兵200万人、主力戦車5万両

- 作戦目標:資源連邦領への全面侵攻

- エーテル兵器:5発を発射準備状態に移行


「全工業同盟軍に告ぐ」


 ヴィクター皇帝が軍事演説を行った。


「我々の生存をかけた戦いが始まる」


「エーテルクリスタルを確保し、我が同盟の未来を守り抜け」


【資源連邦軍の応戦準備】

- 動員兵力:機動部隊150万人、エーテルクリスタル兵器装備

- 作戦目標:工業同盟の侵攻阻止と報復攻撃

- エーテル兵器:4発を即応体制に変更


「全資源連邦軍へ」


 エレナ大統領が緊急放送を実施した。


「我々の主権と環境を守るため、最後まで戦い抜きます」


「エーテルクリスタルの聖なる力で、侵略者を撃退しましょう」


【軍事帝国軍の両面作戦】

- 動員兵力:精鋭軍120万人、最新兵器完全装備

- 作戦目標:工業同盟と資源連邦の同時制圧

- エーテル兵器:3発を戦略攻撃用に準備


「全軍に命令する」


 アレクサンドル皇帝が最終指令を発した。


「西大陸に真の平和をもたらすため、両国を同時に制圧する」


「抵抗は無意味だということを、圧倒的な軍事力で示せ」


---


【統合平和維持軍の危機的状況】


「最高司令官、状況が極めて深刻です」


 ガレス副司令官が緊急報告した。


「三大陣営合計470万人の軍隊が、12時間以内に戦闘を開始する予定です」


「我が統合平和維持軍15万人では、軍事的に阻止することは不可能です」


【エーテル兵器の発射タイムライン】


 エドモンド博士が最悪のシナリオを分析していた。


「各陣営のエーテル兵器発射予定時刻が判明しました」


- 工業同盟:12時間後(資源連邦の主要鉱山を標的)

- 資源連邦:14時間後(工業同盟の工業地帯を標的)

- 軍事帝国:16時間後(両陣営の首都を標的)


「12発のエーテル兵器が16時間以内に使用される可能性が90%を超えています」


【古代技術による最後の手段】


「守護者、この危機への対応策はありますか?」


 アリアが古代技術装置に最後の相談をした。


「極めて困難ですが、一つだけ可能性があります」


 守護者の声に、深刻な懸念が込められていた。


「『調和の創造』技術を、これまでの最大規模で発動することです」


「ただし、1億人規模への同時適用は、アリア様の生命に重大な危険をもたらします」


【生命を賭けた最終決断】


「どの程度の危険ですか?」


「生命エネルギーの過度な消耗により、寿命が10-20年短縮する可能性があります」


「一時的な昏睡状態が数日間継続し、古代技術が完全に使用不能となる期間もあります」


 アリアが迷いなく決断した。


「構いません」


「1億人の生命と地球の未来のためなら、私の命など安いものです」


---


【史上最大規模の古代技術発動準備】


「最高司令官、再考をお願いします」


 ガレス司令官が涙を浮かべながら懇願した。


「あなたを失えば、世界平和機構の存続に関わります」


「ガレス司令官、私の使命は世界平和の実現です」


 アリアが確固たる意志を示した。


「個人の安全よりも、全人類の安全が優先です」


「それに、私には仲間たちがいます。たとえ私が倒れても、皆さんが平和を守り続けてくれるでしょう」


【古代技術装置の最大出力設定】


「『調和の創造』技術を西大陸全域1億人に適用」


アリアが古代技術装置の設定を変更した。


【大規模調和技術の効果範囲】

- 対象人口:1億人(これまでの最大規模の100倍)

- 効果範囲:西大陸全域(面積300万km²)

- 持続時間:24時間(争いの心を完全に浄化)

- 消費エネルギー:アリアの生命エネルギー20年分


「発動まで3時間の準備時間が必要です」


 守護者が技術的詳細を説明した。


「その間に、エーテル兵器が発射される可能性もあります」


「承知しています。最後まで外交努力を続けます」


---


【発動準備の間の個人的時間】


 大規模調和技術の発動準備の間、アリアは愛馬フェリスと共に最後の時間を過ごしていた。


「フェリス、長い間ありがとう」


 アリアがフェリスの鬣を優しく撫でながら語りかけた。


「あれから私を、ここまで支えてくれました」


 美しい栗毛の牝馬は、主人の心境を敏感に感じ取っているようで、いつもより静かに佇んでいた。


「今度の戦いで、私は深刻なダメージを受けるかもしれません」


「でも、後悔はありません。これが私の選んだ道です」


【ベネリとの思い出】


 アリアがベネリM3を手に取った。


「この武器も、長い間共に戦ってくれました」


 VRアーティファクトから最初に獲得した記念すべき武器には、数々の戦いの記憶が刻まれている。


「ケントフィールドの農民蜂起、サンクトゥス帝国との戦い、深海の決戦...」


「すべてが今日のこの瞬間につながっています」


【仲間たちへの最後のメッセージ】


「ガレス司令官、ウォルター提督、トム中佐、ハリー艦長、セルゲイ艦長」


 アリアが主要な仲間たちを呼び集めた。


「皆さんと共に戦えたことが、私の最大の誇りです」


「もし私に何かあっても、世界平和機構の理念を継承し、真の平和を実現してください」


 全員が敬礼しながら涙を流していた。


「必ず成功させてください、最高司令官」


 トム中佐が元農民らしい率直さで言った。


「あなたの『慈悲の統治』を、絶対に無駄にしません」


---


【三大陣営への最終アピール】


 調和技術発動まで残り3時間となった時点で、アリアは三大陣営指導者への最後の説得を試みた。


【工業同盟への個別通信】


「ヴィクター皇帝、最後にお聞きください」


 アリアが工業同盟首都へ緊急通信を送った。


「エーテル兵器を使用すれば、皇帝が愛する工業地帯も永久に失われます」


「4,000万人の国民のために戦っているはずが、4,000万人を危険にさらすことになります」


「古代技術による代替案を、もう一度検討していただけませんか?」


 皇帝の声に、わずかな迷いが感じられた。


「アリア元帥...あなたの真意は理解できる」


「しかし、もう後戻りはできない状況だ」


【資源連邦への個別通信】


「エレナ大統領、あなたの環境への愛は誰よりも理解しています」


 アリアが資源連邦首都へ通信した。


「しかし、エーテル兵器による汚染は、これまでの環境破壊とは比較にならない規模です」


「大統領が守ろうとしている美しい自然が、永久に失われてしまいます」


 大統領の声に涙が滲んでいた。


「分かっています...でも、侵略を受けている以上、防衛するしかありません」


【軍事帝国への個別通信】


「アレクサンドル皇帝、真の軍人なら理解できるはずです」


 アリアが軍事帝国首都へ最後の通信を送った。


「勝利のない戦争に意味はありません」


「エーテル兵器により西大陸が壊滅すれば、皇帝が統治すべき領土も国民も失われます」


 皇帝が軍人らしい率直さで応答した。


「確かに、勝者のいない戦争は無意味だ」


「しかし、軍人として、一度下した決断を覆すことはできない」


---



【午後3時 - 工業同盟軍エーテル兵器発射】


 外交努力の甲斐なく、ついに人類史上最悪の瞬間が到来した。


「工業同盟軍、エーテルクリスタル反応兵器第1弾発射!」


 スチールシティ基地から、1メガトン級のエーテル兵器が資源連邦の最大鉱山に向けて発射された。


【発射現場での兵士たちの動揺】


「本当に撃ってしまった...」


 発射ボタンを押した工業同盟軍の若い技術者が、手の震えを止められずにいた。


「これで何十万人が...」


「黙れ!これは我が国民のための正義の戦いだ!」


 上官が部下を叱責したが、その声にも動揺が混じっていた。


 巨大な光の軌跡が空を走り、大気を震わせる轟音が西大陸全域に響いた。


「着弾まで15分」


 技術部隊が絶望的な報告をした。


「グランドクリスタル鉱山が完全破壊され、エーテル汚染が半径100kmに拡散する予定です」


【資源連邦軍の報復攻撃】


「工業同盟が先制攻撃を実行!」


 エレナ大統領が緊急軍事会議で報復を決定した。


「我々も直ちに反撃する!」


【資源連邦基地での混乱】


「大統領、本当に反撃するのですか?」


 若い女性将校が震え声で確認した。


「これでは報復の連鎖が止まりません」


「やむを得ない!侵略者に屈するわけにはいかない!」


 大統領自身も涙を流しながら発射命令を下した。


 午後3時5分、資源連邦軍もエーテル兵器による報復攻撃を開始した。


 1.5メガトン級のエーテル兵器が、工業同盟の最大工業地帯アイアンバレーに向けて発射された。


【軍事帝国軍の両面攻撃】


「両国が相撃ちを開始した」


 アレクサンドル皇帝が最終決断を下した。


「我が軍事帝国による統一の時が来た」


【軍事帝国基地での兵士たちの葛藤】


「皇帝、これで良いのでしょうか?」


 ベテラン参謀が最後の確認をした。


「3発同時発射すれば、西大陸は完全に破滅します」


「それでも秩序を回復するためには必要な犠牲だ」


 皇帝が軍人としての冷徹さを装ったが、その目には深い悲しみが宿っていた。


 午後3時10分、軍事帝国軍が3発のエーテル兵器を同時発射した。


- 2.5メガトン級兵器 → 工業同盟首都スチールシティ

- 2メガトン級兵器 → 資源連邦首都クリスタルタワー

- 3メガトン級兵器 → 西大陸中央部(三陣営境界地域)


「合計15メガトンの破壊力が、西大陸を襲う」


 エドモンド博士が絶望的な計算結果を報告した。


「これで西大陸は完全に終わりです」


---


【アリアの決死の決断】


「守護者、『調和の創造』技術を今すぐ発動してください!」


 アリアが古代技術装置の前に立った。


「エーテル兵器の着弾まで10分しかありません」


【アリアの内面的葛藤】


 古代技術装置に手を置く前、アリアの脳裏に様々な思いが駆け巡った。


「ガレス司令官、トム中佐、ハリー艦長...愛する仲間たちよ」


「フェリス、長い間ありがとう」


 弱かったあの頃の記憶が蘇った。弱々しくベッドに横たわっていた日々、初めてVRアーティファクトに触れた瞬間、愛馬フェリスとの出会い、ベネリショットガンで初めて戦った時の恐怖と興奮...


「私の人生は、この瞬間のためにあったのかもしれません」


「王女として生まれ、仲間と出会い、古代技術を学び、そして今...」


 涙が頬を伝った。


「お父様、お母様、天国から見守っていてください」


「私は世界平和機構最高司令官として、最後の責任を果たします」


「了解しました。ただし、アリア様の安全は保証できません」


 守護者が最後の警告を発した。


「生命エネルギーの過度な消耗により、重篤な状態に陥る可能性があります」


「構いません!」


 アリアが古代技術装置に手を置いた。


「1億人の生命のため、全力を尽くします!」


「私があれから学んだ最も大切なこと...それは、弱い者を守ることです」


「今度は1億人の弱い人々を、私が守る番です」


【史上最大規模の古代技術発動】


 午後3時12分、アリア・フォン・アーテミス世界平和機構最高司令官が、人類史上最大規模の古代技術を発動した。


『調和の創造』技術が、西大陸全域1億人に向けて放射された。


【調和エネルギーの放射】


 古代技術装置から放射された調和のエネルギーは、光速で西大陸全域に広がった。


- 対象人口:1億人(工業同盟4,000万人、資源連邦3,500万人、軍事帝国2,500万人)

- 効果範囲:西大陸全域300万km²

- エネルギー強度:これまでの最大規模の100倍

- 持続時間:24時間(完全な心の浄化)


淡い金色の光が西大陸全域を包み込み、1億人の心に同時に調和のエネルギーが届いた。


---


【工業同盟での変化】


 調和エネルギーを受けた工業同盟4,000万人の心に、劇的な変化が起こった。


スチールシティの工場労働者:

「なぜ隣国の人々を憎んでいたんだ?」

「彼らも同じように家族の幸せを願っているのに」

「戦争で誰も幸せになれない」


工業同盟軍の兵士たち:

「エーテル兵器を発射してしまった...なんてことを」

「無実の人々を殺してしまうかもしれない」

「これは間違いだ。すぐに止めなければ」


ヴィクター皇帝自身の変化:

「私は...何をしていたのだ」

 皇帝が発射されたエーテル兵器を見つめながら愕然とした。

「4,000万人の国民のために戦っていたはずが、1億人を危険にさらしている」

「これは指導者のすることではない」


【資源連邦での覚醒】


 資源連邦3,500万人も、同様の心境変化を体験していた。


クリスタル鉱山の鉱夫たち:

「環境は大切だが、他国の人々の生活も重要だ」

「独占ではなく、共存の道を探すべきだった」

「美しいクリスタルの力を、破壊に使うなんて」


資源連邦軍の将校たち:

「報復攻撃を命令してしまった」

「工業同盟の人々も、同じ人間なのに」

「大統領の環境保護の理念は正しいが、手段が間違っていた」


エレナ大統領の深い後悔:

「私が愛する美しい西大陸を、自分の手で破壊しようとしている」

「環境を守るためだったのに、最悪の環境破壊を引き起こそうとしている」

「アリア最高司令官の提案を、もっと真剣に検討すべきだった」


【軍事帝国での心境転換】


 軍事帝国2,500万人にも、根本的な価値観の変化が起こった。


軍事基地の兵士たち:

「真の平和は、武力では実現できない」

「恐怖による支配は、本当の秩序ではなかった」

「アリア最高司令官の『慈悲の統治』こそ、真の指導力だ」


アレクサンドル皇帝の覚醒:

「40年の軍歴で学んだことが、すべて間違いだったのか」

「力による統一は、真の統一ではない」

「心の調和による統合こそが、本当の平和をもたらす」

「3発のエーテル兵器...なんという愚かなことを」


---


【発射されたエーテル兵器の緊急停止】


 調和エネルギーの影響を受けた各陣営の軍事指揮官たちが、発射されたエーテル兵器の緊急停止を試みた。


【工業同盟の緊急措置】


「全部隊に緊急命令!」


 ヴィクター皇帝が全軍に緊急指令を発した。


「発射されたエーテル兵器を自爆させよ!」


「民間人の被害を最小限に抑えるため、大気圏内で自爆処分せよ!」


 工業同盟軍の技術部隊が、発射済みのエーテル兵器に自爆信号を送信した。


 午後3時18分、グランドクリスタル鉱山まで残り200kmの地点で、エーテル兵器が自爆した。


 大気圏上空での爆発により、地上への被害は最小限に抑えられた。


【資源連邦の同様の措置】


「緊急自爆命令発令!」


 エレナ大統領も同じ決断を下した。


「美しい西大陸を破壊することはできません」


 資源連邦軍のエーテル兵器も、アイアンバレー工業地帯まで残り150kmの地点で自爆した。


【軍事帝国の英断】


「全エーテル兵器の緊急自爆を命令する!」


 アレクサンドル皇帝が軍人としての最後の良心を示した。


「軍事力は破壊のためではなく、守護のためにあるべきだった」


 3発のエーテル兵器すべてが、目標到達前に自爆処分された。


【奇跡的な被害回避】


「信じられません!」


 エドモンド博士が興奮して報告した。


「12発のエーテル兵器すべてが、目標到達前に自爆処分されました!」


「地上への直接被害はゼロです!」


 調和技術により浄化された1億人の良心が、人類文明を破滅から救ったのだった。


---


【調和技術発動の代償】


 しかし、1億人規模の調和技術発動は、アリアに致命的な負担をもたらしていた。


「最高司令官!」


 ガレス副司令官が駆け寄ったとき、アリアは古代技術装置の前で倒れていた。


「意識不明の重篤な状態です」


 医療班が緊急診断を実施した。


「生命エネルギーの過度な消耗により、深い昏睡状態に陥っています」


【アリアの昏睡状態の詳細】

- 意識レベル:完全昏睡(外部刺激に無反応)

- 生命徴候:微弱だが安定

- 予想昏睡期間:3-70日間

- 長期的影響:寿命15-40年短縮の可能性

- 古代技術:完全使用不能状態


「これが『慈悲の統治』の真の意味なのですね」


 エドモンド博士が感動と悲しみを込めて呟いた。


「自分の生命を賭けて、1億人を救われました」


【愛馬フェリスの深い悲しみ】


 愛馬フェリスは、昏睡状態のアリアの側を離れようとしなかった。

 美しい栗毛の牝馬は、主人の危機を理解しているようで、じっと静かに見守り続けていた。


 フェリスの目には、まるで涙のような光が宿っていた。時折、アリアの手を優しく鼻で触れ、「起きて」と訴えかけているようだった。


「フェリス...」


 ガレス司令官がフェリスの首を撫でた。


「最高司令官は必ず回復されます。それまで一緒に待ちましょう」


 フェリスが悲しそうに鳴いた。その声は、まるで愛する主人への愛情と心配を表しているようだった。


【昏睡中の5日間の各陣営の具体的動き】


 アリアが昏睡状態にある間、三大陣営は具体的な和平措置を実行していた。


【第1日:緊急停戦と救護活動】


工業同盟の措置:

「全軍に緊急命令。一切の軍事行動を停止せよ」


 ヴィクター皇帝が、エーテル兵器の自爆処分後、即座に全面停戦を命令した。


「負傷者の救護を最優先とし、敵味方の区別なく医療支援を実施せよ」


 工業同盟軍20万人が、偶発戦闘や軍事演習での負傷者救護に専念した。


資源連邦の措置:

「我々も人道支援を開始します」


 エレナ大統領が、エーテルクリスタルの治療効果を活用した医療支援を決定した。


「美しいクリスタルの力を、今度こそ正しい目的のために使いましょう」


軍事帝国の措置:

「我が軍の医療部隊を両国に派遣する」


 アレクサンドル皇帝が、軍事技術を人命救助に転用した。


「真の軍事力とは、人を守る力だったのだ」


【第2-3日:エーテル兵器の完全解体】


 三大陣営が協力して、残存するエーテル兵器の完全解体作業を開始した。


「アリア最高司令官が命を賭けて阻止してくださった兵器を、二度と使えないようにしましょう」


 各陣営の技術者が合同で解体作業を実施し、エーテルクリスタルを平和利用に転換した。


【第4-5日:統合平和協定の草案作成】


「最高司令官が回復されたとき、すぐに署名できるよう準備しましょう」


 三大陣営の代表が昼夜を問わず協議を重ね、詳細な平和協定草案を完成させた。


---


【昏睡中のアリアを囲んで】


 アリアの昏睡状態を受けて、三大陣営の指導者たちが再び会談テーブルに着いた。


 今度は、調和技術により心が浄化された状態での建設的な話し合いだった。


【ヴィクター皇帝の深い反省】


「諸君、私は取り返しのつかない過ちを犯すところだった」


 皇帝が深く頭を下げた。


「4,000万人の国民のためという名目で、1億人を危険にさらそうとしていた」


「アリア最高司令官の命懸けの行動により、目が覚めました」


【エレナ大統領の環境理念の再定義】


「私も同様です」


 大統領が涙を流しながら語った。


「環境保護という正しい理念を、間違った方法で実現しようとしていました」


「美しい西大陸を守るために、自分の手で破壊しようとしていた矛盾に気づきました」


【アレクサンドル皇帝の軍事観の転換】


「40年間の軍歴で、初めて理解できました」


 皇帝が軍人らしい率直さで告白した。


「真の平和は、武力による征服では実現できない」


「アリア最高司令官の『慈悲の統治』こそ、軍人が目指すべき究極の目標だった」


---


【歴史的和平合意】


 調和技術により心を浄化された三大陣営指導者が、歴史的な平和協定に署名した。


【西大陸統合平和協定】


前文:

「我々は、アリア・フォン・アーテミス世界平和機構最高司令官の自己犠牲的行動により、人類文明の破滅から救われた。この恩義に報いるため、永続的平和の実現を誓約する。」


第1条:即時停戦と恒久平和

- 全ての軍事行動の永続的停止

- エーテルクリスタル反応兵器の完全廃棄と平和利用転換

- 軍備の90%削減(災害救助・平和維持特化)


第2条:エーテルクリスタル資源の共同管理

- 世界平和機構による一元管理体制

- 工業発展と環境保護の両立システム

- 古代技術による持続可能な採掘方法の導入


第3条:西大陸統合議会の設立

- 35カ国による民主的意思決定機構

- 各陣営の自治権を尊重した緩やかな統合

- 紛争の平和的解決システム


第4条:世界平和機構への正式加盟

- 西大陸全域の世界平和機構加盟

- 統合平和維持軍への積極的参加

- 『慈悲の統治』理念の共有


第5条:技術・人材の相互交流

- 工業技術、環境技術、軍事技術の共有

- 古代技術と現代技術の融合研究

- 教育・文化交流の全面的促進


【三大指導者の新たな役職】


 協定締結により、三大陣営指導者に新たな役職が与えられた。


- ヴィクター・スチールハート:西大陸統合議会議長

- エレナ・クリスタルハート:国際資源管理機構理事長

- アレクサンドル・アイアンフィスト:世界平和維持軍顧問


---


【12発の大量破壊兵器の平和転換】


「全てのエーテルクリスタル反応兵器を、平和目的に転換します」


 エドモンド博士が技術的解決策を提示した。


【平和利用への転換計画】


クリーンエネルギー生産:

- 各地域の発電所に転換(8発)

- 西大陸全域のエネルギー需要を100%満たす

- 化石燃料への依存を完全解消


災害救助技術:

- 緊急時のエネルギー供給システム(2発)

- 大規模自然災害への即応体制

- 人道支援活動の強化


環境修復技術:

- 汚染地域の浄化作業(1発)

- 砂漠化地域の緑化プロジェクト

- 海洋汚染の除去システム


宇宙開発技術:

- 平和的宇宙探査への活用(1発)

- 他惑星との通信システム

- 宇宙環境での居住技術


「破壊のための技術が、建設のための技術に変わります」


 エドモンド博士が感慨深く語った。


「これこそが、真の技術の使い方です」


---


【5日後 - 奇跡的な回復】


 昏睡状態が5日間続いた後、アリアが奇跡的に意識を回復した。


「ここは...」


 アリアがゆっくりと目を開けた。


【フェリスの歓喜の表現】


 愛馬フェリスは、主人の意識回復を誰よりも早く察知した。


「ヒヒーン!」


 フェリスが歓喜の鳴き声を上げ、アリアのベッドサイドで嬉しそうに足踏みした。


 美しい栗毛の毛が輝き、まるで「お帰りなさい、アリア」と言っているようだった。


 フェリスは優しくアリアの手を鼻で触れ、5日間の心配と愛情を表現した。


「フェリス...ありがとう。ずっと側にいてくれたのですね」


 アリアがフェリスの鼻を撫でると、フェリスは安堵したように静かに鳴いた。


 その瞬間、病室の扉が勢いよく開いた。


「最高司令官!」


 ガレス副司令官以下、全ての仲間が病室に駆けつけた。


「お帰りなさい」


 全員が涙を流しながら、アリアの回復を心から喜んでいた。


 フェリスも嬉しそうに首を振り、主人と仲間たちの再会を祝っているようだった。


【回復後の状況説明】


「最高司令官、素晴らしいニュースがあります」


 ウォルター提督が嬉しそうに報告した。


「西大陸統合平和協定が締結され、1億人が世界平和機構に加盟しました」


「エーテルクリスタル反応兵器12発も、すべて平和利用に転換されています」


 アリアの表情が安堵と喜びに満ちた。


「皆さんのおかげです」


「いえ、最高司令官の自己犠牲があったからこそです」


 トム中佐が感動を込めて言った。


「あなたの『慈悲の統治』が、1億人の心を変えました」


---


【世界平和機構の大幅拡大】


 西大陸35カ国の加盟により、世界平和機構は飛躍的に拡大した。


【加盟状況(西大陸統合後)】

- 総加盟国:248カ国

- アーテミス大陸:33カ国

- 極東大陸:50カ国

- 西大陸:35カ国

- その他:130カ国

- 総人口:13億人(世界人口の85%)

- 平和維持軍:40万人(各大陸統合軍)

- 平和期間:全世界軍事紛争ゼロ件継続中


【アリアへの国際的評価の急上昇】


 1億人を救ったアリアの行動は、世界中で「奇跡」として称賛されていた。


「最高司令官、各大陸から特別な提案が届いています」


 ガレス副司令官が重要な文書を持参した。


【12大信仰指導者からの提案】


 セラフィム・ライトブリンガー光明教最高導師を代表として、12大信仰指導者が連名で提案書を提出していた。


「アリア・フォン・アーテミス最高司令官の自己犠牲的行動は、すべての信仰を超越した『聖女』の行為でした」


「1億人の生命を救い、人類文明を破滅から守った功績は、『聖女』の称号にふさわしいものです」


【世界各国軍事指導者からの提案】


 同時に、世界各国の軍事指導者からも特別な提案が寄せられていた。


「最高司令官の指揮能力は、『大元帥』の地位に値します」


 マーシャル・ストラテジー極東連邦統合参謀本部議長が軍事的評価を示した。


「15万人の統合平和維持軍を指揮し、1億人規模の危機を解決した実績は、軍事史上前例がありません」


「『大元帥』として、全世界の軍事力を平和のために統率していただきたい」


【アリアの謙遜】


「皆様からの過分な評価に恐縮しています」


 アリアが謙遜の姿勢を示した。


「私一人の力では何もできませんでした。すべては仲間たちとの協力、そして古代技術の力によるものです」


「しかし、もしその称号が世界平和の実現に役立つなら...」


「検討させていただきます」


【昇格式典の準備】


 各大陸代表の一致した要請により、アリアの「聖女・大元帥」昇格式典の準備が始まっていた。


「式典は次の重要な課題解決後に実施予定です」


 ガレス副司令官が今後の予定を説明した。


「海洋国家連合との交渉が成功すれば、全世界を代表する指導者として正式に認定されます」


【古代技術の段階的普及】


 アリアの回復により、古代技術の平和利用が本格化した。


- エネルギー技術:クリーンエネルギーの世界普及

- 環境技術:地球規模の環境修復プロジェクト

- 医療技術:病気と飢餓の撲滅計画

- 通信技術:全人類の情報共有システム

- 教育技術:知識と知恵の共有プラットフォーム


---


【1ヶ月後 - 新たな挑戦の予感】


 西大陸危機の解決から1ヶ月が経過し、アリア・フォン・アーテミス世界平和機構最高司令官(21歳)は次なる課題に向けて準備を進めていた。


「最高司令官、次の大きな課題が見えてきました」


 ガレス副司令官が新たな報告を持参した。


「残る未加盟地域との統合、そして...」


「海洋国家連合ですね」


 アリアが予想していた次なる挑戦を確認した。


「5,000年の歴史を持つ海底文明との対話が、次の重要な課題となります」


【愛馬フェリスとの新たな出発】


「フェリス、また新しい冒険が始まりますね」


 アリアが愛馬の首を撫でながら語りかけた。


 美しい栗毛の牝馬は、主人の成長を誇らしげに見つめていた。


 病痩の王女から世界平和機構最高司令官への成長、そして1億人を救った英雄的行動—すべてを共に歩んできた相棒だった。


「今度は海の文明との出会いです」


「ショットガンも、まだまだ活躍の場がありそうです」


 窓の外には、平和な西大陸の風景が広がっていた。かつて戦場だった土地に、今は各国の子供たちが一緒に遊んでいる。


【海からの新たな挑戦】


 その時、遠い海の向こうから、微かな光の信号が届いていた。


 それは海洋国家連合からの、地上文明への初の公式メッセージかもしれない。


「病痩の王女から始まった物語も、いよいよ海洋文明との出会いに向かいます」


 アリアが海の方角を見つめながら呟いた。


「海底5,000年の古代文明...それが次なる冒険の舞台です」


 愛馬フェリスが理解しているように、静かに嘶いた。


 新たな伝説の幕開けを予感させる、希望に満ちた響きだった。



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