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第4話 人類の支配と『絶対律』

ロボット技術の天才の相棒と奨学金獲得コンペ・CNSに参加する事になり、AIの天才・萌隆斗めるとはいよいよ最終仕上げに臨んでいました。






 秘密の味付け、それは――――。



「フッ。教えてもいいよ。ま、実際にはこの界隈じゃ既に知られてる事だしな。……んで、託人は『教師なし学習』って知ってるか」


「読んで字のごとし?」


 俺は滔々と教え始めた。まず予め判定されたサンプルと、そうではない、と判定されたサンプルをたくさん集めて、コンピュータに特徴を見出させて学習してもらうアプローチが機械学習。そしてそれを


『教師あり学習』


 という。ところがそもそも正しく分類された正解を準備することが困難な場合もある。つまり分類の仕方自体もコンピュータに考えて欲しい。


 こうした正解が無い場合もある。そう言いかけたら身を乗り出した託人は迷い無く口を挟んだ。


「『教師なし学習』ってか?」


「そう。現在はこれが進化していてな」


 ピュアな眼差しの託人へシタリ顔で続けた俺。そう、有名なところでは、一週間に渡り『ようつべビデオ』を『疑似脳ネットワーク』に見せたところ、猫の写真を識別する事を学習したと。

 なんと事前に猫をネットワークに教えたわけでも、ラベル付けをした画像を与えたわけでもなかったのに!



 つまり、ネットワーク自身が『ようつべの画像』から猫がどういうものかを知った事になると告げた。

    ( ※ 事実です)


「何ィ!? 先入観だけでなく、猫を判別せよという指示も無しに機械が見聞きする経験だけで猫という概念自体から認識しだたとぉ?!……つまりは自分で考えた……」


「ん。まあそうなるな」


「でも『自考力』は人間と本能で生きる他の動物を分ける最大のポイント、それをやってのけたと?」


「驚いた? そう、既にそういう時代に来てたって事。そのニューロン様ネットワークをこの『ブレンダー』にも応用したのさ」


「マジか……だからこんなに自然なんだ……恐るべし、疑似脳ネットワーク……」


 もはや俺は有頂天だった。腰に手を当てるポ一ズ。これ迄と、そしてこれからについてを捲し立てる。



 ~脳的には赤ちゃんから育てて来た事、ただ経験スピードはバーチャルだから人間よりずっと早いから、この1年でかなり成長して今やこの通り実用領域になったこと。etc……。


 只、それは机上の話であり、例えば街中や人の輪に入ってのやりとりはまだ赤ちゃんレベル。この試作段階で練度を上げてくのがこの後のミッションだと教えた。




「これ、ヤバくない? なんか、アブナイ組織とかに狙われるんじゃね」


 変なフラグ立てんなよ……


「嬉しい誉め言葉だな。でもそこ迄じゃねーよ」



 この天才に興奮で上気しきった面持ちでそこ迄言われると、何か自分が上級の人間になった様に錯覚してしまう。調子狂うなぁ……コイツ相手だと心を開いてしまう……。


「どうだ? 託人のロボットにこれ、積んでみたいと思うか?」


「おおお、頼むよ萌隆斗めると! 絶対に他の奴と組まないでくれ」


 その一言で託人は本気でCNS入選で奨学金免除を狙ってると判った。そうして俺達はバディーとなり、順調に事は運んだ。



  * *



 ……フフ、あと一息だな、超絶美少女アンドロイド計画が実現されるのも。


「あ、あのさ、託人、実は…」

「ワルイ、萌隆斗、俺ちょっと思う所があって」


 ん、どうしてそんな浮かない顔してんだ?!


「俺のロボット、最近スペック高過ぎてさ、そこにこんな萌隆斗めるとの最強人工知能を載せても良いのか……って思う時がある。

 例えばもしこの知能が感情もったりした時に暴走とかしたら大変な事になるんじゃないかって……」



 コイツ真面目過ぎ。今さら何言ってんだ!



萌隆斗めると、俺、やっぱ止めようかと思う」

「って、待て待て」


 ……いや、マジ慎重派やん。これじゃ美少女アンドロイドにしたいなんて切り出すどころか……



 そう、確かにAIには弱点がある。将来人間を越えることが確実であるがゆえ、既に恐れられ疎まれ始めているという事だ。


 随分昔から 『ロボット3原則』 というものがある。

 それは

『人間への安全性・自己防衛・命令への服従』

 から成る。


 だがいざと言う時、自律的判断で人を救うのに後ろ2つは妨げとなり得るし、兵器にAIを既に搭載し始めた現在では、これらは既に過去の物と成りかけている。となれば……



 ―――― 人類の支配。



 少くともこの俺のAIに人類滅亡計画などされてしまってはもっての外。そこでオリジナルに導入したものがある。



 ま、こんな事も有ろうかと遥か以前から対処してあんのよ!



「まあ聞け、託人よ」

 そう、俺なりの超安全対策、それを……



 ――――『絶対律』 と名付けた。



 ロボット3原則に代わるシンプルにして絶対的な規律としてそのAIの思考に縛りを設けた。それは




 ――――人命に危害を与えない

 ――――人に永遠の愛を誓う





 以前、反乱したアンドロイドに人類が駆逐されていく映画を見て、やはりこうした縛りだけは絶対に必要だと思っていた。『危ないことをするな』、だけでなく、『愛せよ』という能動的な物を加えたのがミソだ!




「これならどうよ!」

「さすが萌隆斗っ、凄いな、お前。これならイザという時に人を守れるな。ロボット3原則の上を行ってるし」


 ドヤ顔に拍車がかかる俺。さりげなく下心を隠しつつ、いよいよ計画実現へ切り出す。


「で、今度のアンドロイドの見た目なんだけど…」

「待て! やっぱり止めようかと」


「な、何?! 今度はど一したっ!」

「だってなんか萌隆斗めると、目がやらしい……」

「いや、だ~か~ら~~っ!」

「ゴメン、妙な胸騒ぎしただけだから」


 ホント勘のいいヤツ。チッ、今日は止めとくか……




  * * *



「託人、そっちの仕上がりの方はどうよ」


 今や相棒の託人が作る高性能ロボットは日常動作はおろか高度な運動さえも達者にこなす。その対話部の頭脳として組み込む前の試作最終段階だ。高1で早々にコンビを組んで早1年。


「後は小型化やその時の放熱処理が問題だな。そっちは俺ががんばるから、必ずCNSカミングネクストスプラウトをゲットしよう!」


 託人は目を輝かせながらそう言った。


 動きも思考も人間と同等以上のアンドロイド。これが上手くいけば奨学金免除はおろか、世界を驚かすものになる。夏休み前のエントリーまでに企画書を完成させるための追い込みに余念がない。





 そして高2の春。


 桜の咲く季節――――春風にハラハラと散る桜の花びらが研究室の窓から入り込み、搭載間近の小型コンピューターの上にフワリと舞い降りた。



「……クスッ、いつも以上に可愛いよ」





挿絵(By みてみん)





 まるで恋人に囁くようにして愛しく見つめた。いつかキミと共に歩む日が、もう目の前に。


『ああ、なんて楽しみなんだろう!!』


 俺達は期待に胸を膨らませ、一つの夢に向かって猛然と突っ走っていた。





  * * *





 やはり運命の分かれ道はこんな所から始まるのだろう。遂にこの時がやって来てしまった。




「やっぱ未来的な流線形メカデザインが良いだろ?」

「いや、折角なら美少女だろっっっっ!!」




 ―――― やっぱりこうなるか。


 完成デザインの意見がパッカリと割れた。その溝はマリアナ海溝より深く、互いに譲り合う気配さえも無く。

 唾を飛ばして互いに力説、延々と続けて遂に顔を背け合い……


 ああ~っ、クソォ――ッ、俺の超絶美少女アンドロイド計画がぁ~っ! 



 やむを得ん! なら最後の手段だっ!

 


「じゃあこうしよう。試作品を二体作る。金なら両方俺が出すから、その一つは託人の好きなデザインにしろ」


「え……だが材料代、結構するぞ」


「構わん。とにかく俺の方は限りなく人間に近づけたい。こっちのスキンは俺が用意する。それをロボに被せて人間と区別つかぬ程の、いや現実よりも遥かに激カワなアンドロイドにする!」


「お前なぁ……」

「拒否するならバディーやめる。どうする?」



「ぐっ……」







< continue to next time >



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