『悲しみを抱えて』『冬』
『悲しみを抱えて』
橋のたもとの、流れる小川。
淀みには、汚泥の臭気。
少年の、日々の生業、
たかり恐喝窃盗で。
砂浜に、積み上げられて、
朽ち果てた、文明の利器。
雨に打たれて毒垂らす。
糧を求め、少女は歩く。
ある日突然、爆弾が。
五体は砕け、血糊舞い、
骨も残らず飛び散った。
嗚呼、わが腕、なんと無力な。
それでもと、この両腕で、
悲しみ抱いて、生きねばならぬ。
『冬』
冬は木枯らし。外套で、
油断していて忘れてた、
襟巻きなき首、北風に、
すぼんでは、不平となえる。
寒風に、虫食い落ち葉、
舞いあがり、ペアになっては、
タンゴを踊る、軽やかさ。
冷えた心に、木漏れ日が。
吐く息の、白さ楽しく、
笛吹くような、口をして、
呉爾羅のように、霜を吹く。
これこそ冬の風物詩。
すれ違う人、童顔で、
笑くぼ見せつつ知らんぷり。