表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪逆非道な暴虐王子が追放されて、心優しい王子が即位した結果 ~これなら俺のがマシじゃねぇ?~  作者: 前森コウセイ
第5話 新たな賢者の覚悟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/194

第5話 16

「……死ね……」


 短く宣告し、ボクはウェザーの脳天目掛けて、容赦なく晶閃銃(ザ・プリズム)銃爪(トリガー)を引き絞った。


『ぎゃああああああ――――ッ!!』


 石室にヤツの悲鳴がこだまする。


 地面に転がりビクビクと不気味にのた打ち回るウェザーの姿がドロリと溶けて、本性――抽出(生み出)された時に定義付けられた愛玩形態(プリティ・フォーム)に還元された。


 手足が短く、まん丸い――ボクの愛玩躯体(プリティ・ボディ)に良く似た、ぬいぐるみのような鹿だ。


『いてて……あ~、ひどい目に遭った……』


「――キミがマジメにしないからだろ?」


 頭をさすりながら立ち上がるウェザーに、ボクは肩を竦めてため息。


『でも、いきなり晶閃銃(ザ・プリズム)はひでえっスよ……』


 晶閃銃(ザ・プリズム)には虹閃銃(ザ・レインボウ)のように、幽属(ガイストロイド)を完全に滅するまでの力はない。


 物理界面(マテリアル・レイヤー)に顕現している彼らの化身(アヴァター)干渉起点(ノード)として、痛みを感じさせる程度なんだ。


 けれど、その()()こそ彼らの弱点だった。


 幽属(ガイストロイド)――当時は悪魔と呼ばれていたけど――との邂逅から、和解と融和に至るまでの間に起きた<界面戦争(レイヤー・ウォー)>……


 それまでの戦争概念が一変した彼の戦いにおいて、人類が幽属(ガイストロイド)に勝利できた要因こそ、彼らに()()を認識させたからなんだ。


 霊脈に生き、物理的な肉体を持たない彼らは、当然、生物が感じる感覚や人類の感情といったモノを理解できなかった。


 というか人類と出会ったばかりの彼らは、自我や理性というものも希薄で、ただ本能のままに食事――人類が発する魂の輝き(魔動)を求めて、際限なく人々を襲いまくってたんだよね。


 そんな彼らに知性と理性を与え、人類を理解させたのが三賢者のひとり――ヨギリ博士だ。


 それまで自他の区別すら曖昧だった幽属(ガイストロイド)は、ヨギリ博士の働きかけによって明確に自我を獲得し、『個』を認識するようになった。


 この自らを犠牲にしたヨギリ博士の計画を引き継ぎ、主達七賢者は彼らに『痛みと喪失』を理解させる為、彼らに干渉できる武装――<虹閃銃(ザ・レインボウ)>を開発したんだ。


 魂そのものを消し去る虹閃銃(ザ・レインボウ)は、明確な個を備えた幽属(ガイストロイド)達をも滅却する。


 『個』を認識したからこそ、彼らは『他を失う』という『痛み』もまた知る事になったんだ。


 そして、次いで量産されて戦線に投入された対霊脈知性体兵装――<晶閃銃(ザ・プリズム)>は、彼らに『痛み』という感覚を伝える事に特化した兵器だ。


 他者の痛みを知った彼らは、自身の痛みをも理解する事になり――結果、彼らは人類を襲う事をやめたんだ。


 それからは人類の一員として迎え入れられたんだけど、種属の特性として非常に痛みに対して敏感で臆病になってしまった。


 お伽噺や都市伝説(フォークロア)妖精(リ・ト)が怪我人を救ったりするのは、他者の痛みにもまた敏感で、放っておけないからなんだ。


 それでいてあまり人前に現れないのは、臆病だからだね。


 ……まあ、それはあくまで()()()()()の話で、目の前にいるウェザー達には当てはまらないんだけどさ。


「――ボクだからコレで済んでるんだぜ?

 これが主だったらキミ、()()()()の上で人格洗浄だ」


 そもそもコイツ、十年前にミハイルに()()()()されたようなのに、まるで性根が変わってない。


『さ、さすがにそこまでされちゃ、オレっちも自己同一性を保てないと思うんで、勘弁して欲しいっす』


 短い両手を振ってブルブル頭を横に振るウェザー。


「いやぁ、試してみないとわかんないじゃん?

 なんせアルメニア共和国の魔道科学者が総力を挙げて洗脳しようとしても、キミら自我を保ってたワケだし」


 第二文明時代、この星の大半を占めていた純血種――当時は長命種って呼ばれてたけど――の国家の名前を挙げて、ボクはウェザーに皮肉ってやる。


『――ちょっ!? クロの姐さん、ヤなこと思い出させないでくださいよ。

 そもそもあんときゃ、オレっち達も無理矢理叩き起こされて、ホント、意味がわからなかったんスから!』


「だからって、そんな風にペラペラと軽口叩いて自分らの事を教えちゃうから、ああなったんだろ?」


『……だって……

 ――自由に物理界面(マテリアル・レイヤー)を動ける姐さんには、オレっちらの悩みなんてわかんねぇっスよ』


 と、ボクの言葉に、ウェザーは目を細め、少しだけ恨みがましい感情を覗かせた。


「……なんだい、いっちょ前に悩みだなんて。

 文句があるなら聞こうじゃないか」


 そう告げると。


『……ほら、オレっち達<天体制御樹プラネット・ドミネイター>は、第一文明の時の愚を繰り返さない為、崩壊直後に主に改造されて自発的な霊脈ユニバーサル・スフィアへの接続機能を封印されてるじゃないっスか……』


「うん。両軍がキミらの外部制御権を掌握しあって、この星自体が崩壊の危機まで行ったからね」


 あの時の戦い――第一文明の崩壊は、第二文明前期には伝説として残っていて、<巨神大戦(ギガント・ウォー)>って呼ばれてたんだよね……


『あの時はオレっち達も物理界面(マテリアル・レイヤー)の躯体を勝手に動かされてイラついてたんで、主の命に従ったっス。

 その後もすぐに惑星再開発って仕事を与えられて充実してたんで、気にも留めやせんでした』


 地表のほとんどが干上がり、焼け野原となったあの時代、主は生存者の生活圏を取り戻す事に必死だった。


 ウェザー達もまた主の想いに応えようと、必死で働いてくれてたのをボクも覚えてる。


「……縮小した霊脈ユニバーサル・スフィアの所為で、魔動補充(食事)も満足にできなかったのに、キミらは頑張ってたね」


 そうしてある日限界が来て、各々の活動地で長い休眠に入ったんだ。


『……姐さん、想像できるっスか?

 誰とも交信できず、どこまでも続く荒野のド真ん中で、ただひたすらに……本当にこの仕事が主の役に立ってるのかすらわからないままに、働き続ける辛さ――痛み……』


「……キミ……いや、キミら全員がそうだったのか?」


 彼ら<天体制御樹プラネット・ドミネイター>の主核となっている幽属(ガイストロイド)は、主が大霊脈(グローバル・スフィア)から直接抽出して人格設計(デザイン)した特別種だ。


 かつて主達が生み出した双子女神<万能機(オーバードール)>……


 そこから派生した技術である惑星開発機構テラフォーミング・マシーンの実証試験器こそが<天体制御樹プラネット・ドミネイター>だ。


 運用目的は違うけれど、万能機(オーバードール)から派生したという点では、彼らはボクの弟妹って事になる。


 主が言うには<万能機(オーバードール)>に搭載されていた量子転換炉クォンタムコンバーターや自己進化・改造機能は排除されているから、あくまで開拓は躯体に搭載された魔道器と、主核に合一した彼ら自身の魔法によって行う事になる。


 だから投入される惑星によっては単独で数万年を開拓に要すると考えられていて、それ考慮して彼ら彼女らは強固な自我を主によって与えられていたんだけど……


「……『孤独』、を……『寂しい』を……理解してたのか……」


 ボクは自分の声とは思えない、ひどく掠れた声で呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ