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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【GL】第2ボタン

作者: 星見守灯也

 卒業式、好きな人の制服の第二ボタンをもらう。

 そんな風習を聞いたのは祖母からだったか。

 学ランからブレザーに変わったのもずっと前、まさか今でも残っているとは。



 そう、ぼんやりと思った。

「あのう、ダメ、ですか?」

 私の目の前にいるのは同学年の女の子だった。

 クラスが違うから遠目から見たことがあるくらいの。

「いや、私、女だし……」

「いいんです。あなたの第二ボタンが欲しいんです」

 そういうものなんだろうか。

 たしかに私も憧れた。

 でも、この地方では桜には早く、冷たい風の中の卒業式。風情がない。

「……まあ、いいけど」

「ありがとうございます!」

「あー……まって、でも」

 彼女は不安そうな顔になって私を見る。

「それなら、交換ってことにしない? 私も、欲しいし」



 貰っちゃった。憧れの第二ボタン。

 私は部屋に飛び込むなり、ポケットから真鍮のボタンを出してみた。

 三年間。

 三年間、このボタンはあの子と共にあった。

 それがなんで今、私の手にあるんだろう。

「名前、聞かなかったなあ。……あ、この子だ」

 貰ったばかりの卒業アルバムを持ってきて探すと、同じ顔があった。

 二つ隣のクラスの子。写真より少し髪が伸びているだろうか。

「どこの高校行くんだろ……」



 高校の入学式、私は髪をシュシュでまとめていくことにした。

 市販のシュシュに糸であのボタンを縫いつけてみたのだ。

 裁縫なんて小学校以来で、あちこち糸がもつれてしまっている。

 でも、ボタンがついたことが嬉しかった。

「あれ?」

 クラス発表の紙には、彼女の名前もあった。

 教室に行くと、そこにはすでに彼女が着座している。

 その頭に、かわいいリボンが付いていた。

 派手ではないが、おしゃれだ。そこに金に光るボタンが下がっていた。

 え、あれって……。

「お、おはよう……」

 彼女は私を見て、控えめに挨拶をした。

「おはよう。同じ高校だったんだね」

「は、はい」

「えっと、そのリボン……」

「あ、その、自分で作ったんですけど、これは……」

 そっか。

「すごいね、とってもかわいい」

 そう言うと、彼女は顔を赤くした。私はシュシュを外して見せた。

「私もね、これ、つけたんだけど……」

「え?」

「よければ、私にお裁縫おしえてくれる?」

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