表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

翔之章 Chapter:2


   Chapter:2


「大鳥ぃ! お前こないだ、カイ先生と一緒だったって?!」

「しかも、他にもすげぇ可愛い子がふたりもいたって?!」


(やっちまった…………)


 休み明け、朝のホームルーム前、翔は机に頬杖を突き、盛大な溜め息を吐いた。

 どうやら、そこそこ大きな噂になっているらしい。凰鵡と朱璃も一緒に見られていたおかげで、先生との交際を疑われてはいないのが不幸中の幸いだ。


 ──あの夜、逃げた先のカフェで…………


「先生が妖種?」


 告げられた事実に、翔は驚くと同時に納得した。


 思えば、凰鵡もいつか「学校には、ほかにも妖種がいる」と言っていた。


「それでカイさん……何があったんです?」


 凰鵡が訊いた。


「よく、分からないの。いきなり〝正体を学校にバラされたくなかったら〟って脅されて、あそこに……」


 翔は奥歯を噛みしめた。やはりボコり倒しておくべきだったか。


「連中、どう見てもそのへんの不良だったわ。どうやって杜谷原さんのことを知ったのかしら?」


「逃げたの失敗だったな。クチ割らせりゃよかった。すまん」


「んーん、翔が正しかったと思う。よく分からないのがもうひとり、いたから」


「マジ? どこに?」


 翔も朱璃も、そして杜谷原も驚いて凰鵡を見た。


「奥の壁際。金髪で、朱璃さんくらいの背の高さの女の人。翔、回り込んだとき、けっこう近づいてたよ」


 かなり目立つ容姿だ。

 ふと、去り際に感じた悪寒を思い出す。

 あれが、そいつの気配だったのだろうか。


「その女が連中に先生のことを教えて、襲わせたのか?」


「もしかして、天風……?」


 震える声で朱璃が呟く。


「違うと思う」


 凰鵡が否定した。


「アイツの気配はもっと……ザワザワする」


 翔も同意した。


(それに……)


 口にはしなかったが、鳴夜ならもっともっと、狡猾にやると思った。


「その女の人のことは知らないけれど……」


 杜谷原が言った。


「もし、対妖機関の人だとしたら、私が狙われたのにも心当たりがあるわ」



「今日はまず、転入生を紹介します」


 先日のことを思い出している間に、ホームルームが始まっていた。

 纏わりついていた同級生らも、釘を打たれる糠のような翔に愛想を尽かして去っていた。


(転入生?)


 年の瀬も受験シーズンも迫ったこの時期に転校とは、よほどの事情らしい(本人が進学希望とは限らないが)。

 だが、ボンヤリしていた翔の精神は、次の瞬間、ビンっと張り詰めた。

 渦中の人物が教室に入ってきたのだ。

 教室内がどよめいた。

 切れ長の睫毛。冬服の上からでも分かる、スラリと伸びた手足。肩で風切るような歩みと、それに合わせて揺れる巻き毛のブロンド。


斎堂さいどう純亜すみあです。よろしく」


 西洋の公女と思いきや、日本人らしい。典雅さと意外性に、クラスじゅうが興味津々だ。

 翔も同じだった。だがその興味は、他のような好意的なものではない。

 金髪で、朱璃と同じくらいの背の女──


「……ッ!?」


 純亜の眼が一瞬、翔を見た。

 鮮やかな碧眼の奥から、殺気が、翔の意識を射抜いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ