第6話 山奥で
初めての作品なので至らぬ点があると思いますがご了承ください。
この物語は前日談です。
本編は漫画でかこうと思ってます。
コメント、評価、拡散の方是非お待ちしています!
Xとインスタのフォローよろしく!
第6話 山奥で
「さぁさぁ、やって参りました悪霊退治〜!」
学長の溌剌とした声が木霊する。
「…めちゃくちゃ山の中なんですけど…」
僕らは今山の鬱蒼とした森林の中に佇んでいた。
午前中にあった学長との魔術訓練が終わり、午後に実践訓練としてこの山に来ていた。
「仕方ないだろー、今回の仕事がこの辺りであった失踪事件の解明なんだから。…というわけであっくん一人じゃ心細いだろうから助っ人を一人連れてきました!ちなみにあっくんこの子の名前わかる?」
学長はそう言って隣に立つ彼女を指差す。
「午前中に自己紹介したと思うんだけどなー、忘れちゃったかな?」
学長はそうニヤニヤしながら煽ってくる。
うるさい。
隣に立つ彼女は目と右の前髪が黄緑色をしている。
背丈はそこまで大きいという印象はなく、女子としては平均的な身長だろうと感じられる。
一般的なセーラー服とは白黒が反転した色をしていて、赤いネクタイをつけている。
「まー、忘れてても仕方ないと思いますよ…ちょっとは覚えててほしいけどなー…」
その彼女はそう言った。
「うーん…確か…」
「お、覚えてるか!?」
「…まだわかんないですよ学長、うちにはトラップがあるんで。」
「あー…確かに…そいえばそうだったな。」
二人はこそこそとそう話す。
「…らなさん?」
「…ほらね、やっぱり」
「うっわまじか、おしー…!ラ行なのはあってるのに!!」
二人でぼそっとそう言い合ったあと改めて彼女がそう言い直す。
「ブッブー、間違いでーす。しかも らな は私のお母さんなのよね。」
「え、あ…ごめんなさい…。」
「いいっていいって。じゃ、これでちゃんと覚えてね〜、次覚えてなかったら…ま、覚悟しといて。」
「は、はい…」
彼女はそう言い、不敵に笑う。
「私の名前は花崎礼奈。術は風雷。双子の姉に利奈がいるから間違えないでね!黄緑色のほうが礼奈、ピンク色のほうが利奈だからね!覚えた?」
「あ、はい!ピンク色のほうが礼奈さんで黄緑色のほうが利奈さんですよね!」
「ぶっっハハハハハハ!!!」
そういうと学長が吹き出した。
礼奈のほうもクスクスと笑う。
「な、なんですか…?」
「いや、あのさ。まずそんなにかしこまんなくていいから。私達ためだからタメ口でいいから。それから間違えてるし…。」
「え、また…?」
「まぁ、しゃあないってあっくん。花崎家の名前ってややこしいからね〜。ね、らなさん。」
学長はニヤニヤしながらそう言う。
「だから、らなじゃなくて礼奈だってば!ふざけないでよ学長!」
「ははは、ごめんごめん。」
「…で、澤…ねぇ、圧彦って呼んでもいい?」
「あ、どぞ。」
「圧彦の術はわかったの、学長?」
そう言い、礼奈は学長の方を見る。
「あぁ、それなら…ほらあっくん。」
そう言って学長はこちらを見てくる。
「えっと…僕の術は”圧力”で、空気圧とか操る?らしいです。…ですよね、学長?」
そう言い、僕は学長の方を見た。
「…お前ら私を頼り過ぎな。すーぐみんな私のこと頼るんだからぁ。ま、私だし仕方ないか。」
そう言い、学長はドヤ顔をしている。
「まぁ、そうですね…。これで言い返せないのが嫌だなぁ…これの返しできる人なんていないっしょ。」
礼奈は呆れたようにそう言った。
「そうなの?えっと…礼奈さん?」
「呼び捨てでいいよ。」
「礼奈?」
「うん。…え?てか知らないの、学長の凄さ?」
「ん?」
「ん?…これ知らないな…学長?」
そう言うと礼奈は学長を睨む。
「うーん…口頭では伝えたんだけどな…まぁ、実力示してないし。ま、そのうち分かるっしょ的な。」
「かる。」
礼奈は呆れたように言った。
「まぁまぁまぁ、いいよ。どうせ嫌と言うほどわかるんだから。近い内に。」
そう言った学長は自身ありげに言ったわけでもなく、なにか呆れたようにただ淡々とそう言った。
「ささ、そのことは置いといて。失踪事件の詳細を説明しようじゃないか。…ここ最近この山では失踪事件が多発していてな。捜索隊にも探してもらってはるんだがこの間捜索隊までも失踪してしまってな。”シカク”によるとな…」
「シカク?」
「…学長?」
僕がそう疑問に思って言うと礼奈はまた呆れたように学長を睨んでそう言う。
「…そうだった。”シカク”とはな、我々魔術師に情報を提供してくれる人たちの総称だ。世の中には術はないけどそう言うのは見える人々が一部いるんだよ。」
「へぇ〜。」
「そういう人達に情報を提供してもらって、魔術師連盟ってのがあるんだけど…」
「それも説明してないのかー…。」
礼奈はそういい、また学長を睨む。
だが学長は慣れた事のように無視して話を続ける。
「その連盟から報酬を貰う人たちのことだ。連盟のことは…のちのち説明するよ…。」
「これ説明しないやつだ…。」
「たしかに…」
「説明するから!後々…。ま、それはいいんだ。置いといて…。”シカク”によるとな、この近くに魔物らしきものを見かけたというのだ。」
「魔物…。」
「魔物!?」
「巨大な蛾らしきものを見たという証言もあったな。」
「蛾!?また虫!?学長、私虫無理って言ったじゃん!!これチェンジとかないの!?」
蛾という単語を聞いた途端、怖気づいたように涙目になり礼奈がそう学長に訴えかけた。
「あるわけないだろー、そんなチェンジ機能とか。戦えよ。今回は人的被害出てるからな、報酬結構弾むだろうなー…。南ー!ちな今回の報酬金どのぐらいになる?」
そう学長が近くに止めてあった車から女性が一人降りてくる。
彼女は南さんと言って学長のサポーターの方らしい。サポーターは主に車の運転だったり報酬金の管理、連盟への報告などを担っているらしい。要するに専属の事務担当の人だと言っていた。
僕をここまで運んできてくれたのも彼女だった。礼奈と学長は瞬間移動かワープかで来てたけど。
「えっとですね…今回の件は人的被害も出ているので…」
そういいながら手元の端末を操作している。
「えー…私の予想ですが…報酬金は1人3万ほどになるかと…。」
「3万!?」
その値段を聞いて驚いていたのは圧彦だけだった。
「ま、まぁ、ブロンズ想定プラス被害額引いて考えているので…学長同伴の元なのでもう少し額は上がるかもしれませんが…。」
「…あのー、私そんな金ぐらいで釣られる女じゃないんですけど。てか虫まじ無理。学長がやればいいじゃん。これ前も言ったよね!」
「まぁまぁまぁ。そう硬いこと言うなって礼奈。あとこれ強制だから。拒否権とかないから。」
学長は笑みを浮かべながらもそう強く言っていた。
「えーーーーー、やだーーーー!!ほんっっっっとに無理!!!」
「はいはい、百聞は一見にしかず。実際に目撃情報があった付近にいってみようや。じゃ、レッツゴー。」
そう言って学長は礼奈の背中を押しながら森の奥へ進んでいく。
「おい、あっくんも行くぞー。」
「あ、はい。」
そう声がかかるので僕は学長のあとを追いかけていく。
「お気をつけてー。」
そう背中から南さんが声をかけてくれる。
「ま、私がいる限り危険なんて起きないけどな。」
「?」
そう言った学長は少し笑っていた気がした。