第2話 廻るつながり
初めての作品なので至らぬ点があると思いますがご了承ください。
この物語は前日談です。
本編は漫画でかこうと思ってます。
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「学校…?」
「そう、学校だ。」
彼女は、不適に笑みを浮かべてそう言う。
「今日からここが、君の学校だ。」
「え…学校って…」
「まあまあまあ。詳しい話は中で、な」
「は、はぁ…」
第2話 廻るつながり
「さてと…何から話せばいいやら…。」
圧彦は彼女に、校長室らしき部屋に連れてこられたのであった。
「君もかけたまえ。」
彼女は深々と、いかにもお偉いさんが座ってそうなふかふかとしたイスに座る。
面と向かって座れるようにイスが用意されている。
僕はそのイスの前に行く。
「あ、ありがとうございます。」
その校長室らしい、ふかふかのイスに座った。
(…新品みたに綺麗なイスだな)
「さてと…まずは自己紹介からかな…。閻滝 九愚未だ。ここの学長をしている。学長でいいぞ。いや、そう呼んでくれ。」
「は、はぁ…じゃあ学長。」
「なんだね。」
「その…これって、どういうことなんですか?」
「何が?」
「僕はあの時、学校にいました。」
あの記憶が蘇る。
今でも手に取るように思い出せる。
「なのに何で、僕はここにいるんですか?」
一瞬だった。
扉を開けた時そこにはなにも、なかったのだ。
僕の手にあったのは
「あの時、なにが…!」
酷く冷めた愛と浅い罪悪感だった。
「まあまあ、落ち着くんだ。焦ってもいい事ないぞ。」
学長は冷静に圧彦を落ち着かせる。
「…はい、すみません。」
「…ま、いいだろう。その冷静さがあるだけ良いことだな。」
そう言って、一呼吸間を開けてからそう続ける。
「…よし、順を追って説明しようか。」
「…お願いします。」
「まぁまずは、学校で起きたことからだな。…何が起きたか覚えてるか?」
「えーっ…と。学校に行って、扉を開けて気がついたらあぁなってて…。でもなんであんな事が…」
そう、気がついたらだった。
気がついたら、無かったのだ。
「本当に覚えていないのか、自分が何をしたのか?」
「…はい。」
覚えていないというより、自覚がないのだ。
「やはり…か。まーあの状況から見ると、魔力が暴走している感じだったからな。」
「…ま、りょく?」
そう言うと、学長は少し困った顔をする。
「…本当になにも知らないようだな…。」
「…そう言われましても…」
そう言うと、学長は開き直ったようにそう言った。
「ま、いいだろう。君の家系は色々と大変だろうからな…」
憐れむような目でこちらを見てくる。
「…家系……もしかして、星乃宮家のことですか…?」
そう言うと、学長は気難しそうな表情を見せる。
「…あぁ、そうだな。…君は大変だな。」
「あー…いえ、別にそんなことは…。小さい頃だったのであまり覚えていなくて。」
星乃宮家。
俺の本家らしいが、詳しくは分からない。
凄いところらしいという事は覚えている。
「そうか。ま、いいだろう。」
気遣ってくれたのか、学長はあまり深くは詮索してこなかった。
「で、話を戻すが…さっきも言ったが君があの扉を開けた時、君の魔力が暴走してあぁなったんだ。何故暴走したのかは分からないが…一つだけ、私なりに考えた仮説がある。」
「…はい。」
「君は、自分で魔力を制限していたんじゃないかと思ってな。」
確信をつくように、そう学長は告げる。
「…どういうことですか?」
「…まぁ、いいや。これはまた今度話すとしよう。今はそれよりも大事なことがあるからな。」
すると、思い出したようにそう言う。
「あぁ、そうだ。その大事なことの前に前提の話をしていなかったな。まずはその話をしようか。」
そう言うと学長は僕を真剣な眼差しで見ながら、そう告げた。
「…この世界にはな、'魔法'というものがある。それは知っているかい?」
学長はさも当たり前のようにその単語を告げる。
「え、なんて…?」
「知らないか。じゃあ一からだな。…さっきも言ったように、この世界には魔法がある。信じられないとは思うが、本当にあるんだ。」
そう言うと、笑みを浮かべながらそう問いかけてくる。
「思い出してみろ、圧彦。君も何度かそういう不思議な体験はしてきたんじゃないか?」
「…あっ。」
そう言われ、思い返してみるとある事を思い出す。
「ほらな。」
そう声を出すと、学長はそう言って笑い出す。
「…まー、その不思議な体験をも引き起こす魔法なんだがな。それは誰しもが必ず持って産まれるとは限らない。この力は選ばれた人しか持つことが出来ない特別な力だ。そしてその事は公には発表していない。お前が知らなかったようにな。今までそう言う話は聞いてこなかったろ。」
思い返してみれば、テレビなどでそんな話を聞いたことはほとんどなかった。
あるとしたらネット掲示板でオカルト系の話をしているところでしか見たことがない。
「…確かに。」
「なんで発表してないのかというとな、発表すると混乱を招いてしまうってのはあってるっちゃあってるんだが…。今から約1000年前の平安時代中期。魔法が使えるものと使えないものの間で戦争があったらしい。」
「戦争!?」
「その戦争の発端が魔法があるかないかの差で差別があったからだと言う。そういう事で差別する一部の人間がいたからこうして規制されてるんだ。めんどくさいねぇ〜。」
学長はそう呆れたように言う。
「一般人に向けた配慮とか規制とかで対策やらするのがまーめんどくさいのよ。そういう規制がなかったらもっと楽に仕事ができるんだけどなぁ…。」
「…そう言われましても…。」
「…で、そんな魔法は何があるんだって話だが。…ま、これは実際に見てみたほうが早いか。というわけで。」
「…え?」
そう言うと学長は立ち上がり、指をパチンと鳴らす。
「ここは…!?」
気がつくと、見知らぬ森の開けた場所で学長の横に立っていた。
「まぁ見てなって。今から魔法とは何なのか、見せてやるよ。」
そう言った学長の先から、人の様な見知らぬ何かがこちらに向かって迫ってくる。
「えっ…何!?」
その者はけたたましい音とともに雷を発しながら迫る。
「フッ。」
学長はそれを見て笑うと、拳をやつに向かって振るう。
ドオオォォォォオンン!!!
凄まじい音を立て、学長は拳一つでやつの動きを止める。
その圧で圧彦は体を後ろへ押される。
「すごい…!!!なんだこれ!!」
「…もう昔の私じゃないよ。」
そう学長がボソッと聞こえないぐらいの声量で言うと、その者を吹き飛ばす。
「これが魔法だ、圧彦!炎柱。」
そう言い学長は手を地面にかざすと、文字通り炎の柱がやつを包み込む。
「す、すげえ…」
その圧巻の光景に圧彦は言葉を奪われる。
しばらくすると、学長が地面から手を放す。
あそこまでしていると燃え尽きたのではと思われたが、そこから原型をとどめ肌が焼かれ灰になったやつが姿を現す。
すると学長がそいつに向かって飛び上がり、やつを地面に叩きつけようと蹴り落とす。
そして、足の先に雷が集めながらそう学長は言う。
「雷霆!」
ドカァァァン!!
そう音を立てて、やつを地面に叩きつける。
「うわっ!!」
その衝撃からか、砂埃があたり一面に舞う。
一時してその砂埃が晴れ学長が姿を現すと、背後にはやつの姿はなく灰が舞っていた。
「ま、こんなもんだな。」
そう学長が言うと、気がつけば先程学長と話していた部屋に戻っていた。
「あれ…いつの間に…?」
「さっき見てもらった通り、あれが魔法だ。ちょっとでも魔法についてイメージができてきたか?」
「えっ、あぁ…はい。」
「ま、そんなに深いこと考える必要はないよ。気楽に考えて、あれが魔法なんだ〜ぐらいに捉えておけば良いよ。」
そう学長は、当然のことのように話す。
「大丈夫?ここまでついて来てる?」
「あ、はい…。本当にあるんだなぁ…と思って。」
「まぁ、そうだよな。最初はそうなるよな。…ま、色々なことを覚えていくのは後々でいいよ。」
そう言って学長は、なだめるようににこやかに微笑む。
「あ、ありがとうございます…。」
「まーでも、とりあえず基本的に必要になってくることは覚えてもらわなきゃいけないからもう少しだけ話を聞いてくれ。ここまでは話とかないといけないやつだからな。」
「あ、はい…。」
「で、さっき見せた魔法だが、あれの他にはどんな魔法があるかって言うと…まぁだいたい想像する通り、基本的な火、水などのいわゆる四元素と言われる魔法から概念系の魔法…私の術のような感じのものまで、様々存在する。…人によって多種多様、様々な種類の魔法が存在するってことよ。」
「…なるほど。」
「で、だ。その”魔法”を使い、人に危害を加える悪しき者たちから人々を守り、助け、そして脅威を排除する。その人たちのことを”魔術師”と言う。…そう、私達は魔術師だ。」
「魔術師…。」
圧彦には、その言葉が妙に引っかかった。
(どこかで聞いたことがある…ような気がする…。)
そう思っていると、学長がこちらの様子に気付いたのかこう尋ねる。
「どうかしたか?」
「え…あ、いえ。なんでもないです。」
「…そうか。…まー、気になることがあるんなら遠慮なく言う事だな。…この世界では、その小さな気がかりが重大なことにつながっていくからな。」
「…はい。」
「…ま、今はいいか。話を続けるぞ。 さっき言ったその我々”魔術師”が倒さなければいけない相手のことも話しておこう。」
「倒さなければいけない…?」
「あぁ。倒さなければいけない、だ。…とその前に。」
そう言うと、学長は何もないところからタブレット端末を手元に出してそれを操作する。
「えっ、どこから…?」
「あぁ、そうだよな。初めてだもんな。これも魔法だよ。まー、私に不可能はないと言っても過言ではないからな。私の前ではあまりそういう細かいこと気にしないほうがいいぞ。」
(そういうことって自分から言うもんなのかな…。)
「ちょっとここから説明がややこしくなるから、これを使いながら説明していくぞ。そのほうが視覚的に伝わって理解がしやすくなるからな。」
そう言って、学長はそのタブレット端末を机の上に置きそれを使いながら説明を続ける。
「でだな、その倒さなければいけない相手なんだが…そいつらは人々を襲ったり、災いになったり、最悪の場合…死に至ることもある。とは言ったが最近は死亡する事件が多くなってきていてな。それだけ近年では敵が強力になっているってことだ。そういう敵を倒し、人々の平和を守るのが我々魔術師の仕事だ。」
そう説明している間、タブレット端末に映し出されたアニメーションが動きグラフやらが表示されながら話が進んでいく。
「なるほど…。」
「今ではそれを倒すことを任務として実施し、魔術師達を総括する機関を魔術師連盟って言うが…まぁその話しは追々でいいだろう。」
そう言って、学長は明らかにその魔術師連盟の説明がなされていたページをどんどん飛ばしていく。
「…そうですか。」
「…ま、その話は置いといて。これはまぁ余談だが、一応知ってたほうがいい話ってわけでやっていくぞ。知らないと恥になってしまうからな。恥になる前に教えとかないと。」
そう言うと、ページを選択し御三家と題が書かれた資料を開く。
「そんな魔術師だがその中でも君の家系…先程いった、星乃宮家だな。その星ノ宮家は日本の魔術師界の中では御三家と言われている。
御三家とはな、間永家、星乃宮家、花崎家から成る魔術師界の要となる家系だ。なぜ御三家と言われてるのかと言うと御三家は物凄く膨大な魔力量と、星の子の存在だ。
魔力量が多い事は別に説明せんでもいいだろ。魔法に特化しているから御三家と呼ばれている訳だし。
問題は星の子だよな。説明すんのが面倒臭いから簡単に説明すっと、間永家は時間に関係する魔法、星ノ宮家は造形系か炎系、花崎家は風か雷か白魔法系の魔法を持って産まれてくるんだが…。白魔法ってのは回復魔法とか補助系の魔法な。数十年に1度、御三家のどこかの中から‘星’の魔法を持って産まれてくることがある。それを星の子と言うが…まー、その星の子と呼ばれるやつは強くてな。私がいなければ最強と言われてもおかしくない強さをしてるからな。」
彼女は自信満々にそう言った。
「…学長って強いんですか?」
そう言うと、待ってましたと言わんばかりにこちらを見つめながら少し悲しげな目をしながら笑みを浮かべてそう言う。
「…まぁな。」
その顔は頭の中を少しモヤモヤとさせる様な後味の悪さを残した。
「とりあえず、御三家は強いってことだけ覚えればいいさ。
それでだ。君は星ノ宮家の人間だ。先程言っただろう、御三家は膨大な魔力量を持っていると言ったよな。ということはつまり、君もその魔力量があると言うわけだ。
現在、魔術師界では人手不足問題が深刻になってきている。我々としては1人でも多くの人が魔術師となって一緒に戦ってくれるとありがたい。君もそのひとりだ。どうだい、君も魔術師にならないかい、澤、圧彦君?」
「え、急にそんなこと言われても…それにその…魔法?の使い方とかもよくわからないし…」
いきなりそんなことを言われて圧彦は困惑する。
しかし、学長はそれをよんでいたかのようににやっと笑みを浮かべた。
「大丈夫。ここはそれを学ぶ場だ。」
「…へ?」
考えもつかなかったことをいきなり言われたのであまりにも間抜けな声で応答してしまう。
「ここは福岡市魔術高等学園という。魔術師を育成するためのところだ。私はここの学長をやっている。」
「え?学校!?」
「そうだ。てかさっきからいってたろ、学校だって。」
「それは…そうですけど…」
「それより、どうする圧彦。お前は魔術師になるのか?」
「…それ、は…」
すこしたじろいでいると学長は真剣な眼差しでこちらを見つめる。
睨みつけるように、威圧するように。
「君は…一応犯罪者なんだよ。言ってなかったが君があの扉を開けた時、あそこにいた人たちは死んだよ。あの教室にいた生徒、教師全員。数名、怪我をしたとも聞いたな。ガラスの破片で怪我をしたとかそのへんだろう。
とにかく、あの時君の魔法が暴走して、あの惨事を起こすことになった。別に君を責めている訳では無い。魔力の暴走で事故が起こるのは非魔術師の中ではよくある事だ。
たが悪いけど形式上、君が殺したということになっている。言い方は悪いが、世間からは殺人者として見られてしまう。
こういうことにならないようにしていたのだがすまない、君の事を発見するのが遅れてしまった。
…まぁ、だから二度とこういうことにしない為にも君は魔法の使い方を学ばなければいけないわけだが…さぁ、どうする?君は魔術師になるのかい?」
脅しをかけるように学長はそう問いかける。
…俺は…
「…俺は………」
「…」
「…」
沈黙が流れる。
俺は、…俺は、どうすれば…いや、何がしたいんだ?
俯き問いの答えを出せなさそうな俺を見かねたのか、学長が不意に口を開く。
「色々言われて困惑しているだろう。よし、気分転換に外に行くか。さぁ、立て圧彦。実際に現場を見てみようではないか。ほら、立て立て!」
そう名案が思いついた子供のように意気揚々と立つよう促してくる。
真剣に考えているのに、なんなんだこの人…
「…げ、現場ってなにを言ってるんですか…?」
「現場?それはそりゃぁ、現場さ。君が通っていた高校。」
そう言いながら学長は俺の肩に手を置く。
「…え?うそで」
次の言葉を言う間もなく、気がついたら俺たちはその現場に来ていた。
「どうだい、自分の目で現場を見てみるのは。」
また、この場所に来てしまった。
見慣れた廊下、くすんだ天井、そして。
ぽっかりと空いてしまった大きな穴。
穴と言うより、削り取りたような見た目をしている。
俺は今、数十時間前に自分があけたであろう場所。扉があったであろう場所に立っている。
1歩先は床がなく、下の部屋の天井まで削り取られているため、下の階が丸見えになっている。
天井もなくなっているため上の階の天井が見えている。
パッと見は一見普通の校舎に見えるのだが1箇所、キレイに1クラス分の部屋の大きさ程度のくぼみがあるのである。
外から見ると、いつ崩れてもおかしくないような見た目をしている。
軋む床板。無情にも吹き抜ける風。澄み渡る青い空。
そんなものを見つめながら、澤圧彦はあることを思い出していた。
「…俺は…俺は幼い頃、親友を亡くした。あの時はなにが起きているのか分からなかった。やっとあの時なにが起きていたのか少し理解できた気がする。…あれも、そうだったんだ。」
あの時起きたことは魔法が絶対関係している。
ここにいれば、あの時のことがなにか分かるかもしれない。
もう一度、愛はいるものだって思えるようになるのかもしれない。
「俺は魔術師になる。学長、俺は魔術師になります。あの時なにが起きたかを理解する為に。」
そう言った圧彦の瞳には決意の光が灯っていた。
「あの時がなんの事かは分からんが…まぁいいだろう。」
学長は少し深呼吸をし、俺の隣へ並ぶ。
「本当にそれでいいんだな。魔術師は命の危険に常に晒される仕事だ。君は死んでもいい、そう言えるんだね。」
「学長、ここまで誘っておいて辞めさせに来るのはちょっとズルくないですか…」
「ははっ、確かにそうだな。誘っておいて止めるのは確かにあれだな。」
学長は少し目を瞑り、なにかを考えた後に目を開き こう言った。
「私、閻滝九愚未は澤圧彦の魔術高等学園への入学を許可する。お前は今日から魔術高の生徒だ。改めて、よろしくな澤 圧彦君。」
そう言うと、学長はこちらに手を差し出してくる。
「はい。よろしくお願いします。」
俺もそう言うと手を差し出し、握手をした。
すると、学長はおもむろに手を離し間抜けな声でこう言ってくる。
「ま、こんなことしなくても君の親と上のやつらから許可はとってたから君はうちの生徒だって言って無条件で君をうちに入学させることは出来たんだけどな。」
そんなポツリと漏らしたことに俺は呆れてこういう。
「…じゃあなんでこんなことしたんですか…?」
すると学長はまた間抜けにこういう。
「えーだって、こうした方がなんか面白いじゃん、ね。」
…呆れた。なんだこの人。
ここから少しずつ、俺の運命が変わり始めることはまだ知らない。
俺を取り巻く環境はここから少しずつ変わっていく。
いい方にも、悪い方にも。
そしていつの日か、あの日の真相を知ることになる。
その真相は廻り廻って、今の俺たちへと繋がっていくのであった。