表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

思い出した、前世

「……あ、この人知ってる」

 第一王子のルクト殿下を見たとき、わたくしらしくない、品のない言葉が急に飛び出した。

「え?」

 案の定、ルクト殿下は、令嬢らしからぬわたくしの言葉に、首をかしげた。

「知ってる、だってこのひと、メインヒーローだし」

 メインヒーローってなに?

 自分で言った言葉なのに、何一つ理解できない。

混乱した感情の中、またわたくしの口から不思議な言葉が飛び出た。

「なんだ、ロイゼ――わたくしは、わたしは……悪役聖女じゃない」


 ――悪役聖女。


 その言葉が引き金となって、様々な思い出が頭の中に鮮やかに蘇る。

 お味噌汁、だし巻き卵、スマホ、青信号、そして突進してくるトラック……。

「そうだ、わたしは、ロイゼ・グランヴェール。『聖マリ』の悪役聖女だわー! って、なんでー!!」


 そう叫んで、私はショックのあまり気絶した。


 ◇◇◇


 その後、三日三晩寝込んだわたしは、全てを思い出していた。

 この世界は、乙女ゲーム「聖なる乙女のマリー」にそっくりな世界であり、私は日本と呼ばれる国から転生したこと。


 そして、わたしはおそらく、というか絶対「聖マリ」に出てくる、悪役聖女のロイゼ・グランヴェールということ。


 悪役聖女は、その名の通り、このゲームにおける悪役で、攻略対象者たちの数々のトラウマを作成したうえで、何者かに殺される。

 そう、悪役聖女ロイゼが死んだ後の世界で、本編となる物語が始まるのだ。


 悪役聖女のロイゼは、元々侯爵令嬢で高い身分も持っていたけれど、主人公のマリーは、平民であり、ロイゼの死後に聖なる力に覚醒し、ロイゼのせいで心に闇を持った、攻略対象者たちを救っていく……というのが本編のおおまかなあらすじだ。


 ロイゼが死したあともはれないトラウマってよっぽどよね。


 でも、私がこのゲームをクリアしたのは、数年前だからその内容はあやふやだ。

 ただひとつ憶えているのは――わたしが死ななければ、世界は滅ぶ、ということだ。


 ロイゼの死、そして主人公のマリーがきっかけとなって、攻略対象者たちが、真なる力に目覚め、魔王を討伐するのだ。つまり、わたしが死ななければ、魔王によってこの世界が滅ぶ。


 そっかぁ、せっかく生まれ変わったのに、わたし、死んでしまうのね……。


 ――でも、死ぬまでは! 楽しく思い出づくりしつつ、悪役聖女として、周囲にトラウマを植え付けることも忘れずに、毎日楽しく生きていこう!


 そう決めた、わたしは、16年間。ロイゼ・グランヴェールとして生き、そして、何者かに頭部を鈍器で殴られ、死んだ。


 そう、わたしは、もう、死んだのだ。

 それなのに。


「ロイゼ、ようやく目を覚ましたんだね」

「ああ、私のロイゼ」

「ロイゼ――かわいいかわいい、ロイゼが目を覚ました!」

「僕のお姫様」



 ――どうして、目を覚ましたら10歳まで時間が巻き戻っていて。義兄や元婚約者の王太子殿下をはじめとする攻略対象者たちがヤンデレているの――!?



お読みくださり、ありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや⭐︎評価をいただけますと大変励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ