日常×非日常
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」
私は今、全速力で走っている。学校に遅刻しそうだから?遠くへ引っ越してしまう友人の乗った電車を追いかけているから?
違う。私の後方50mほどの位置に「何か」がいる。
その「何か」というのは私にもさっぱりわからない。
その「何か」は何故か私を追ってきている。理由も目的もわからない。
ただ、追いつかれたらやばいという事だけはいくらテストが赤点続きの私にさえはっきりとわかる。うん、やばい。
体力も限界を迎えている。心臓が張り裂けそうだ。無理。しぬ。
もういっそ止まってしまった方が楽なのではないか、そんな考えも浮かんできてしまうが私の生存本能がそれを許さない。
なんで私がこんな目に…なんで…なんで私が…そう叫んでしまいたい。
「なんで私がーーーーーーーーっ!!!」
失礼、叫んでしまいました。
─時は遡り、今日の朝7時─
「行ってきまーす!」
今元気に通学路への第一歩を踏み出した私の名前は牧野るる。今をときめく17歳JKだ。決してそれを自称するアラサーとかではなく本当の17歳JK。
…ほんとだからね?
テストでは赤点続きだがありとあらゆる補習や課題を白目を剥きながら頑張った結果、なんとか3年生に進級できた。…受験大丈夫かな。
そんな事を思いながら歩く私の背中からひとつ、可愛らしい声。
「おはよー!もう今年で高校生活最後だね〜!」
まるで小動物のような、小柄で可愛らしい彼女の名前は佐倉楓。桜なのか楓なのかはっきりしてほしい。
「…今失礼な事考えなかった?」
おや、鋭いねマイハニー。そんな君も素敵だよ。と私の心のマイケルが小躍りを始めたところで彼女の口から突拍子もない話が飛び出した。
「ねぇ、『潜む者』の噂…聞いた?」
なんじゃそりゃ。これにはマイケルも苦笑い。私達はもう高校生活も最後だという年齢なのにまだ厨二病を拗らせているのかこのすっとこどっこいは。
「『潜む者』はね、最近この街で流行ってる噂なんだけど…商店街から1本外れた道を夕方に1人で歩くと出るって話なの。」
なに、ちょっと怖いじゃん。
「それってストーカーとかの類じゃなくて?」
「私も最初はそう思ったんだけど…なんだか違うみたいで。そもそも人なのかどうかも怪しいって噂だよ!」
「あーはいはいはいはい!そういうやつね!ないない!絶対いないそんなの!どうせその辺のおっさんの人影を見間違えたとかそんなでしょ?ま、今ってそういう都市伝説流行ってるし?誰かが面白がって作った話でしょ〜!」
「でもほんとに見たって人も多いし、実際にあの辺で行方不明事件も何件か起きたって…」
「ちょっとちょっと!信憑性を増すようなお話はやめなさーい!こらこらこら〜っ!」
「でも何かあったら怖いし…あの辺には近付かない方が良さそうだよね…」
「いや私今日あの辺に用事あるんだけど…いい靴見つけちゃったのさ〜!売れる前に買う!絶対買うもんね!」
「そのメンタルだけは尊敬するよほんと…」
「だーいじょうぶ大丈夫!そんな噂話なんかで諦められないっての!」
「ほんとに大丈夫かなぁ…るるちゃんアホの子だから…」
「アホ関係ないでしょ!…っておい、誰がアホじゃい!」
「だってその通りじゃん…」
─そして今─
「いやいやいや、おるやんけアホーーーーーーーー!」
自分のアホさ加減に呆れながらも、可憐な乙女(笑)は走り続ける。
次回、私がまだ生きていたら続きます。