13
オレは茫然としたまま彼の背中を見送り、立ち尽くしていた。数拍の間を置いてから、正直な感想が口をついて出た。
「……なんだ今のは」
“……なんだろう?”
(お前にも解んねぇのかよ)
“わかんねぇ”
本当に何だったのだろうか、現れたと思ったらすぐに消えた、夢か幻かと本気で疑いかける、しかし手元にあったはずのあの石は既に無く、それが先ほどの出来事は現実だと示していた。
“なぁ、さっき何とダブったんだ?”
ダブる?
そう言えば、別れ際に彼の笑顔が誰かとダブって見えたんだった。誰だろう、そう昔に見た顔ではない、最近であった奴だ。彼の兄とダブった訳じゃない、もうちょっと前に出会った奴だ、そうその直前あたりで。
“警備員さん?”
(違う、似てないから!)
警備員じゃなくて、さらにその前あたりに会った人で、彼に似てる人。
えーっと、えー……っと…………
「あ」
“思い出せたのか?”
(ああ、どこかで見た顔だと思ったんだよ……どこで見たのか、やっと思い出せた)
思い出されるのは、彼と同じ眩しい笑顔。顔の造形はよく思い出せないが、纏う空気と言うか何と言うか、本質的な何かが、彼と本当によく似ていたのだ。
今はもう手元にないあの小石、彼の目とよく似たあの小石を半ば押し付けるように託してきた彼。
(あいつ、シロ君によく似てる)
しばらく間を置いてから、神がぽつりと呟いた。
“似ているから、何なんだ?”
(こっちのセリフだ、なんでシロ君と樒実三男が似てるんだよ?)
“樒実三男ってお前、サラリと酷いな……。他人の空似じゃねぇの?”
(いいや、絶対なんかある。お前なんか隠してんじゃねぇのか!?)
“私の情報網は意外と狭いんだよ、一点から線飛ばす事しか出来ないんだよ!”
(訳わかんねぇから!)
結論は出ないまま言い争いは終わった。実際に声を出していた訳でもないのに、やけに疲労を感じる、気づけば呼吸が荒くなっていた。呼吸を整えていたら、神が指摘をしてきた。
“ところでクーガさん、そろそろ周囲の視線が痛いですよ?”
周囲を見回すと、何人かと目が合った。そういやオレ、神と言い争ってる間ずっと動かないで居たんだよな、道のど真ん中で。
(あ……うん、動くか)
少し恥ずかしくなってきたオレは、早歩きでその場を立ち去った。いち早くその場を立ち去ろうとするオレに、神がさらなる指摘を加えてきた。
“ついでにクーガさん、制服返し忘れてますよ?”
立ちどまり、自分の体を見下ろす。自身の体を包むのは緑色のブレザー、借り物の制服。
「……忘れてたーっ!!」
思わず叫んだオレに対する周囲の視線は、大層痛かった。
今度投稿できるのはいつでしょうか、ははは、忙しすぎる。リア充とは断じて名乗れないのに、何だこの忙しさは。早く冬カムヒア!
と言ってやってきた冬、章機能を使って目次をすっきりさせました。
ふふふ、まだ忙しい。すみません。