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「ちゃんと着いたぞ!」
“三十分かけてね”
神の突っ込みは聞かなかった事にして。高等部の棟に着いた、オレと同じか、数歳ぐらい年下であろう生徒が、校舎の中で楽しげに会話している。どうやら今は放課中らしい、好都合だ。
地図によると、三年生は一階に教室がある、そして次男のいるB組は、オレから見て右から二番目の教室。わざわざ建物内に入らなくても、窓から声をかければ大丈夫そうだ。ちょうど窓際で暇そうにしてる男子がいる、あいつに次男を呼んでもらおう。
「あー、ちょっと悪いんだけど」
声をかけると、そいつは眠そうな顔でこちらを向いた。
「んー、なんだよ。俺は今暇なんだよ、リューがいなくて暇過ぎるんだよ」
「暇なら聞けよ。榴火って奴を呼んでくれないか?」
「リューなら居ないって言っただろ。またどこぞの部活の応援に行ったんだよ、なんで平日に応援に行ってんだか」
「……お前がさっきからリューって呼んでるのは、榴火の事か?」
「そうだけど」
相変わらず眠そうな顔で答えを返す男子A(仮)。リューって……それはあだ名か、そのあだ名はいかがなものかと思うぞ。
そんな事より、問題は別にある。こいつの話によれば、今榴火はどこぞの部活の応援に行っていないらしい。それじゃあこの届け物を預けることができない。
「いつ戻ってくるんだ?」
「ふっ……、どうせ学校にはもう戻ってこないさ、直で家に帰るんだろうさ、俺をおいて」
どうやら戻ってこないらしい。それにしても、こいつさっきから何か変だ。軽く暗雲を背負っている、そんなに榴火がいない事がショックなのか。
この鬱々しい男子を前にし、オレの感が早く離れた方がいいと告げている。危険人物には見慣れているので、こいつがどのくらい危険かどうかは良くわかる。おそらく実力は無いが、今は危険な状態、早急に離れるべきだ。
「あー、そっか。じゃあオレ行くわ」
「そうか、お前もリューを探しに行くんだな。そして勧誘だの応援だのと言ってリューを連れ回すんだな。お前もか、お前も俺のリューを連れていくのかこの野郎おぉぉぉっ!!」
予想通り危険人物であった鬱々しい男子は折れに掴み掛かろうとしてきたが、伊達に剣術を学んできた訳ではない、軽く躱し身を翻す。
「じゃあな、二度と会わないと思うぜ!」
『俺のリュー』宣言をするような色んな意味で危険人物からは早く離れるに限る。呼び止める声を後ろに、オレは走って逃げた。