4
オレがしばらく神と内心会話をしていると、怪訝に思ったのか邪竜が首を傾げていた、そんなデカイ頭傾げんな、ヘンだから。とりあえず神の命令によると、邪竜と話して居ろと言う訳なのだが、何を話せばいいのかがさっぱり解らない。そりゃあラスボスと世間話をしなさい、というのが無理だ、普通はほとんど話さない。
「どうなさった久我はん、えらいお困りのような顔しておりますよ?」
「久我じゃなくてクーガと呼んでくれ」
「はぁ……」
「…………」
しまった。うっかりクセでどうでも言い事の訂正をしてしまった、いやどうでも言い訳ではないけど、どうでもいい訳ではないって事が悲しい。くそ……っ、さっきの話を頑張って引っ張れば、もう少し話を伸ばせたのに……っ!
(ちくしょう、どうしろってんだよ、答えろ神!)
“アイワズボーン、イントゥザアメリカ!”
聞いてねぇ、つーか英語間違ってるし。どうすればいいんだよ、ちくしょう。
“ハイッ質問、ヌシは何のためにここへ来たのでしょう?”
(ちゃんと聞いてんじゃねぇか)
“うるせー、考えやがれ”
こんな軽いノリで、しかもよく解らない口調で話されると、なんだか反抗して何も考えたくなくなる、でも考えなきゃ話が進まない……って神みたいなこと言ってるよ、オレ大丈夫か?
「オレは何のためにここに来たんだ……」
遠い目をしてつぶやく他なかった。遠い目をして空を仰ぎかけた時、視界に困った顔をした邪竜が飛び込んできた、そう言えばさっきから内心会話ばっかりやってたから、邪竜の事を完全に放置していた。
(やべ、怒ったかな?)
そう思った邪竜の顔をうかがったが、どうやらオレの挙動不振の方が気になるらしい、首を傾げてオレを見ている。だから首傾げんな、ヘンな気分になってくるんだよこの光景。オレはお前を倒しに来たんだよ、そんな子供みたいな顔するな、余計に戦意喪失してくる。
「そう言えば、オレはお前を倒しに来たんだった……」
ぼそり、とオレが呟くと邪竜はびっくりした顔をして目を瞬かせた、だから止めろそういう顔、ヘンだから。何か忘れている気がする、そうだ邪竜を倒す理由だ、何でか忘れてる……なんだっけ?
「……ってえ、姫様を助けに来たんだろうが!」
ついつい一人突っ込みをやってしまった、しかも大声で。そんなオレを邪竜がすっごい驚いた顔で見てる、あんぐりと口開いてる。こんな重大事項を忘れていた自分にびっくりだ、そして大声で叫んでしまった事にもびっくり、メチャクチャはずかしー。
「……あ……いや、その、あれだ、忘れてた訳じゃない、忘れてた訳じゃないんだぞ!」
どうしたらいいんだよオレ、恥ずかしくてこれ以上何も言えねぇよ、ツンデレみたいな台詞叫んじまった、絶対ツンデレとは別ものだが。邪竜もなんか困った顔してやがるし。オレがむちゃくちゃ困って頭を抱えていると、そんなオレを気遣ったのか、邪竜の方から口を開いた。
「ひ、姫さんならここにおりますよ?」
「どこだよ?」
「ワイの後ろにおりますえ」
そう言って、邪竜はその歩きにくそうな足で器用に歩き、もと居た立ち位置から少し横にずれた、すると邪竜の背後の風景が見え、そこにある物が見えた。薄桃色の美しいクリスタルだ、五角形のクリスタルが地面につき刺さっている、せめて空中に浮かばせるぐらいの事はしてほしかった、解るかどうかは解らないけど、イメージ的にはファイ〇ルファンタジーではなくゼ〇ダの伝説で。
目を凝らすと、その中に人が入っている事が解った、よく見えないので、常備しているスコープを懐から取り出し、覗いてみた。