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戦闘士クーガ  作者: 狂狗
デリバークーガ
38/49

 「知っているからと言ってこの非常識さは認めねぇ……」

 “クーガさん、話を重ねるたびにスタートでの元気が無くなっていっていませんかね?“

 「話を重ねるたびにタイトルがださくなるのも気のせいじゃないよな?  デリバーって……タイトルがとうとう片仮名だけに、せめてオレの名前を漢字に直してほしい」

 “そっちの方がダサイだろ。元気出せよ、ほらいい景色”

 「その景色が問題だ、勘弁してくれ……適応能力が限界に達しそうだ」

 オレは周りの景観がよく見える丘の上で座り込んでいる、吹き込む風は故郷に比べるとなんと言うか……かなり不味い空気で、少し肌寒い。視界の大半を支配する街らしき場所には、天を突くような高い塔が立ち並び、四角い乗り物が舗装された道路を驚くべき速さで走りぬける。きっと信じられないほどに人間がたくさん居るんだろう。

 「家に帰りたい……」

 “おうちはもうないよ?”

 「嫌な事思い出させるな! ああもう……本当に嫌だ」

 これは小説これは小説、非常識な事はいくらでも起こりえるんですよ。なーんて自分に言い聞かせてみても、オレ自身自分が小説の主人公だなんて実感はあまりないのだから、どうしても異常にしか思えない。オレにしてみればこっちが現実だ。膝を抱えて座り込んでいる姿は、見方によっては鬱病患者にも見えるだろう。実際鬱になりかけてる。

 本当に色々と嫌だ、この非常識さとか、神の存在とか、オレの頭の中で起きてしまった事とかが!

 “さりげなく人の存在否定すんな。ほら落ち着け、はい深呼吸。都心の空気はうまいぞ”

 「東京の空気がうまい訳ないだろう、軽井沢じゃないんだから!」

 “ふははははは、名古屋の方が空気悪いね!”

 「そんな嫌な事で張り合うなよ……それに関してさっきから気になって仕方ないんだがな、何故オレが東京とか軽井沢とかを知っているんだ!? オレはエウロペ 黒の国 帝都ニルヘイム 10番街青池町2丁目4番地で生まれ育った異世界の住人だ!」

 “もう一声”

 「エウロペ 黒の国 帝都ニルヘイム 10番街青池町2丁目4番地!」

 “聞けば聞くほど珍妙な住所だなオイ……”

 そう、オレはこの世界とは別の世界で生まれ育った人間だ。ちなみに神の突っ込みは無視する。東京に来たことも、それどころか地球に来たのも初めてである、オレが生まれた星の名前はエウロペだ。そしてこの星の名前は地球、それなのにもかかわらず、何故オレはあの高い塔の名前がビルだと解るんだろう。道を走る乗り物は車で、あれはホンダであっちはトヨタだとか、ついでに知らない内に着替えさせられていた服が、すべてユニクロだったりする事まで解るのか。

 “500円でこの袋に詰め放題! みたいなセールで売ってた物よりはいいと思え。全身ユニクロは割と贅沢なんだぞ”

 怒っている事を示しているのか、セリフを言った後にプップップー、などと謎の擬音を付け加えた。ウザさを極めようとしているんだろうか?

 「そんなことはもういいから、オレの頭の中に詰まってる、この地球知識は何なのかを説明しろ! 具体的に、どうやって詰めたのか、どこかの引用なのかって所を!」

 “最後まで聞かなきゃダメだぞ★”

 「何かにつけて星つけんな、耳栓しても聞こえてくる声をどう聞かないようにしろと……」

 昔の努力を少し思い出しながら言ったオレのセリフはスルーされて、神は話を続けた。

 “神ちゃんのミラクル講座。クーガに地球知識をどうやって詰めたのかと言う議題について説明いたします、説明がややこしいので説明いたしません”

 「説明するって言っておきながら説明してねぇじゃねぇか」

 “え~、続いてぇは、クーガの頭の中に入っている知識ですが、ある程度の一般常識(オタver.)ですよ”

 「無視かよ、あと余計なカッコを消してくれ」

 “安心しろ、オタ知識を持っていたとしてもその人がオタクだとは限らない。漫画とか読みながらハアハアしてる奴は間違いなくオタだけど、マンガ読みながら物理法則とか生物学とか画像処理能力などについて考えてる奴は、実際オタなのかただの変人なのかどっちだと思う!?”

 「あーうるさいうるさい、いい加減に黙れ。オレはオタクの知り合いがお前しかいないから比較し辛いけどよ、お前みたいな奴って時点で変人だ!」

 つっこむ対象が物体として存在しないため、空中にツッコミを入れた。空気に裏拳が炸裂する、何とも言えない虚しさが身を包んだ。そんな無駄な漫才に気をとられ、オレは背後の気配に気を払う事を忘れていた。


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