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戦闘士クーガ  作者: 狂狗
浮浪者クーガ
36/49

10

 「どうした悩める青少年、泣きそうな顔して!」


 ……吃驚した。

 背後から突然声がした、同時に背中を思いっきり突き飛ばされる。あわてて振り返ると、そこには姉さんが立っていた。ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている。気配を消して背後に近づいた上でいきなり叫ばないでほしい、寿命が縮む。人がものすごくシリアスな気分になっていたと言うのに……

 「さっきからシロ君の相手してて疲れたろ、二階で休むといいよ」

 「あっ、オレも寝る!」

 なんだよこの二人……オレはシリアスから一瞬にしてギャグに方向転換できるほど臨機応変じゃないっつーの。

 「ほらほらこっち、階段登った先だよ」

 シロ君に引きずられるまま二階に行くと、そこは部屋がいくつかあり、確かに宿屋らしき風体だった。なんかもうお泊まりの雰囲気。ぼろいベッドが二つ置いてあるだけの部屋。

 「オレこっちーっ!」

 部屋に入るなり、シロ君は向かって右側のベッドにダイビングした。シロ君は盛大に跳ね、ベッドのスプリングが危険な音を立てる。

 「おいおい……」

 「クーガはそっち!」

 いきなり呼び捨て……まあいいけど。オレが反対側のベッドに座ったのを見ると、シロ君は履いていたブーツを脱ぎ散らかし、着替えもせずに布団に潜った。ちゃんとパジャマに着替えろよ、パジャマ持ってないのかよ。そんな状態で、シロ君は言った。

 「じゃ、おやすみ!」

 「もう寝るのかよ!?」

 「あ、そうだ。まだクーガに用事があるんだった!」

 「今度はなんだ!?」

 布団から跳ね起きたシロ君は、急に改まった様子になり。ベッドの上で正座をしながら言った。

 「ある人に届けてほしいモノがあるんだ」

 突然の頼み事にオレは訳が解らず、首を傾げた。

 「クーガは生き返るんでしょ?」

 「まぁそうなる……はずだけれど」

 「オレはさ、まだ生きているはずのあいつに、届けたいモノがあるんだ」

 やけに真剣なその眼差しだ、正面から見たらたじろぐぐらいに。

 「あー……別に届けてやってもいいけどよ、『あいつ』って誰なんだよ?」

 軽く視線を逸らしながらオレが尋ねると、シロ君はボソリと言った。

 「……もう、名前も思い出せない」

 「はぁ!?」

 名前忘れたのかよ!? と突っ込もうと思ってシロ君に向き直ると、シロ君はうつむいて、拳を握りしめていた。言葉を無くしていると、シロ君は『あいつ』についての説明らしき物を語り始めた。

 「生まれた時から図体でかくて、力も強かった。頭が足りなくて、いっつもぼけーってしてて、人の話全然聞いてないように見えるけど実は聞いてるんだよ。味覚とかいろいろ悪くてさ、料理はゲキマズ。守る対象以外はどうでもいいって考えでさ、自分の事なんか全然考えてない。敵にも容赦なくて相手ボコる時は本当にボコボコにして……ほんと強情で……」

 「性格の説明されてもわかんねーよ、外見を説明してくれ」

 その質問に、シロ君は目を泳がせながら順番に答えた。

 「え〜っと、髪は……赤、ド派手なトゲトゲ赤毛」

 「トゲトゲ赤毛……?」

 「目はオレと同じ色……いや正反対だっけ……?」

 「おい……」

 「身長は入り口で頭ぶつけるぐらい」

 「ちょっと待て」

 「水色作業服青長靴!」

 「まともに答えろよ!」

 人の話を聞かない人との会話、いつもの事、オレの言葉は届かない、もう慣れたよ、ははは……。オレがへこんでいると、シロ君はそれをオレに見せながら言った。

 「その人物にこれを届けてほしい!」

 それは、鮮やかな紅の宝石だった、動脈に流れる鮮血をそのまま凝縮したような色の宝石。カットなどは施されておらず、直径は5mm程度しかない小さなものだ。

 シロ君はオレの左手をつかむと、勝手に手を広げさせて宝石を握らせた。そして自分はベッドに戻り、布団の中で敬礼をすると言う不信行動を行い、はきはきとした声で言った。

 「大佐、あとは頼みました!」

 「オレは大佐じゃない!」

 オレがツッコミを返した時には、すでにシロ君は寝ていた。いくらなんでも早すぎる。

 「おーい、シロくーん、マジ寝ですかー? もしもーし!」

 返事はない、ただの屍のよう……違った、死んでない、死んだように眠っているだけだ。どうしよう、一方的に頼まれ事を受けさせられてしまった、しかも成功率の低そうな。

 左手を広げると、そこにはシロ君から押し付けられた赤い宝石が転がっている。光に透かしてみると、鮮やかな色の中にドス暗い光をはらんでいた、何となく禍々しい色だ。

 「これどうしよう……」

 宝石を手で弄んでいると、いままで珍しく黙っていた神が口を開いた。

 “届けてやれば? そのトゲトゲ赤毛水色作業服に”

 「なんだその名称……」

 突っ込みながらも、言えて妙だと思いつつ、オレはその宝石をポケットに突っ込んだ。ブーツを脱いでベッドの横に置き、布団に潜った。

 “なんだ寝るのか、そして届けてやるのか?”

 「まぁ一応……おやすみ」

 ベッドに入ると一気に眠気が襲ってきて、さした時間も掛からずオレの意識は沈んでいった。

 寝てしまう直前、神が『おやすみ』と言ったような気がした。


嗚呼……疼く、肩が疼く!


肩が妙に痒いのです、汗疹でしょうか?

シリアスな台詞は、用法用量を守って正しく使いましょう。


次の話が上げられるのは、相当後になります。

更新停止宣言です、更新再開予定は不明です。


次はデリバークーガ、お楽しみに!

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