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戦闘士クーガ  作者: 狂狗
浮浪者クーガ
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 「えっヘッへ〜、きのみは完全食品〜♪」

 酒場につくなりシロ君は「きのみジュース二杯!」と叫び、オレをカウンター席へと座らせた。案の定オレとシロ君の前にきのみジュースが出され、シロ君はとても機嫌良さげにそれを飲んでいた。オレも試しに飲んでみたが、やっぱりミックスジュース以外の何物でもなかった。味はちゃんとおいしい、フルーツ満点と言った感じの味だ。

 シロ君はずっと怪しい歌を歌っている、木の実がどうのこうのと言う歌だ、どんだけ木の実好きなんだよ。歌の間に挟むように、シロ君は何の脈絡もなく言った。

 「それにしても久しぶりだったなぁ、タイマンドッチ。マスターでも相手してくれ無いんだもんな」

 「やるの久しぶりだったのか?」

 何気なく聞いてみると、シロ君はこっちを向いて酷く悲しそうに言った。

 「そうなんだよ、なんか屋外遊びだと誰も相手してくれなくなってさ、屋内遊びならやってくれるんだけど。クーガなら屋外遊びもやってくれると思って、無理に誘っちゃった。ごめん」

 「あー、うん」

 なるほど、ここにいる人間はシロ君と外遊びをすると危険だって解りきってるんだな。この言葉から解るのは、シロ君のあの物騒な投球と言うか攻撃と言うか、あれは全ての運動に当てはまるらしい。つまり、シロ君の運動神経は化け物並みと言う事だ、人間技じゃない。

 シロ君は本当に人間なんだろうか? あの世には邪竜だっていたんだから人間じゃなくてもおかしくない。好奇心にかられたオレは、何気なく聞いてみた。

 「そういやさ、シロ君って生きてる時どんなふうだったんだ? 名前忘れたらしいけど、なんか覚えてないのか?」

 オレがそう言うと、シロ君は目をパチクリさせた。唸りながら頭を抱え、きのみジュースを飲み干すという、いまいち良く解らない行動をとったあと、シロ君は話しだした。

 「オレさ、自分がどんな人間だったとか何やってたのか、そう言う事は覚えてないんだよ。仲良かった人とかは思い出せるんだけど、もう名前は思い出せないし。どんなとこに居たのかもいまいち思い出せない。ぼんやりとは思い出せるんだけどさぁ。ただね、オレが何で死んだかはちゃんと覚えてるんだ」

 内容とは裏腹に、シロ君の口調は明るい。まるで楽しい思い出を語るかのように。シロ君は突然よく解らない言語で話しだした。

 My god was said to me.

 「Doll that brokens because it has had mind. Your role won't exist any longer. Your role is remainder one. The thing to break yourself is your role.」

 Then, my answer is one.

 "Yes, my god"

 シロ君の言ったことがさっぱり解らなかったので首を傾げていると、シロ君は苦笑いで続けた。

 「この言葉じゃわかんなかったかな……? 簡単に言うとね、オレさ、オレの神様にいらないから壊れろって言われたんだ

 シロ君は笑っていた、とてもいい笑顔で、恐ろしいほど無邪気な笑顔で。

 「神って……」

 神と言われて思いつく人物は一人しかいない。酒場の喧騒がひどく遠く聞こえる。シロ君は自分の神だといった、ならばオレにはた迷惑をかけている神とは違う神なんだろう、オレとは関係のない神だ。オレの知らない、シロ君の神様。

 「要らないから壊れろって……つまり」

 「だからここにいるんだよ」

 どんな神かは知らないが、オレが口を挟むことではない。なのに、何でこんなに怒りが沸いてくるのか解らない、何に対して怒っているのかもよく解らない、けれどオレは確かに怒っていた、怒りのままに叫んでいた。

 「神に言われたからって……要らない奴なんている訳ないだろ、誰だって生きる権利はあるだろ? みんな必要とされて生きてるんだろ!?」

 「違うよ」

 オレの叫びをさえぎったのは、シロ君だった。先ほどのように楽しげな口調ではない、怒っている訳でもない、悲しんでいる訳でもない、落ち着いた声だった。顔を見れば、優しげな笑顔を浮かべているのに、声からは何の感情も読み取る事の出来ない。

 「不必要なモノは、確かにある。だから終わるんだ」

 オレには、その言葉の意味が解らなかった。『必要とされてない人なんていないんですよ』そう教えられてきたオレは、そんな事考えもしない。そんなの当然だ、そんな事考えたくもない。それなのに、なんて恐ろしい事を平然と言うんだ、シロ君は。よほど間違った教育を受けてきたのか、あるいは性根が腐っているのか。あるいは、実際体験したから解るとでも言うのか。

 シロ君がオレを見ていた。左右で色の違う、赤い瞳孔の不気味な目。どこまでもまっすぐで迷いの無い、綺麗な目、血のように赤い片目。オレはその目を見て要られなかった。オレは苦し紛れに、自分でも尋ねた訳がよく解らない、くだらない質問をした。

 「……お前は、恨んでいないのか?」

 シロ君はきょとんとした顔をして、不思議そうに尋ねかえしてきた。

 「誰を?」

 「誰って……」

 言葉が続かないオレに、シロ君はにっこりと笑って見せながら口を開いた。

 「誰も恨んでないよ。オレは世界が、みんなが大好きだから」

 多分、その言葉は心からの言葉なんだろう。本当に嬉しそうに、いっそ誇らしげと言ってもいいような顔で言うんだ、とても幸せそうに。オレはその笑顔を見て、邪竜の事を思い出していた。顔が似ていたのだ、顔の造りなんてカケラも似てないのに、邪竜とシロ君は同じ顔をしている、同じ表情をしているのだ。

 (どうしてそんな顔ができるんだよ……!?)

 オレはそこまで割り切れない、頭では解るが、心が理解できないのだ。

 そんな事を心の中で叫んでいたから、背後から迫る気配に気づけなかったのだろう。

腹の調子が、やけに悪いです。

体操服を、便利クーポンと聞き間違えました、何があったのでしょう。

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