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戦闘士クーガ  作者: 狂狗
浮浪者クーガ
33/49

 【クーガのターン】

 オレが持っているこの茶色のボール、これにオレの命がかかっている。何とも情けない話だが、過言ではないだろう。

 シロ君が投げ終わったから、次はオレのターンと言う事らしい。もう一度シロ君のターンがきたらオレは死ぬかもしれない、あのボールをまともに食らったら……命の危機だ!

 シロ君がやったように、オレはボールを数回叩いてみた。ボールは全然凹まず、鉄球のような固さを持っていた、叩いた手が痛い。どれだけ空気を詰め込んだらこうなるんだろう。こんなボール投げ合ってたら危ないだろう、オレが投げても危ないと思う。

 しかし、全力で投げよう。オレが投げたってせいぜいアザが出来るぐらいだろうし、オレの命の方が大切だ。ボールを握りしめ、オレはシロ君に向き直った。シロ君は天使のような笑顔を浮かべている。しかし、今のオレにはそれが悪魔の笑みにしか見えない。

 ボールを当てるとすれば……どこに当てるか、それが大切だ。首から上はセーフと言うのが常識なので却下だ。当てやすい場所といえば腹だが、取りやすいのも腹だ、それに腹にボールが当たったって倒れはしないだろう、と言うわけで腹も却下。だったら足か、足にボールを当てて転ばせる、しかし足は素早く動かせるのでかわされやすい。あー……どこ狙えばいいんだよ?

 「早く投げてよー」

 シロ君が急かしてきた、確かにオレはさっきからずっとボール握りしめたままつっ立ってるんだよな、五秒ルールがあればボールを取られてる所だ。

 “殺ーらっれろ、殺ーらっれろ、殺ーらっれろ”

 とても楽しそうな声、久々に喋りだしたと思えば……やられろコールかよ、しかも『やる』の『や』の字が『殺』になってる。少しぐらい応援してくれたっていいじゃないか……少し悲しくなってきた。

 “クーガ、私は信じてるぞ。お前が華々しく散る事を!”

 やっぱりそう言う事しか言わないんだな、なんかだいぶ悲しくなってきた。もういいよ、直球で投げてやるよ。あれこれ考えるのはやめた、素直にまっすぐ投げる。

 “逝け、クーガ!”

 かなり悲しくなってきた、それこそ泣きたいぐらい。泣いていいかな?

 “やだ”

 やだとか言うなよ、ほんと泣きたい……いい加減にシカトを決め込み、オレはボールを構えた。オレは球技は苦手と言う訳ではないが、得意じゃない。死ぬ気で投げたところでたいしたスピードは出ないだろう。けれど、やるしかない。覚悟を決めよう。

 相変わらずニコニコしているシロ君。オレはこの一球に全身全霊をかける!

 自分でもかっこ悪いと思う掛け声とともに、オレはボールを投げた。

 「でっりゃぁ!」

 ボールは思いのほか勢いよく飛んで行った。ボールはシロ君の胸のあたりに向かって飛んでいった。オレは心の中で祈った。

 (当たれ、と言うより当たってくれ!)

 勝利の女神は、愛想笑いもくれなかった。

 シロ君は片手をボールに向かって突き出した、ボールはその手に激突し、回転していたボールは手のうえで数回まわった。そのままシロ君がボールを鷲掴みにすると、ボールは回転を止めシロ君の手の中に収まった。

 つまり、オレの全力投球は、片手でいともたやすく受け止められた。

 自分の顔が引きつるのが解った。


 【シロ君のターン】

 勝負はあっさりついた。

 「いっくよー」

 実に力の抜けた動きと気の抜ける声とともに、剛速球が投げられた。全力投球をした後でバランスの悪い姿勢をしていたオレに、それをかわす事なんて到底無理で、オレは飛んでくるボールを見ている事しかできなかった。走馬灯なんてものは見ているヒマが無い。

 シロ君の投げたボールは、オレの腹にぶち当たり、酷く重いそれが腹に当たる感覚を感じながら、オレは後ろに倒れた。

 意識はどこか遠くへ行った。

フリーソフトが重すぎて使えなかった。

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