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戦闘士クーガ  作者: 狂狗
浮浪者クーガ
31/49

 「よくぞ聞いてくれたっ!」


 思わず口をついた言葉。そうだよ、その説明こそオレがいままで一番説明したかった事なんだ、そして自分からは絶対に持ち出せない話。言えないようにされているのだ、このバカ神に!

 “バカ神って失礼だな、バカ神って!”

 神の言葉なんか知った事か、クソ食らえ。小説始まってからずっと説明したかったけれど機会がなかった。読者の皆さん、読み飛ばしたくなるだろうけどよくよく聞いててくれ!


 「オレは、いたって普通の子供だった。平凡人生まっしぐらだ。このピアスをつけた時からだ、平凡なはずのオレの人生は世にも奇妙なモノになちまったんだよ。ピアスをつけた時に聞こえてきたこの声、神だとか名乗ってるから神って呼んでるけど、どう考えても神らしくないこいつだ。オレ以外の人間にこいつの声は聞こえないから、説明なんかろくに出来やしない。こいつはオレが親から付けてもらった名前を『なんかつまんない』と言う理由で改名しろと言いだした。それで出てきた案がクーガ・グリムゾンとか言うどこの戦隊ヒーローの名前だと言いたくなるような名前だよ。当然オレはそんな事する訳ねぇだろ、と答える。そしたらこのバカ神『じゃあお前の人生徹底的に不幸にしてやる!』とか言いだしやがって、しかも実行し始めやがった。オレは当初神の言う事を聞かず、街をぶらぶら歩いた。そうしたら頭上から洗濯物とかバケツの水とか植木鉢とかが降ってくるし、道を歩けば目の前を黒猫が横切り、チンピラに絡まれ、犬の首輪が偶然外れて犬に追いかけられる。本を買えば落丁ばっかりで読めない、弁当を買えば中に虫が入ってる。剣の練習をしてると靴紐が切れたり、剣が折れたり。凄く地味な嫌がらせだろう、オレは負けるものかと一週間ぐらい粘ったな。さすがにそんな事が続くと気が滅入ってきてな、いい加減にオレも折れた。それで『こんご名乗る時は「クーガと呼べ!」と言うようにするんだぞ!』とか言う約束をさせられ、破ったらお前の頭に雷を落としてやると脅され、実際ちょっと落とされ、仕方なく従わざる終えなかった。解るか? この理不尽さ! これと言って悪い事をした訳でもない普通の人間が、いきなりこんな事に巻き込まれたんだぞ。どう思うよ、もはや笑えてくるこの人生!」


 語りを終えたオレを、酒場にいる全員が見ていた。それもそうだ、いきなり立ち上がって身ぶり手ぶりも豊かに、しかも大声で自分の身の上話しを始めたら、だれだって目がいくだろう。ドン引きした視線でオレを見ているに違いない、少なくともかなり驚いているはずだ。

 ……どうしよう、明らかに24時間経ってないけど、意外と時間が経ってて生き返る時間になってたりしないかな? 穴があれば隠れたい気分なんだが、穴に入って漆で蓋をしたいんだが、そして蓋を溶接したい。

 何もしたくない、しかし何もしない訳にはいかない。目の前にいるシロ君の顔をさりげなく除いてみると、ただでさえ大きい目をさらに見開いて凄く驚いた顔をしていた。ああ、やっぱり……。この後どうしよう……。

 シロ君は数回瞬きしたあと、大きな目をキラキラさせて言った。

 「なにそれ、すごーい! すごい傍若無人! あの人みたい!」

 ……は?

 想像していた言葉とはだいぶ違う言葉に、オレの思考は停止した。話に乗ってきたよこいつ、へんな感想言いやがった。シロ君の言葉に続き、酒場にいたほかの客も口々に言いだした。

 「なんかつまんないって……名前につまんないって言われたのかよ」「許否ったらお前を徹底的に不幸にしてやるだってよ」「うわ酷ッ」「つーかなんだよその地味な不幸……」「徹底してるのは確かだよな」「クーガ・グリムゾンって……ブッ」「おい、笑うなよ」「お前も苦労人なんだな……」「キョウの方が苦労人じゃねぇの?」「いや、レクさんはおとなしいから」「笑えるけど笑えねぇよその人生」「よく頑張ってきたな、その気持ち解るぞ……っ」

 最終的に同情された。

 なんだこの人たち、ノリが変だよ。変な所でノッてくるよこの人たち、見ず知らずの人たちなのに。無駄にフレンドリーだな、オイ。何故か皆でオレを褒めだす。えらいなぁ、とか言いながらオレの肩を叩いて来た人、見れば顔に深い傷跡のある実に恐ろしい外見の人だった。どこを見回しても怖い人しかいない。ただ今怖い人に囲まれております、非常に肩身狭いです。

 視線のやり所に困り、隣に座っているシロ君を見ると、ジュゴーと下品な音を立ててきのみジュースとやらを飲み干していた。音がしなくなるとストローを引き抜き、コップを傾けて中に入っていた氷をバリバリと食べる。口の中の氷がすべて無くなると、シロ君は笑顔でオレの方を向いて、何の脈絡もなく告げた。

 「んじゃあ、タイマンドッチやろ!」

 なんでそう言う展開になりました?


西京焼きがうまかった。

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