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「ふ〜ん。アンタ、やっぱり新入りかぁ」
「は、はぁ……」
その人に連れられて来たのは、人相の悪い人が行きかう酒場だった。明らかにお茶と言う雰囲気ではない。その店のカウンター席にオレはいるのだが、全く落ち着けない。オレにアイスココアを出して来たマスターも、図体がでか過ぎて怖い。
オレをここまで連れてきた人。隣に座っているその人は、真っ赤なドレスがよく似合う長髪の美女だ、色っぽい声は地声のようだ。こんな目立つ美人一度見たら忘れないだろう、つまり一度も見たことがない、初対面だ。その人は昼間から、異国の言葉で銘柄の書かれた、よく解らない赤ワインを飲んでいる。そしてワインを傾けながらオレにいくつかの質問をしてくるのだ。そしてオレは適当に返事を返す、それの繰り返しだ。
「それで、アンタは半分死んでてその内生き返る予定だと」
「まぁ、そうなってます」
「そう言ってる奴は大概生き返らない」
手に持ってたコップが軋んだ音を立てた。名前も知らない人にいきなり告げられたショッキングな言葉。さっきからこんなやりとりが続いている。ショックを受けているオレを見てニヤニヤしていると言う事は、どうやらこの人、性格がかなり悪いらしい。気が変わったのか、その人はオレに励ましの言葉をくれた。
「私はアンタの行く末なんか知らないよ。私はそう言って生き返った奴を一人も知らないけど、生き返るなら生き返るさ。そんなに気にしなくてもいいよ」
いくら性格が悪くても美女に励まされて嬉しくない訳がない。しかし、オレはこの人の名前すら知らないのだ、嬉しいより先に不信感が募る。という訳で尋ねてみよう。
「ところであなたの名前は?」
「ああ、まだ名乗ってなかったね。私はここら辺の野郎どもからは『姉さん』って呼ばれてる。好きに呼ぶといいよ」
名前教えてくれないのかよ! と内心で突っ込むが、これ以上聞いても教えてくれないだろうと思い、オレは黙る事にした。質問は終わったらしく、黙っているオレを無視し、姉さんはオレの状況を整理してスラスラと、とても軽い調子で述べた。
「アンタはいま心配停止で死んでるに等しい状態だが、一応生きている。こっちで二十四時間過ごしたら生き帰れる手筈になっているけど、これと言った確証はなく、実はもう死んでるんじゃないかと自分でも疑っている。あと、ここが何処なのかもよく解ってなくて、茫然としてた所を私に捕まったと。フツーだねぇ」
「普通なのかよ!?」
「もっと変な奴なら唸るほどいるよ。ほら変人代表のお目見えだ。」
シルバーウィーク、休みじゃねぇ。
何やら日記となりそうな雰囲気です。