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気が付けば、神は誰かに向かってと言う様子でもなく、一人でベラベラと喋っていた。
“前回の学園モノ、学園と言っておきながら学園である必要性がろくにないミラクル、限りなくブラックに近いグレーの小説、ブラック判定が来てもおかしくないものでしたね。見どころと言えばやはり邪竜の授業でしょう、あえての世界史、異世界の住人の教える歴史、すごく不安になりませんか? ちゅーか、いつ教員免許を取ったのか……永遠の謎を残したまま、多分決して続かない物語にございます”
「そんな謎、気にするなよ……」
自分の声に覇気がない事がよく解る、神はそのまま話し続ける。
“そしてすべては無かった事に、思いつきの急ごしらえは儚く消える。ストーリーに影響は及ぼさない”
「じゃあここも思いつきの急ごしらえなんだな、そうなんだな?」
“いいえ、ここは地盤のしっかり安定した、ずいぶん前からある場所にございますよ?”
「ここが……?」
茫然と、オレは立ち尽くしていた、どうしたらいいのか解らなかったのだ、オレは確かに天国の門とやらをくぐったはずだ。
なのに……ここは何処だ?
立ち尽くすオレの前を何人かの人たちが通り過ぎて行く。オレがいる場所は大通りらしく人通りが多い。とりあえずあたりを観察してみると、道沿いにある建物は木造が多い。道は舗装されておらず、砂っぽい道だ。天気は悪い、今にも雨が振り出しそうな程に淀んだ空である。道を行く人はどれも声をかけ辛い強面ばかり、男ばかりだ。
……どう見ても治安の良い場所じゃない。何と言うか……カウボーイが決闘を始めてもおかしくない雰囲気のある場所だ。古い映画に出てきそうな感じの。もっとも、カウボーイの決闘などと言うみばえの良い物より、ヤクザ同士の喧嘩だとかの方がよく見られそうな場所だが。
どう見ても天国ではない場所で、オレは立ち尽くしていた。
「ここが……天国?」
“天国へようこそ!”
神が明るい声で言った。けれどそんな言葉聞こえやしない。
「…………」
“なんだよ、三点リーダだけのセリフを吐きおってからに”
「何処だよここ……?」
“だから天国だって”
いや、どう見ても天国じゃないだろ。せいぜい地獄だ、地獄行きになってそうな人ならたくさんいるし。でも地獄にも見えない、やっぱり何処かの治安の悪い街にしか見えない。もしかしたらオレはもう生き返ったのか?
それで、別の世界の適当な街に落とされたのかもしれない。うん、あり得そうだ。
“別にそう言うわけじゃないんだけどなぁ……、ここは悪っぽいけど気はいい人が集まるコミューンだよ、ちなみにコミューンはフランス語だ”
(コミューンって……確か『共同自治区』って意味だよな。なるほど、そんな話し何処かで聞いたことあるぞ)
コミューンについての説明をすると、神は何故だか嬉しそうにあの世についての説明を始めた。
“死人を一カ所に集めたらシャレにならん事が色々あるからこうやって……”
突然神が黙った。珍しい、神は何時いかなる時であれ喋りたければ意地でも喋っているのに、深夜にいきなり喋り出すからとても迷惑だ。首を傾げていると、神は独り言を言った。
“ああそっか……こっちの理はよく解らんなぁ。なるほど、こう来るか。私いらねぇじゃん、どうしよ影が薄くなる、レギュラーのぴんち”
(いきなり何言ってんだよ?)
相変わらず首を傾げていると、オレの前を通り過ぎていくはずの人が突然立ちどまった、そしてオレに向かって歩いてくる。神が言った。
“ほれ、案内人だ”
逆光でよく見えないが、とりあえずその人が真っ赤なドレスを着ている事は解った。その人はオレの目の前まで来ると、色っぽい声で言った。
「そこで立ち尽くしてる変なぼっちゃん。ちょっと話があるのよ。立ち話もなんだし、一緒にお茶でもしない?」
今日は二回も自滅した。
バドミントンで壁打ちしようとしたら、デコに飛んできた。
バックしたら、机に激突した。
以上、作品とは全然関係の無い話。