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「待てやごらぁああああ゛!」
はーっはっはっは、壊れたなクーガよ。……って、擬態語ばかりでは話が通じない。解説開始。
『廊下を走ってはいけません』そんな言葉が走って逃げ出すぐらいのスピードで、クーガは廊下を走っていた。クーガが追っている足の生えたプレゼントは、クーガの3mほど前を走っている、こちらも素晴らしいスピードで廊下を走っていた。
歩幅はクーガより狭いくせに、クーガと同じスピードで廊下を走っているプレゼントは、やはり無生物のはずだからか一向に疲れる気配もない。しかし追っているクーガは普通の人間だ、疲れが出てくる。なのでバカみたいな大声をあげながら気合で走っている。
ちなみにただ今は授業中である、それにもかかわらず誰も注意しに来ないとは、変な学校である。
プレゼントは廊下の角まで走り、そばにあった教室へと飛び込んだ。クーガもそれを追って教室に入る。教室の中では世界史の授業が行われていた、のんびりとした関西弁が聞こえてくる。
「プロイセンは漢字の略号だと普なんや……ってそこ、普通とか言ってやらんといてな、かわいそうやろ。この国は今で言うドイツ……ドイツの略号は独やな、あー孤独とか言ってやらんといて。その言葉はイギリスにい言ってやりや、栄誉ある孤立やっとった国さかい」
黒いスーツを着ている教師は、チョークで達筆すぎて読めない字を黒板に書きながら授業を進めている、地面まで届きそうな黒い長髪にチョークの粉がたくさん降りかかっていてみっともない事この上ない。その上、教師の頭から生えている金色の角が、たまに黒板にすれるのだ、そのたびにガラスを引っ掻いたような耳触りな音がなる。
……クーガはいい加減にツッコミを入れた。
「また邪竜かよ!」
はいツッコミどころ間違えたー、どうやらこの二人知り合いだったようですね。
「ファヴニルって呼んでな、授業中は静かにせいや〜」
なんかいつだったか言った覚えのあるツッコミに対し、ファブニルとか名乗った教師はゆるい注意をした。注意をまったく聞いていないらしいクーガは、教壇の前まで来ると息を深く吸い、一方的に話し始めた。
「なんでお前がここにいるんだよと前にも聞いたような気がするが今またあえて問うぞまぁこの話なんだか世界観設定むちゃくちゃみたいだから
パラレルワールドで別人だといっても一応信じられるけどファヴニルって名前に関してはそれ本名だったよな忘れてたけどだからつっこまないでおくそれにしてもその変な格好はなんなんだよ黒スーツってなんだよマフィアかお前黒スーツ着て関西弁話してんじゃねーよ違和感バリバリだからと言うかお前スーツ似合わねぇよこないだ来てたみたいな変な服着てればいいだろ何であえてスーツ着ちゃうかなここでやっぱり後で服変えてこいそうしろそれとなんでお前が世界史の教師だ何であえて世界史の教師だ微妙な教科選びやがって普通に角生やしたまま授業やってんじゃねぇよ黒板にすれてキィキィうるせぇんだよ字も達筆すぎるよそれあんたは寺の住職かあと頭にチョークの粉かかりまくってるよ黒づくめだから余計に目立つそれ以前に何で教師なんだろうなお前が年の功ってやつかぁあー肺活量の限界!」
いきなり話し出したかと思えば、いきなり息を切らしているのだから、たしかに目を丸くしてもおかしくないだろうな、しかも句読点もろくに無いからちゃんと聞き取れたかどうか。目の前にいるファヴニルはまぬけ顔をさらしている。一気につっこみすぎたせいで息は切れているが、クーガはまだファヴニルにつっこまなければならない事がある!
「はーい、先生の黒スーツは萌え要素としてはアリだと思いまーす」
つっこもうとした所に思わぬ所からの横槍、背後にいる見知らぬ生徒の言葉。クーガはそちらを先につっこんだ。
「お前はいわゆる腐った人間か!?」
その生徒は見た目的には活気あふれる女子生徒だが、教科書の下に少しだけ隠してあるR18とか言いそうな怪しい原稿が、それを台無しにしている、その生徒は原稿にペン入れをしながら返事を返してきた。
「そうですとも!」
「くたばれ!」
「うっわ、偏見だ」
ちなみに筆者は腐敗していようが、いなかろうが気にしない質です。
その不振な生徒が原稿に集中し直すと、別の女子生徒が手をあげた。ファヴニルがその生徒を当てた。生徒はちゃんと起立して発言した。
「先生の授業はちょっと嫌なところもあるけど、解りやすくていい授業です、教師としては間違ってないと思います!」
「は、はぁ……」
どことなく天然の雰囲気を漂わせている割には、まじめな事を言う生徒である。ドぎついボケしか相手にした事がなかったクーガでは、ツッコミになれなかった、皆さまつっこみたければセルフで突っ込んでください。
「おい、そこの乱入者、一つ言いたいんだけどよ」
今度は少しガラの悪い男子生徒が発言をした、どうやらファヴニルに関する事ではなくクーガに関する事らしい。その男子生徒は言った。
「てめぇはさ、あそこにいるプレゼントを追っかけてきたんじゃないのか?」
そう言った男子生徒が指した指先は、中庭だった。ぽぴぽぴ足音を立てながら、プレゼントがのんびり歩いている。
親切に教えてくれた男子生徒を見つめ、クーガは笑っているような怒っているような、変な表情で固まっていた。
……忘れていたらしい。
何とも言えない空気の漂う教室のドアが乱暴に開かれた、ドアを開いた人物は息も絶え絶えに言った。
「ここ……かいだん……なげぇ……クーガのアホぉ……」
モザイク人間”神”、体力ゼロで登場。ちなみにこの教室は二階にある、階段も別に長くない、たぶんこの人は体力の基本値が一ぐらいしかなかったんだろう。
神が「クーガのアホ」と言うか言わないかと言う所で、クーガは窓の外へと身を躍らせた。二階から飛び降りるなんて危険なので、よい子はマネしないように。
「あ、待てよオイッ!」
あわてて窓にかけよった神だが、クーガはすでに地面に着地していた、足を抱えて悶え苦しんでいる。しかし暫くすると復活して、中庭に向かって走り出した。先程と同じシチェーションである。
「おい、待てよゴラーッ!」
――神の叫びは、虚しく響くばかりだった。