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「……行きましたね」
「行ってまったなぁ」
クーガを見送った二人は、再びちゃぶ台へ戻りミカンを剥きはじめた。剥いたミカンを食べながら二人は話していた。
「これで良かったんですか、竜王さん。これで貴方は完全に終わってしまいましたよ?」
「これでいいんや、これで」
冥主は深い溜息をつきながら言った。
「まったく、曾ては竜王と呼ばれ、砂の女王からも高い評価を受けていた貴方は何処へ行ったんですか? 何時の間にか性格まで変わってますし」
「そないな事はもう昔の事や、民からは邪竜と呼ばれ、自分の世界を保つ事さえもままならなくなっとった。それで綺麗に片づけようとして、こうなったんや。ワイとしちゃ最高の終わり方やで」
竜王の言葉に、冥主の溜息は深くなるばかりである。ミカンに手を付けるのを止め、お茶に手を出した頃に冥主は問うた。
「彼の事、貴方はどう思っているんですか?」
「言ったやないか、別に恨んでなんかおりまへんって」
「個人としての意見ではなく、神としての貴方に対して聞いているんです。彼は貴方を殺し世界を壊した、言わば大罪人と成る筈の人物でした。しかしそうはならなかった、そう言う者だからですよ、そして貴方はそれに満足して死んで逝く。それをどう思うかと聞いているんです」
「なんや、冥主はんも『危険因子は抹殺するべきだ』とか言いなはるんで?」
「いいえ、僕には関わり合いようの無い事なので。ただの好奇心ですよ」
竜王はお茶を置き、軽く笑いながら言った。
「彼はまだなぁんも悪い事はしとらんのや。知ってるかえ? ワイの家にいるやから共はだぁれも彼の事、恨んだりしておりまへんのや。せやから、ワイに彼が居て良いのか悪いのか、それを決める事は出来まへん。ワイの意見としては、まだ結果を出すのには早いんやないかと思っとる。彼はまだまだ悩み続けるでな、まだ時やない」
「それだけですか?」
冥主の追及に、竜王は声をあげて笑った。
「せやなぁ、ワイは彼のこと気にいってまったで『何者であれ生かすべきだ』っちゅう意見に賛成するわ。まぁ、ワイにはもう関係の無いことなんやけど。今ん所姫さん位やろ、はっきりそう言ってはるの。ワイの代わりに一票入れといてくれんか?」
「考えておきます」
冥主も共に笑った。
竜王は立ち上がり、暗闇へと体を向けた。
「さて、そろそろワイも行くとしますか」
「何処へ行きますか?」
「せやなぁ、クーガはんを困らせれる所がええわ」
「悪趣味な人だ、よほど気に入ったんですか?」
「別にええやろ?」
「そうですねぇ、きっと今よりは彼に近い存在になりますよ」
「せやなぁ、彼はすぐどっかに行ってまうでなぁ」
竜王と呼ばれた者は、笑うとか、感情を外に出すのが苦手だった、そして動く事を嫌った。しかし、かつて竜王と呼ばれた者は、自然な笑みを浮かべ、先へ進もうとしている。邪竜は振り返りもせず軽く手を挙げて、別れを告げた。
「んじゃサイなら」
これからも永遠に冥主と呼ばれ続ける者は、苦笑を浮かべながら別れを告げた。
「さようなら」
半生霊はこれで終わりです、次は番外編をのせようかと思います。でも時間がないので、更新は遅くなるかもしれません。
いつか邪竜の昔話も書きたいなー、と思っています。