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「と言うわけで、前回説明を兼ねた序文が終わったわけだが……何だよこのタイトル!?」
“半生霊クーガ”
「冷静に教えられてもな、どんなタイトルだ!」
“はんなまれいクーガ、ではなく、はんいきりょうクーガと読んでくれ”
「いや、オレが聞きたいのはそこじゃない!」
“浮浪者か亡霊かさんざん悩んだあげく……半生霊だそうだ”
「なんでそこに行っちゃったんだよ、タイトル変えろ!」
“だってぇ、良いタイトルがないんだもん”
「少なくともこれは良いタイトルじゃない!」
“今あの世にいます”
「話しそらすな!」
神に話しをそらされてしまったのだが、あの世にいるのは確かだ。と言っても、オレはあの世に来るのは初めてなので、本当にここがあの世なのかは解らない。でもここはあの世だと思う、まぁ神があの世だと言ってる時点で、おそらくあの世だろう。ついでに言うと、訳も解らないまま殺されてしまったオレが、何故こんなに落ち着いて話せているかと言うと、混乱しすぎて逆に落ち着いているだけだ。
“お前は既に死んでいる”
「言うな、そのセリフを言うな。マジでオレは死んだのかぁー!」
“お前は既に死んでいる”
「二回も言うな!」
“大事な事なので二回言いました、死んでも生きが良いなお前”
「そんな事言われても、うれしくない……」
神のひどい言葉で地に伏すオレ、いつもの内心会話ではなくちゃんと口に出して喋っているのは、他に誰も人間がいないからだ。
オレが今いる空間は、黒い空間だ。そう、暗いではなく黒いのだ。自分の姿も地面もはっきり見えるのに、周りはただ黒いだけで何も見えない。具体的に言えば、漫画でオレ以外の背景が全部ベタ塗してあるような状態だ。周りを見回しても何も見えやしない。
「この状況……死んだら全てが終わるってやつか」
“次回作もあるよ”
「はいはい、終わらないんだな」
神の声を聞いていると、落ち込んでいる事が馬鹿馬鹿しくなってくる、と言うより色んな事にウンザリしてくる。とりあえず地面と仲良くなっていても仕方ないので、立ち上がろう。立ち上がったはいいが、こんな空間で何をしたらいいのか解らない。こんな時こそ神に聞いてみるか。
「それで、オレはこれからどうすればいいんだ?」
“歩け”
オレの質問に対し神は簡潔な回答を即答した、しかし意味が解らない。
「……はい?」
“ウォーキング”
英語にされても意味がない。歩けとい言いたいのは解ったが、どちらへ向かうべきなのか、また何で歩くのか、と言ったところが解らない。
「何処へ、何故?」
“そのへん、てきとーに歩きんしゃい”
どうしろってんだよ……こんな黒い空間で歩けと言われても。
“さっさか歩け、ハリー”
「オレはハリーじゃない」
”そのハリーじゃない、ハリーアップ! とかのハリーだ、つまり早く”
「ややこしいな……」
いくら抗議しても無駄だと解ったので……まぁ神に抗議して通った覚えはないのだが、オレはとりあえず前へ歩きだした。何も見えない中を歩いて行くのはなかなか勇気がいる、一応勇者としてはキビキビ歩くべきなんだろうが……
“今は半生霊”
「うるせぇ」
今のオレが勇者でないのは確かだが。勇者云々は関係なく、オレは足元に気をつけながら歩いた。さっきから前に進んでいるようには全く思えないのだが、確かに歩いている感じはする。どうせ反論してもウォークウォークウォーキング! と言った感じの答えしか返ってこないだろうから、オレは黙って歩いた。
何分歩いていただろうか、真っ黒な世界に異変があった。歩いていた方向の先に、何かが見えたのだ。遠い位置にあるらしくよく見えないが、何かがあった。
「なんだあれ?」
“ウォーキング!”
「あれに向かって歩けって事だな」
最近、神の使う謎の言葉が理解できるようになってきた。便利には違いないが、イコールで神に慣れてしまったという事に繋がる、なんか嫌だ。それに向かって歩いていくと、だいぶ遠くにあると思っていたのに直に近くまで来た。遠くからは解らなかったが、近づくにつれそれが何なのかが解った。