第11話
side 琴吹真理
突然だけど、私ブラコンだ。
別にだからと言っておにぃに人生相談をしたり、ラノベ作家とイラストレータみたいな関係ではない。
どこにでもいるごく普通の兄妹だとおもう。
おにぃは、私の憧れだ。おにぃの周りにはいつも人が沢山集まる。それは多分おにぃの人柄の良さのおかげだと思う。誰にでも優しい性格、よくできる気配り、そして頭もいい。困っている人がいれば絶対に手を差し伸べるような人なのだ。
そんなおにぃだから私は好きになったんだと思う。――でも私は決しておにぃと結婚したいなんて思っていない。付き合いたいと思ったこともない。
私はおにぃにただ幸せなになってほしいだけ。
私はおにぃと兄妹である事を誇りに思っている。私が悩んでいる時何も言わなくても声をかけてくれるのがおにぃだ。だから私もおにぃが悩んだり、困ったりしていたら絶対に力になりたいと思う。
そう決意をして数年が経った日。
いつも元気で笑顔なおにぃが玄関で座り込み涙を流していた。
今までに見たことのない顔をしていた。色々な感情が混ざっているようだった。今声をかけるべきなのか?と、私は一瞬迷ったが、多分今声をかけないとおにぃは涙の理由を教えてくれない。そんな気がした。だから私はおにぃに声をかけた。
おにぃはやはり、最初は誤魔化そうとした。しかしおにぃが泣いてるのを見た。と伝えてるとおにぃは観念したのか、理由を私に話してくれた。
おにぃが泣いていた理由をまとめるとこうだ。
『付き合っている彼女に浮気された。』
私は、それを聞いた時とても悲しい気持ちになった。どうしておにぃが浮気なんてされないといけないのか。
私は浮気をした彼女さんに怒りなどはなく、ただ悲しかった。
とりあえず私はおにぃに
「でもさ……泣いてたって始まらないよ。浮気されて悔しくても前に進まなきゃ。大丈夫だよ。おにぃならね。」と言った。
もちろん笑顔で。おにぃは昔私にこう言った
『悲しい時でも笑顔だ!笑ってりゃいいことがある!どんな時でも笑ってろ!』
無茶苦茶なことを言ってる。と、思う人もいるかもしれないが私にはそうは思えなかった。だって私のおにぃはどんな時でも笑顔の人だったから。
「その根拠はどこにあるんだ……?」
私が言った言葉に対して、おにぃがそう返事をした。
「だって……琴吹星矢は、私――琴吹真理のお兄ちゃんなんだから」
私はそう答えた。根拠なんてない。
するとおにぃの目から涙が流れていた。私の目の前でおにぃが初めて泣いた。私は頭を無言で撫で続けた。
おにぃには、絶対に幸せになってもらう。おにぃが幸せになれない世界なんて私は許さない。
私はおにぃが幸せになるためならなんでもする。




