第1話
私は浮気をした。
町へと買い物に来た時の話だ。1人の若い男に声をかけられた。内容は「一緒に遊ばないか？」みたいな感じった。
その時の私は、彼と喧嘩の最中だったせいかむしゃくしゃとしていた。だからナンパの誘いにのってしまった。ナンパをしてきた男と歩いていても全く楽しくなかった。思いだすのはいつもの彼の顔ばっかり。この男と手を繋いでも全然ドキドキしない。
やっぱり私には彼しかいない。明日ちゃんと謝ろう。私はそう思った。
もうこんなこと辞めよう。彼以外の男とこんなことをするのは辞めよう。そう決めた私は、ナンパしてきた男に別れを告げるために横を向いた。
そしてその時私は絶望した。ナンパをしてきた男の少し横に、私の彼氏の姿があった。目は間違いなく私達を見ていた。
そして彼は何も言わずにその場を去ってしまった。――追いかけなきゃ。私はそう思った。
ナンパをしてきた男の手を振り払い私は必死に彼を追いかけた。しかし人混みのせいか、彼に追いつくことはできなかった。
◇
最愛の彼女に浮気をされてしまった。
町へと出かけた時だった。俺――琴吹星矢の彼女――白瀬香苗が他の男と手を繋いで歩いてる姿だった。
信じられなかった。
俺は数秒、いや数十秒ほど2人の姿を見つめていた。しかし2人は一向に離れる気配はない。その時俺は思った。現実を信じるしかない。
浮気――何かの間違い。そう思いたかった。しかしそうじゃなかった。
俺は彼女に捨てられたんだ。
◇
翌日。俺は学校に行くのが嫌だった。しかし、休むと言う訳にもいかないので仕方なく学校へと向かった。
いつもなら彼女と歩いている道も今日は1人だ。しかしそんな時後ろから俺を呼ぶ声がした。
「琴吹く〜ん！！」
「あ、生徒会長。おはようございます」
「おはよー。もう敬語なんていらないっていつも言ってるでしょ？」
「そういう訳にも行きませんよ。先輩なんですから。」
南 優実俺の通う高校の生徒会長を務めている人だ。非常に綺麗な人だ。黒髪を長く伸ばした髪。綺麗な顔付き。その姿は誰が見ても美少女と言う存在だろう。
ちなみに俺がどうして生徒会長と親しげなのかと言うと俺が生徒会の会計として務めているからだ。会計になった理由は……特にない。なんとなくってやつだ。
「今日は彼女ちゃんと一緒じゃないの？いつも一緒に来てるはずだけど？」
やっぱりその話になるよな……。
「彼女ですか……彼女は、、、」
別れました。そう言おうとした時だった。後ろからまたまた俺の呼ぶ声がした。
「星矢！！！！！」
俺が今1番会いたくない人の姿だった。
「もう！どうして先に行くの！」
彼女はそう言った。
まるで昨日のことがなかったのように話しかけてきた。もしかしたら俺に見られたことにすら気がついていないのかもしれない。
ムカつく。すごくムカつく。
まぁ、もうどうでもいい。他人なんだから。
とりあえず俺は朝の挨拶をすることにした。
「おはよう。白瀬"さん"」
