7話 勇者育成訓練2
魔力とかのステータスの概念はあります。必要じゃないのでまだ具体的な値は出しませんが…
…う、うーん……眠い…
その次の日、広間に現われたのは柚月ではなく金木だった。
金木は一言で言えば不良だ。僕は家が近かったためによく関わっていたので、小さかった頃の気が弱い金木も知っているが、中学デビューした金木は、不良になったのだ。金木はかつて気が弱かったことを覚えている僕が心底嫌いみたいだが、それは知ったことではない。
「やあ、金木」
「おう、久しぶりだな紫吹」
「…久しぶり」
「おいおい、由希、なんでお前がここにいるんだ?」
「攫われたんだよ、お前と一緒で」
「…ちっ」
今日も勇者育成訓練があった。
今日は魔力の性質、どんな魔法に適正があるかを確認するらしい。
そのために、簡単な初級魔法を覚えると聞いた。
昨日の【脚力微強化】に加え、"プチファイアー"【硬化】【魔力吸収】【魔力放出】を覚えるらしい。"プチファイアー"は【火魔法】の一番簡単な技だ。
結果を言おう。
僕は、一応全ての魔法を覚えることができた。でもどれも【脚力微強化】に比べれば遅かったので、僕の適性は身体強化なんだろう。一番覚えにくかったのは【硬化】だった。これだけで1時間半以上習得にかかったので、僕にその系統の適性はあまりないのかもしれない。"プチファイアー"【魔力吸収】【魔力放出】は覚えるのが早くも遅くもなかった。
真樹は、"プチファイアー"以外は覚えられた。【硬化】は僕よりは断然早かった。【魔力吸収】は僕より圧倒的に早いし断然性能が良い。真樹の適正はこの系統だろう。【魔力放出】は僕が少し勝ってるかな? 「異世界に来て【火魔法】を覚えられないなんて…」と本人は嘆いていたけれど……。
如月は、全ての魔法を覚えることができた。僕が1時間半以上習得にかかった【硬化】を一瞬で覚えているのを聞いた時は泣きそうになった。如月にはその系統の適性があるのだろう。
岬は、全ての魔法を覚えることができた。本人によると、どの魔法もそんなに習得にかかった時間に差がないらしい。バランス型なのかな?バランス型は目立ちにくいけど地味に強いよね。
紫吹は、【硬化】以外は覚えられた。でも"プチファイアー"を一瞬で覚えたらしい。真樹はそれを聞いた時案の定涙目になっていた。【魔力吸収】と【魔力放出】は、岬よりはそこそこ早く覚えられたと言っていた。
そして金木は、【脚力微強化】も含めて全ての魔法を覚えることができていた。【硬化】を少しの時間で覚えたことを苦労している僕に自慢してきた時は本当に腹がたった。【魔力放出】覚えるのに皆の中で一番時間掛かってたくせに……。
午後は昨日と同じように剣を学んだ。皆、昨日よりは上達したと思う。
真樹はやっぱり教官から褒められていたが、どこか沈んだ顔をしている。たぶん基礎的な魔法である【火魔法】を使えなかったことをまだ引きずっているんだろう。気にしなければいいのに…と思うが、本人からしたら結構ショックなのだろう。これで周りにできない仲間がいればまだよかったのだろうが、皆そこまで苦労せずに覚えちゃてたしな……。
癪なことに金木も褒められていた。見たところすでに僕より剣の扱いが上手い。やっぱり不良としての経験が生きていたりするんだろうか。ちらちらこっちを見て戦いたそうな顔をしていたのが僕の気の所為であればいいんだけどなぁ…気の所為じゃないよなぁ…
訓練が終わった。
やっぱり、訓練は疲れる。
魔法も使い続けていくとイメージが固まって消費魔力が少なくなると言われたが、とてもじゃないけれど今から魔法を使う気にはなれない。
さっさと寝ましょう、おやすみなさい…