14話 暗澹、落胆、そして感嘆
嫉妬って恐ろしい………
はあっ、はあっ、はあっ
…悪夢を見ていた。
柚月が死んでいるのを見つけた僕がいくら駆け寄ろうと思っても近づけず、じわじわと死体が腐爛していくのを指を咥えて眺めることしかできない夢だ。
サイアクなめに遭わされた。気分はどん底だ。柚月が死んで土に帰っている間、僕はのんきに過ごしていたんだ…。罪悪感に押しつぶされそうだ。
呆然として罪悪感に潰される。
なんとか罪悪感の下から這い出して気分を切り替えた時には10分も経っていた。
体も依然として痛いままだ、昨日より多少マシだけど。やっぱ嫉妬って怖いな。いろいろ気をつけよ。
朝食を食べたら、広間に向かう。
歩きながら、魔法訓練を思い出して魔法の多重発動をすることにした。
まず【洞見眼】を行使、重ねて【視力強化】も使おうとした、ができなかった。
え?なんで?なんで多重発動ができなくなってんの?
もう一回同じことをしてみても、結果は変わらない。
…少し落ち着こう。これは、あれだ。魔法の相性かもしれない。【洞見眼】と【視力強化】は、【魔力吸収】と【魔力放出】みたいに相性が悪いのかもしれない。
それから、僕は【洞見眼】と僕の持ち魔法全てを、順番に多重発動していった、が、どれとも多重発動ができない。
…え?もしかして【洞見眼】は他の魔法と多重発動できなかったりする?そういう制約が付いてるの?確かに今までの魔法とはできることのレベルが圧倒的に違うとは思っていたけど…。まあそれでも十分すぎるほど使えるけどね?
【洞見眼】の思わぬ重大な欠点に気づいて少し気落ちしたが、とりあえず【腕力強化】【脚力強化】【聴力強化】【嗅覚強化】【触覚微強化】を多重発動しておく。
広間に着いた。ちなみに人魂は相変わらず僕の後ろにふわふわと浮かんでいる。
すでに紫吹は先に来ていた。相変わらずだなー、そういえば紫吹って学校にも早く来てたな、早起きなのだろう。
気落ちしてからすぐという事もあり、僕は誰かに聞いて欲しくて【洞見眼】の思わぬ欠点を紫吹に教えた。
あまり紫吹の反応は芳しくなかったけれど…。まあ紫吹にはあんまり関係ない話だよね、確かに。
でも、少し紫吹の敵意が弱まった気がする。【洞見眼】使ってないから詳しく知らないけど。紫吹への信頼が伝わったんだろうか。そういう意味では少し意味があったかな?
紫吹と雑談している間に皆も続々と広間に入ってくる。皆が集まると、程なくして教官達も入ってきた。
今日の勇者育成訓練は、僕以外の皆は引き続きそれぞれが適正を持つ魔法を中心に覚えていく。僕は今日から強化系統ではない魔法も覚える。
今日は、岬は変質魔法の系統を覚え、僕は属性魔法の系統を覚える。
属性魔法の系統は、とりわけイメージが大事だ。もちろん適正もあるが、イメージがしっかりとできていないといつまで経ってもできない。上級な属性魔法の系統ともなるとイメージも難しくなって、覚えられるだけの適正があるのにイメージできないせいで覚えられない人もいる、らしい。ソフィアさんによると。
ああ、言い忘れていたがソフィアさんは属性魔法系統に適正がある。明らかに【氷魔法】の範疇から外れている氷を魔法で出していたし…。【氷結魔法】持ちなんじゃなかろうか。
訓練が終わって、皆と話す前にソフィアさんが大事なことを言った。
いよいよ明後日に王宮の外に出て、僕らの実戦経験のためにダンジョンに行くそうだ。
行き先は、王都の近くにある比較的安全なダンジョンだ。もちろん安全とは言っても魔物は出るし罠などもあるが、1階層目は割と良心的な難易度らしい。
部屋に戻って魔法の訓練をしていたら【触覚微強化】を【触覚強化】に【多重発動6】を【多重発動7】に進化させ、【火魔法】の"ファイアー"を覚えることができた。
魔法の訓練してたら眠気が襲ってきたので寝まーす、おやすみなさい…
訓練の成果は次回に再びまとめます。ちなみに、【多重発動】の数字は間違っていません、昼間の訓練で1上がってます。