10話 王への謁見
柚月………………?
更に一日たった。
柚月は今日も現われない。
金木には、「心配し過ぎでキモい」と言われたが、それでも気になってしまう。
柚月の身に何かあったのではないかと不安になり、ミーシャさんに訊いても答えてはくれない。
今日の訓練には全く身が入らなかった。
夕方、ミーシャに「明日王の謁見がある」と言われた。
「柚月は?」と訊いたけれどもちろん答えてはくれない。
僕の不安は募るばかりだ。
朝が来た。
朝食を食べて、もう半ば習慣と化した朝の準備をすると、広間に集まる。
今日も柚月は来なかった。ため息をつく。ため息ももう何回目だろうか?
真樹は励ましてくれたし、紫吹も岬も如月も心配そうに僕を見つめているが、金木の発する罵倒の前でどんどん気分は沈んでゆく。
一体柚月はどうしたのだろうか?
僕の頭の中は柚月の不安で9割がフリーズしたままだ。
答えてくれないか?柚月………
…タ.ス………ケ… .…テ……
ああ、柚月の声が聞こえる。
ああついに僕は不安で幻聴まで起こし始めたのか………
「はい、みなさん聞いてください」
6人のメイドの代表として、ソフィアさんが声をあげる。
「今から玉座の間に行き、王と謁見します。
失礼の無いよう十分お気をつけください。」
「「「「「「わかりました」」」」」…」
もう王の謁見なんてどうでもいい。
柚月に会いたい。
玉座の間の前まで来た。
みんな緊張して固まっているが、僕だけは緊張のきの文字も感じていない。
歩いていく途中で、ミーシャではなく、他の人に柚月の安否を聞けばいいと気づいたからだ。
気づいてみたら当たり前のことだ。なぜもっと早くに気づかなかったのだろうか。早く訊きたい。
しかし、流石に王の謁見直前に話したら答えてくれるものも答えてくれないと思う。
だから僕は謁見の早期終了だけを祈っていた。
ギィィィ
嫌な音を立てながら玉座の間のドアは開く。
油指したほうがいいんじゃなかろうか?そんな不謹慎なことを考えながら僕は玉座の間に入っていく。
玉座の間は、流石にその名に恥じず豪華だった。
僕らが玉座の間に入り、跪くと王は話し始めた。
「ようこそ、転移者達、儂はこのクロッツの王、カタトロフ・クロッツじゃ。
この度は無理やり君たちを召喚してしまい申し訳なく思っておる。
すまぬ。」
そう言うと、いきなり王は腰を折ってしまった。
「王!?」
僕以外の人は全員驚いている。
「しかし、君たちにお願いしたい。
これも縁だと思って、どうか我らの力になって欲しい。」
僕以外の転移者達はみなすぐさま協力を申し出そうな空気になっている。
そこで、僕は口を開くことにした。
「王、恐れながら申し上げます。」
その瞬間、僕は転移者組から刺されるような視線を受けた。
まるで僕が不味いことを言おうとしているみたいじゃないか。
しかし、僕は気にせず言葉を続ける。
「我々は喜んであなた様のために働く所存でございます。
しかし、一つだけ伺いたいことがございます。
この場にいない我々のもう一人の仲間はどこにいるのですか?」
玉座の間に重い沈黙が流れた。
「君は聞く覚悟があるのか?」
王は問うた。
「はい」
僕は答えた。
「………よかろう。
………
……
…
彼女は死んだよ」
衝撃の事実!