~英雄の自覚~
「うわぁああ……!! 死んだっ……!?」
喉にシャツの襟が食い込み、窒息死したと思った僕は目を醒ますと、『自分』が生きていることに気が付いた。
「よかった……! 今までのは全部、『夢』だったんだ……!」
王宮の命令により英雄の選定に参加させられたこと、200kgの石像を持ち上げる巨漢な戦士、そして――僕が『英雄』に選ばれたこと。
「――なにが、よかったんですの?」
僕は知らない女性の声が聞こえてハッと気が付いた――辺りを見渡すと、自分が全く知らない部屋に居ることに……僕は、女性の声がした方へと体を向ける。
「こんにちは、『英雄』さん」
思わず息を呑んでしまった――宝石のように光り輝く金色の長髪、上品で優しそうな顔立ちをしており、見る者を惹きつけるようなルビーのような赤く美しい瞳――『美女』という言葉にこれほど相応しいと感じた女性は初めてだった、
「私の名前は『エレイン・クルーサー』。 クルーサー一族の長女であり、この国<ヴォーティガン>での『姫』ですわ」
思わず息を呑んでしまった――って僕、息を呑みすぎだろっ!? 主食かっ! ……じゃなくて、ああもう頭が混乱してきた……!
僕は緊張と混乱で喉がヒリヒリと乾く状態で、なんとか冷静を保とうと乱れた呼吸を整えて、落ち着いて状況を把握しようと試みる――。
まず、なんでお姫様が――?
なんで、しがない一般人である僕が、お姫様と同じ部屋にいるの……? しかも気になるのが、僕はベッドの上で寝ており、上半身が『裸』だった――。
「ふふ。 可愛らしい顔して、結構カタイのですね――『英雄』ロットさん」
姫様は柔らかい笑顔を作ってそう告げた――カタイって何が……!? 僕って、もしかしてお姫様に粗相をしてしまったのか……!?
え、てか僕――さっき姫様に何て呼ばれてた……?
「えいゆう……?」
「はい、そうですわ――あなたは、誰も抜けなかったあの『伝説の剣』に選ばれたのですから」
そう言って姫様は、部屋の隅に置かれている僕の胴体より剣幅が大きい『剣』を指差していた――それは王宮で抜いた『剣』と同じ物だった。




