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アーサー王と11人の子供たち  作者: 尾十神誠
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~英雄の終焉~⑤

「僕は何度も人間を滅ぼそうとしたが、ことごとく邪魔された――『英雄』……いや、クルーサー家の一族たちに……!!」


 魔王の拳が壁に叩きつけられると、ドゴォン! っと音を立てて王宮全体が震える。 壁にヒビが入り、パラパラとコンクリートの破片が床に落ちた。


「だから僕は決心した――!! 僕に危害を加える『英雄』が生まれる血筋の者達を抹殺しようと――!!」


 魔王は再び手で合図をすると、教壇に立っていた牧師の恰好をした年寄りが俺を襲ってくる――何の武器も持たずに突撃してきたので、俺は盾で振り払う。


 すると牧師が被っていた帽子が落ちて、俺は気付く――。


(この顔、どっかで見たことあるような……!?)


「その為に『魔王』の名を捨て人間として、クルーサー家に従者として侵入した――預言者として絶大な信頼を得た僕は、ちょっとした言葉で操ることができた」


 俺は牧師の顔をじっと観察していると、どことなくエレイン姫の瞳や鼻筋が似ていることに気付いて、思い出した――彼はこのヴォーティガンの先々代の王様、『ユーサー王』であることを。


「例えば、『忌み子』として生まれたモルドを殺さなければ災いをもたらす――とかね。 その言葉を信じたユーサー王は傑作だったよ。 血眼になって、罪のない子供を殺そうとしているのだから」


 俺の中にあるモルドの記憶――幼少期のころに理不尽な殺害宣告をされて、日々逃げ惑う生活を思い出す。 誰も頼れない、誰も助けてくれなかった辛い記憶。


 モルドに殺害の命令を下したのは、魔王に操られた『ユーサー王』だったんだと理解できた――俺の中にある怒りの感情がフツフツと沸いてくる。


「そのせいで戦争が起きてしまい、自分と最強の剣士を死なせてしまうなんて、爆笑ものだろ?」


 魔王は当時のことを思い出したのか腹を抱えて笑う――そして鹿爪らしい顔に戻って、瞳には『怒り』を宿していた。


「けど、僕の策略がユーサー王の息子である『アーサー』にバレてしまった。 正確には、人間性かな? 魔王なんだけど。 僕の本性を知ったアーサーはホントに手こずったよ……いや、現在進行形で困っている。 さすがは英雄だね」


 頭をがしがしと掻いてから、短いため息をつく魔王――そして俺に向かって、殺気を込めた眼光を放つ。


「英雄ってホント、僕の邪魔ばかりしてくる……今もそうだ。 本来ならば、魔物たちがこの国に攻め込んできてゲームオーバーだったはずなのに、それを君が阻止した――」


「だから君には死んでもらうことにしよう」


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