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アーサー王と11人の子供たち  作者: 尾十神誠
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~英雄の覚醒~

 騙された――。


 俺の『人生』は散々なものだった。


 復讐に憑りつかれ、人生を謳歌することを拒絶した末路がこのザマだ――滑稽だ。 哀れだ。


 俺は何の為に生まれた? 存在理由すらなかったのか?


 俺が『忌み子』として扱われたのは、『奴』が存在したからなのか?


 ――分からない。


 何が正しくて、何が悪だったのか……。


**********


 俺の父『アーサー』は、ヴォーティガンの王であり、偉大な人物だった――しかし、彼は一つミスを犯してしまった。


 自身の妻である『グィネヴィア』を愛していたはずなのに、いつの間にか敵国のスパイである『モルゴース』という女性を抱いてしまったのだ。


 モルゴースは変身魔法で、グィネヴィアに化けていた――そして、彼女は一人の男の子を身籠る。


 それが『俺』だった。


 モルゴースの悪事がバレると、アーサーは彼女を許さなかった――しかし、身籠っている子に罪はないということで、モルゴースは『俺』を出産した後に『処刑』されてしまう。


 母親の顔を『俺』は知らない――だから、母親が殺されたという実感がなくて、アーサーを恨むことはなかった。


 むしろ、『裏切り者の子』として市民から嫌われていた『俺』を、アーサーは実の子のように可愛がってくれて、嬉しかった――。


 しかし、そんな幸福も長続きしない。


 アーサーの正妃である『グィネヴィア』が男の子を出産し、『俺』に対しての愛情が薄れていくのを実感してしまう――そんな『俺』を不憫に思ったのか、グィネヴィアの姉である『ヴィヴィアン』の娘――『エレイン』が、『俺』に付きまとうようになる。


 たかが、2歳年上というだけなのに、『俺』に対してお姉ちゃんぶるアイツは鬱陶しかった――けど、そんな奴に命を救われるとは、この時は思いもしなかった。


「奴を殺せーー!!」


 突然、『俺』が5歳ぐらいになった頃、気でも狂ったかのように、アーサーの父である『ユーサー』が、『俺』に対して殺意を抱き、処刑を促すように部下に命令していた。


(なんで……!? どうして……?)


 忌み子として嫌われていたが、他人を傷つけることなく、まっとうに人生を歩んでいるつもりだった――それなのに、なぜ自分は殺されそうになっているのだ?


 分からない――そして『俺』は、訳の分からないまま逃げ惑うしかなかった。


 誰も頼れる人がいない――信じれるのは自分だけ……そう思いながら、小さい体を駆使して、上手く兵士たちから身を隠していた。


 何日経過しただろうか――王宮から飛び出し、命からがら逃げだして、お金もなく食料を盗み食いしてから数日後――『俺』の前に彼女『達』は現れた。


「もう……! こんな所に居たのね」


 貴族が着る純白な服をボロボロに汚しながら、ぱあっと花が綻ぶような笑顔をする彼女――『エレイン』がそう言ったのだ。


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