~英雄の贖罪~⑫
「くそっ……! 間に合わなかった……!!」
僕は牢屋から脱出し、王宮へと辿り着くと、そこは火の海となっていた――王宮に仕えている兵士たちが、体に剣や槍が突き刺さっており、沢山の人たちが息絶えていた……。
(くそ……! 敵はどこに行ったんだ……?)
眼前にあるのは幾つもの死体ばかりで、兵士たちを殺した敵が何処にも居ない。
「ニーナ……! 手分けして探そう……!」
「うん、分かった……!」
僕たちは二手に別れて、この惨状を作り出した敵を探そうとする――その時、僕はあることに気づいた。
(あ、そういえば、武器を持っていない……!)
仮にも『英雄』と選んでくれた『伝説の剣』を僕は所持していないことに気が付く――重くて振れないとはいえ、あれだけ『盾』として扱うために修行してきたのだ……きっと役に立つはず。
僕は『伝説の剣』を最後に触っていた時のことを思い出す――すると、王宮の修練場が浮かび上がる。
(そうだ……。 僕はモルドに変身する前、ベドウィルさんの修行から逃げ出してきたんだっけ……)
師匠の期待に応えきれず、自分の不甲斐なさに嫌気がさして、修行を投げ出してしまった自分が凄く惨めだった。
(ベドウィルさんに会ったら、まずは謝ろう……)
自身の愚かさに気づいた僕は、そう思った――そして、謝る前にやるべきことがある。 半年間、僕を鍛えてくれたベドウィルさんの成果をみせるために、この反乱を僕が止めるんだ……!
そんな想いで、王宮の修練場に着くと、自分の目を疑った――。
修練場の真ん中には、全身『黒の鎧』を纏っている『謎の人物』――そして、傍らには、王国最強の剣士と謳われていたベドウィルさんが瀕死の状態で倒れていた――。
「お前……! その人に何をしたっ……!?」
僕は歯が割れるほどキツく奥歯を噛みしめながら、謎の人物に威嚇する――しかし、謎の人物は何の反応も見せず、ただ直立しているだけだった。
(……敵じゃない、のか?)
僕が近づいても謎の人物は警戒しないので、ベドウィルさんをこんな目に合わせたのは別の人間なのか……?
「ベドウィルさん……!! 大丈夫ですか……!?」
倒れているベドウィルさんを抱きかかえると、彼の呼吸が段々と弱々しくなっていることに気づき、意識を呼び戻そうと必死に叫ぶ――。
「――――小僧、逃げろ……」
意識が戻らない中でベドウィルさんは僕に警告してきた――何から、逃げるんだ……?
そう疑問に感じていると、先程から全く動いてなかった『黒の鎧』が、いつの間にか長剣を手にして僕に向かって振り下ろしてくる――!!
「……っ!!」
僕はベドウィルさんを抱えたまま、横に転がり、間一髪、回避することができた――。
「やっぱり、お前がベドウィルさんを――!!」
黒の鎧が手にしている長剣は、ベドウィルさんが愛用している物だった――それを確認した僕は、再び敵愾心を抱く。
(僕の武器は、どこにある……!?)
奴と戦うために、盾として扱っている『伝説の剣』が必要だ――そう思って辺りを見渡すが、どこにも見当たらなかった。
(おかしい……! なんで、ここにないんだ……?)
あんな重たい物を持ち運ぶ理由なんて、どこにもないはずだ――基本、『伝説の剣』は、『盾』としての扱いを修練するためにこの場に置いてあり、持ち運ぶときは、国民からの依頼があった際に、使用する場合のみだ――。
「くっ……!」
僕が武器を手にしていないのをお構いなしに、『黒の鎧』は次々と剣戟を繰り出してくる。 それを避けながら、僕はベドウィルさんを安全な場所へと運び出そうとする――すると、ベドウィルさんの腰に小刀が帯刀されていることに気付いた――。
(これで、戦うしかない……!)
そう思った僕は、ベドウィルさんの小刀を拝借して、逆手に持って構えた――。




