~英雄の贖罪~⑥
「うげぇえっ!?」
僕は『マーリン』から貰った、強くなれるという『魔法の薬』(赤い液体)を興味本位で飲んでしまった――すると、その『魔法の薬』は、辛いのではなくとても『苦い』味がした。
「な、なんだこれ……!? にがっ……!」
セロリが腐ったような苦みが僕の舌を刺激した。 涙目になりながらも、試験管に入った液体を全て飲み干すと――風邪を引いたように、急に顔が熱くなり、頭がボーっとしてきた……。
(なん、だか……眠たく、なって……)
睡魔に襲われて、重くなる瞼に逆らえず、僕は倒れるように眠ってしまった――。
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「……ぶん! ……やぶん!! おやぶん!!」
ん……? 誰だろう、この人……。
おぼろげな意識の中で瞼を開けると、見知らぬ人が僕の肩をゆすりながら何度も叫んでいた――てか、ここはどこだ? さっきまで街中に居たのに、今は見たことない裏路地に座っていた。
「親分! しっかりしてくださいよ!」
親分……? 僕は後ろの方を見るが、そこには壁しかなかった……どうやら、僕に言っているらしい。
「えっと……? 人、違いじゃ……?」
「何言ってんすか! こんなコワモテな男性は親分しかいないですよ!」
寝惚けないでください、と目の前の見知らぬ人にそう言われてしまった――なんで今日は、こんなにも見知らぬ人に話しかけられるのだろう……?
夢を見ているかもしれない――そう思った僕は、頬を思いっきりつねるが目の前の現状は変わらない。
「……にらめっこすか? 今日の親分は、なんか変すよ!」
うん、僕からしたら、初対面のはずの君が妙に馴れ馴れしく話しかけてくるのが変に感じるんだよ……そもそもコワモテと言われたのは人生で初めてのことだ。
僕はどっちかというと、犬で例えたら『ブルドック』ではなく『チワワ』の部類に入る方だと思っている。
どうやって、彼が人違いをしているという事を納得させるにはどうしたらいいのだろう――と考えていると、見知らぬ彼は僕の肩を強く掴む。
「それより、こんな事してる場合じゃないですよ! 早く、逃げなきゃ!!」
「逃げる……? 誰から?」
「はぁ!? 何言ってんすか、サツっすよ! サツ!」
サツ……って、『警察』? えっ、なんで!?
僕はもしやと思って、自身のポケットとかを探るが何も入ってなかった――。
(ふぅ、よかった……。 てっきり、さっき『パンティー』を拾ったから、僕が下着泥棒扱いされてるかと思った)
「なんでこの状況で、安心した顔できるんすかっ!? 早く、逃げましょうよ親分!」
見知らぬ彼が必死に逃げることを提案してくるが、罪に心当たりがない僕は戸惑うことしかできない。
「えっと……? 僕ら、何か悪いことしたっけ?」
「はぁっ!? ホントに親分、どうしたんすか!? 頭でも打ったんすか!?」
僕は身の覚えもない罪(そして彼)を勝手に押し付けられ、まったく状況が整理できないので彼に聞いてみると――返ってきた言葉に驚愕した。
「俺らは、『反乱』を起こすために武器を『強奪』したり、『密輸』してるんですよ!!」




