~選ばれし英雄(?)~②
この国は『始まりの街』<ヴォーティガン>と呼ばれている。
ここでは、中心に王宮など貴族たちが住み、円の外側(つまり国境に近い)ほど階級が低くなり、一番外側が奴隷として扱われている――先程、『魔王』について話し合いが行われた区域は、庶民たちが生活していく地域であった。
階級が庶民以上から教育を受ける義務があり、週に三回ほど授業が行われている。 庶民たちが住むこの区域では、勉強を学ぶための充実な設備は整っておらず、大木の下で涼しい風を浴びながら授業をすることが多い。
今日の授業は「『魔王』について」という話を最後に、子供たちは解散されたのだが、『15歳以上』である『ロット』と『モルド・アッカーマン』だけが、先生に呼び出しをされていた――。
「……先生、俺たちを呼び出した理由ってなんですか?」
呼び出しを受けて数刻経過したというのに、何も要件を話さない先生にしびれを切らした赤髪の少年モルドが眉根を寄せながら問いただしていた――一方、同じく呼び出しを受けていたロットは、イラついているモルドにビクビクしながら視線をキョロキョロとして、どこか気まずそうに立っていた。
「……はぁ。 本当はこんなこと伝えたくないのですが、『モルド・アッカーマン』、『ロット』――あなたたちに王宮から招集を受けています」
先生の言葉を聞いた2人は、目を丸くして驚いていた。
「……どうしてですか?」
モルドは苛立たしげに腕を組み、王宮の思惑を追求する――そして先生の返答に驚愕した。
「『魔王』が目覚めたからです」
「「っ!?」」
先程まで、『魔王』の詳細が分からないといった感じで話していた先生が、「『魔王』が目覚めた」と断言したので、2人は先生の真意が理解出来なかった。
「……正しい情報を知っているからといって、必ずしも伝えていいわけではありません――無意味に子供たちを怖がらせたくないのです」
先生は面を伏せ、悲しそうに唇を歪めていた――その様子を見たモルドは、先生が子供たちを騙したくて嘘をついた訳ではないと悟った。
「……本当はアナタたちにも伝えたくはなかった――しかし」
「『英雄』の選定のために仕方なかった……か」
先生の言葉を遮ったモルドは、自分たちがなぜ呼び出されたのか、その真意にいち早く気付き先生を驚かせていた。
「はい――王宮から、各地から『15歳以上』の男性を招集せよ、という命令が下っています」
それを聞いたモルドは、にっと白い歯を覗かせて笑った。
「先生――そんな悲哀な顔を浮かべる必要はありませんよ。 俺が『英雄』になった暁には、全て殲滅してやりますから――」
そう言ったモルドの瞳は、轟々と怒りを燃え盛らせていた――その様子を見た先生は、少なからず子供が怯えていないことに安堵する。
「ロット――あなたは大丈夫ですか?」
先程から一言も喋らず、身動き一つ取らない蒼髪の少年ロットに様子を伺う――しかし、返事は返ってこない。
「……ロット?」
受け答えをしないロットに不安を抱いた先生は、彼に近づいて顔を確認すると、口から泡を吹きながら白目を向いていた――。
ロットは、「魔王が目覚めた」というあまりの恐怖に、顔を真っ青にして直立しながら気絶していたのだった――。




