~英雄の自覚~⑳
僕らがひと騒動起こしてから明け方になると、カストディアンヘルメットを被った警察達がフリーク・カンパニーの連中を逮捕して連行してくれた――。
「ありがとうございます、ベドウィルさん」
人獣の女の子を救ってくれたこと、フリーク・カンパニーの情報をかき集めて僕に教えてくれたこと――そしてピンチの時には助けてくれたこと。
ベドウィルさんがいなかったらと思うと、背筋がゾッとする……。
「……ふん。 それはお互い様だ」
「えっ?」
「儂が魔法でやられそうになったとき、貴様が守らなければ危うかった……まさか、強度の硬さを誇る『伝説の剣』を盾にして使うとは――礼を言う」
「いや……そんな、僕なんて――」
「謙遜するな。 傲りは良くないが卑下することに慣れると、いつか自分を見失うことになるぞ――それに見ろ、この光景を」
僕はベドウィルさんが指差した方へと視線を送ると、そこにはフリーク・カンパニーで奴隷として扱われていた人達が、家族や友人、恋人などに再会できた喜びを噛みしめていた――彼らは、フリーク・カンパニーの悪人が捕まったことで『自由』を得た人達だった。
「ありがとう……、本当にありがとう! 俺は、身に覚えのない借金を奴らに背負わされて、家族を巻き込まないために奴隷にされてたんだ……! 救ってくれて、ありがとう……!」
「私は父が危篤状態で、助けるためには莫大なお金が必要だって騙されてて……気が付いたときにはもう奴隷になってて……! 助けてくれて、ありがとうございます!!」
ありがとう、ありがとう……そう何度も僕らに向かってお礼をする元奴隷の人達――僕はその光景を見ると、思わず涙が溢れそうになった。
(あれ……? なんで涙が――)
僕は自分の感情の整理がつかないまま、胸からこみ上げてくるものを必死に抑えつけようとしていると――。
「アリガ、トウ!」
僕が最も助けたかった『人』――人獣の女の子は、とびっきりの笑顔で僕にお礼を言ってくれた。
ああ、そうか――あの日、あの場所で虐められてた彼女と出会って、逃げることはせず『英雄』であろうとした自分のことを誇らしく思っているんだ。
彼女のこんな素敵な笑顔が見れたのだから。
「……こっちこそ、ありがとう――君のおかげで、これからどんな自分になりたいのかが分かったような気がする」
人獣の女の子は、なぜ自分がお礼を言われたのか分からないといった感じで首を傾げていた――そんな可愛らしい仕草を見た僕はフッと柔らかい笑顔を作って彼女に告げる。
「君はもう『自由』だ――これからは自分の好きな場所へと行けるよ」
僕はそう言い残して王宮に戻ろうとすると、ベドウィルさんは逡巡した後、僕を追うようについてくる――1人取り残された人獣の女の子。
「……いいのか?」
隣で歩くベドウィルさんが僕に聞いてくる。
「ええ――人獣である彼女には、ここでの暮らしはきっと辛いですから……」
ヴォーティガンを出て、同じ種族と暮らすほうが彼女にとって幸せだと思い、僕は後ろ髪を引かれる思いで帰路につく――。
すると。
「……っ!! なんで……、君はもう『自由』なのに――」
誰の『奴隷』でもない人獣の女の子は、僕を離さないように背中に抱きついていた――。
「アタシの……スキナ、バショ……!」
頬を朱に染めて、胸の思いを伝えてくれた人獣の女の子――彼女の言葉を聞いた僕は、ほっと胸を撫で下ろして感涙する。
「――これからもよろしく」
こうして僕に仲間ができた――。




