~英雄の自覚~⑬
「い、一体なにをする気ですかっ……!?」
人の身長ほどの長さである『剣』を振りかざすベドウィルさんに、不安を感じた僕は質問するが返答はなかった。
「っ……!!」
ベドウィルさんが勢いよく剣を振り下ろすのを止められない――思わず目蓋を閉じてしまうと、ガキィン!! といった、鉄と鉄が激しく打ち付けられた音が辺りに響いた。
「――チッ……。 魔法がかけられている……」
どうやら、ベドウィルさんが剣で斬ろうとした部分は、人獣の女の子の首にかけられている首輪だったらしい――てか、剣で鉄が斬れるものなの……?
「あ、あの……、これからどうすれば?」
人獣の女の子の首輪は未だに外すことは適わず、ただただ彼女の苦しみだけが増していく。
「……ふむ。 魔法をかけた主――この場合、この娘を奴隷として買った奴だろうな……そいつに解いてもらうしかあるまい」
ベドウィルさん曰く、この魔法は主人から一定の距離を離れた奴隷を逃さないように施した魔法らしい――なんて残酷なんだ……人獣をペットだと認識している証拠に腹が立つ。
「……どうやって、ソイツを探せばいいですか?」
「探し出してどうする?」
僕の質問に質問を返してくるベドウィルさん――分かっている……、奴隷は買われた時点でその人の『所有物』扱いとなり、他人がどうこう口出ししようが関係ない。
それでも。
「――ソイツに『一言』いってやりたいです」
僕が真剣な顔をしてそう告げると、ベドウィルさんはにっと白い歯を覗かせて、クックックと笑い出した。
「――いいだろう。 ワシの全情報網を駆け巡って、全力で探し出してやろう」
そう言ってベドウィルさんは、忌々しいまでに顔を笑いの形に歪めた――正直、どっちが悪人か分からないほど怖かった……。
「あ……、それともう一つお願いがあります」




