~英雄の自覚~⑥
この場合、『英雄』ならどんな行動をとるのだろう――。
①イジメはよくないと助けに行く
②見て見ぬフリをして、その場を立ち去る
③助けを求める
選択肢を並べるだけで、一目瞭然だ……『英雄』ならきっと、①の選択肢を選ぶだろう。
僕は、この時理解した――『英雄』に僕が相応しくないのではなく、僕の行動が『英雄』に相応しくないということに。
(僕は…、僕は……!!)
今まで自分は落ちこぼれだからという理由で逃げてきた事も、本当は努力をすれば何かを成し遂げられたかもしれない……なのに、失敗を恐れて何もかも諦めていた。
そんな……そんな僕なのに、『伝説の剣』は僕を選んでくれた――それに裏切りたくない、と思った僕は――。
「や…、やめろっ……!」
身を潜めていた身体を隠すことはやめて、イジメていた大人たちの前に立ち塞がる――すると、さっきまで不吉な笑みをひけらかしていた大人たちは、怪訝そうな顔で僕を睨んできた。
「なんだぁ、お前…? そんな化け物を庇って、善人気取りか、あぁん?」
「おいおい、お前も汚い格好してんなぁ…さては庶民だな? 学校で庶民は貴族に逆らってはいけません、って習わなかったのか?」
僕らより明らかに高貴な服装をしている彼らは、どうやら『貴族』だったらしい――この街の法律では、身分が高い者ほど優遇されている……でも。
「そ、それでも……、いじめていい理由ないだろ……!!」
目の前の大人たちに怯える僕は、歯の根がカチカチ鳴りながらも、自分の正直な想いだけはなんとか絞り出した。
「あっそ……、ならお前もそいつと一緒に痛めつけてやるよ…!!」
そう言った大人たちは、僕を殴ったり蹴ったりしてくる――僕は、人獣の女の子を助けようと両腕で覆いかぶさり、必死に大人たちの暴力から守ってみせた――。
「…………っ!!」
蹴られた箇所からは、骨の軋む音が聞こえ、殴られるたびに呼吸は乱れて、空気を求めて喘ぐたび激しく痛む――。
「チッ……今日の所は、見逃してやるよ」
「人獣の女……! お前は奴隷なんだ……自由なんてあると思うなよ?」
パンチ27発、蹴り15発を僕に食らわせた彼らは、いたぶることに疲れたのかそう言い残してこの場から立ち去っていった――。




