大学3回生、4月
4月。
入学から半月が経ち、美雨ちゃんも慣れたようだ。
俺は大学では、サークルには入っていない。
美雨ちゃんもサークルには入らないようだ。
美雨ちゃんが取ったコマは、俺の時間割と似ていて、一緒に行ったり、帰ったりする事も多い。
結局、大学でも、昼とかは俺と一緒にいるし、せっかく頑張って入ったのに・・・また同じ流れになりそうだ。
「美雨ちゃん、意中の人には会えたの?」
「はい!」
会えたらしい。
心配いらないのかも知れない。
「好きな人とお昼一緒に食べたりしないの?」
「あの・・・お昼、良く御一緒しています」
何・・・だと・・・
ほぼ毎日、俺とお昼食べている様な・・・?
「話せた?」
「はい!」
高校の時よりは進んでいそうだ。
意外と順調そうだ。
・・・胸がチクリとする。
「もう、想いは伝えられたの?」
「駄目です・・・自信が無くて・・・今の関係すら失ってしまいそうで・・・」
美雨ちゃんが、目を伏せる。
く・・・健気だ。
やっぱり俺は、美雨ちゃんを応援する・・・!
俺の幸せより、美雨ちゃんの幸せだ。
「美雨ちゃん!」
美雨ちゃんの肩を掴み、真っ直ぐに目を見る。
「は、はい!」
「美雨ちゃん、君の想い人を教えて欲しい。本人には内緒にして、さり気なく成就する様に、動くよ」
美雨ちゃんは顔を真っ赤にして、
「だ、駄目です!お兄さんにだけは教えられません!絶対に本人に伝わります!」
あれ?!
俺、信用無さ過ぎじゃないか?
美雨ちゃんの耳元で、
「じゃあさ、せめて名前だけでも教えてよ」
美雨ちゃんは、くたっと力が抜けた様に、俺に身体を預けつつ・・・
「その・・・誠也です」
「まさや・・・」
漢字は分からないけど、俺と同じ読みだな。
「前に苗字聞いたから・・・朧月まさや、それが美雨ちゃんの想い人・・・」
「ふ、はわああああああ?!」
美雨ちゃんが真っ赤になって、涙目で見上げてくる。
「ちなみに、男?」
「はい・・・」
むむ・・・
と言うか、知り合いに同姓同名の男性っていないんだけど。
美雨ちゃん、俺の交友関係を過大評価し過ぎだ。
「・・・難しいな・・・」
美雨ちゃんはぷくーと膨れると、
「当然です。分からない様に細心の注意を払ってるんですから!分かって貰っては困るんです!」
困るらしい。
「お兄さんこそ・・・その・・・付き合ってる女性とかいるんですか?」
美雨ちゃんが上目遣いに見上げてくる。
超絶可愛い。
「居ないよ」
美雨ちゃんの顔が嬉しそうになる。
恋人居ないのそんなに嬉しいですか?!
お仲間意識?
「ただ、付き合いたいと思っている女の子は、いる」
しゅん
振っていた尻尾が下がる様に幻視された。
美雨ちゃんが、手を可愛くにぎにぎさせながら尋ねる。
「あの・・・どんな奴ですか?」
奴?!
「そうは言っても・・・」
告白のチャンスでは有るのかも知れないけど。
断られるのは確実だ。
そうなれば・・・今の生活は崩れてしまう。
美雨ちゃんの両親や、妹の信頼も裏切る事になる。
「ごめん。美雨ちゃん・・・君にだけは、言えない」
「・・・そうですか」
ごめん、美雨ちゃん。
せめて・・・美雨ちゃんが一途に想っている、意中の人との件が片付けば・・・
「あの・・・あの、背丈とか・・・髪の色とか・・・!」
そのくらいなら・・・
「背丈は、丁度美雨ちゃんくらいだね。髪は・・・美しい雨、って名前の通り、透き通った青の、流れるような奇麗な長髪だね」
「うう・・・キャラが被っている気がします・・・」
恨めしそうに、美雨ちゃんが言う。
そりゃ本人だからね!
「あの、あの・・・名前、教えて下さい!」
駄目に決まってるでしょ?!
美雨ちゃん、本人じゃん。
絶対にばれる訳にはいかない。
「美雨ちゃんには教えられないよ」
「うう・・・」
美雨ちゃんが悲しそうな声を出す。
・・・ひょっとしてあれか。
俺と同じで、応援してくれようとしたのだろうか。
美雨ちゃんは、俺の目を見つめ、
「私・・・負けませんから!」
宣言する。
・・・これは・・・どっちが先に恋人を作るか、勝負、的な?!
いや、美雨ちゃんが意中の人と結ばれた時点で、俺は自動的に失恋だからね?
「俺は・・・負けても良いと思っているよ。俺は、美雨ちゃんの方が大切だから、ね」
俺はそう言うと、そっと美雨ちゃんを抱きしめた。




