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う~ん………なんか凄そうな名前のスキルだな、とにかく他にもあるか探そう。
結果、他にもスキルが見つかったが、“大陸共通言語” の一つだけだった。
もっとよく知るためスキルのみに集中してみたら、どうやら大陸共通言語スキルとは、俺が赤ん坊の頃に苦労して覚えた言語のようだ。
まぁ、予想は出来ていたけどね…… それより、この物騒な名前のスキル“魔力支配”について詳しく調べてみよう。
だけど、このスキルについては分かったことは “魔力を支配” し “魔力で支配” する、ただそれだけだった。
どういう意味だ? “魔力を支配” は、そのままの意味だと思うけど、“魔力で支配” とは何なのだろうか? 何を支配するというのか…… もしかして、魔力で触れたもの全てが対象になるって事か?
ダメだ、疲れてて考えが纏まらない。今日はもう寝よう、明日からこのスキルで何ができるか、色々ためしてみるか。
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この数ヶ月、魔術言語と術式の構築方法を習い、夕食後スキルの検証をしながら過ごしてきた。
この “魔力支配” だが、それなりに使いこなせるようになった。いつものように椅子を使い実験した結果、このスキルは魔力で触れているものを支配し操る事が出来るようだ。
自由に動かしたり、浮かせたりは今までやっていた事だが、加工したり、ばらばらに分解する事もできる。
これは物だけでなく、人にも適用する。
俺はこれを利用して自分の体にある、火傷のような痕を消そうとしたが、結果は失敗だった。一時的には消えるが、すぐに戻ってしまう。
左目を治そうしたり、両腕を生やそうともしたが、どれも失敗に終わった。
傷は治すことは出来るのに……まるで、今の姿が正常なのだと言われている気がする。
まぁ、出来ないものは仕方がない、まずは出来る事を見つけなければならない。それと俺が魔力を視る事が出来るのはこのスキルの力だということも分かった。
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その日は魔道具についての授業を受けていた。
「それじゃあ、魔道具をつくるには魔石が必要なんですか?」
「そうですね、魔石に込められている魔力を動力源として動く魔道具もあります」
「魔道具にも色々あるんですね」
「魔核に術式を刻むだけでも魔道具と呼べますからね、定義が広いんですよ」
「魔核? 魔石とは違うんですか?」
「はい、違います。魔石は鉱石の一種で採掘して採るもので、魔核は魔物や魔獣から取れます」
「魔物と魔獣はどういった違いがあるんですか?」
「魔物はですね、人間に害を為すゴブリンやオーガといった知恵のあるもの達のことを言います。方や魔獣は、普通の動物が濃い魔力に当てられ続け、変化したものです」
「なるほど………魔石や魔核は魔道具にとって、欠かせない物なんですね」
「そう覚えてくれれば十分です、品質の高い物ほど蓄積している魔力量も多く、強力な魔道具になります」
「早く作れるようになりたいです」
「それには、術式の構築をもっと学ばなければなりませんね」
「はい………がんばります……」
苦手なんだよなぁあれ、数学で数式を覚えさせられる感じで。
「ライル君はどんな魔道具が作りたいですか?」
突然アルクス先生がそんな事を聞いてきた。作りたい魔道具か………
「僕は、たくさん物が収納できる鞄が作りたいです」
「へぇ!凄いですね、古代の魔術を再現すると言うのですね」
「え? 昔にはあったんですか?」
「はい、ライル君がしようとしているのは空間魔術の一つですね。本来の鞄の用量を超えても物を入れる事が出来る、それは鞄の中の空間を魔術で、拡張するということです」
「空間魔術ですか……何だかむずかしそうですね」
「研究はしているのですが、まだまだ実用には至りませんね」
「物を沢山入れる事が出来るスキルってないんですかね~」
「ありますよ? 空間収納というスキルが、持っている人は少ないですけど」
あるんかい! ん?でもまてよ………
「先生、空間収納を持っている人の意見を参考には出来ませんか?」
「残念ながら、前にそれを試して失敗しています。空間収納は先天的スキルですから、本人も完璧に理解しているわけではないんですよ」
「だから説明も出来ない……と」
「はい、その通りです」
わかるな~、その気持ち……俺も似たようなもんだしな……そう思いながら、クラリスが置いていったクッキーを一つ食べた。
「空間に収納するってどういう事なんですかね?」
「魔力で空間に干渉して自分専用の亜空間を作り出し、その中に物を入れて管理するらしいです」
「それはどんな物でも入れる事が出来るのですか? 例えば、人間とか」
「結論から言えば不可能です。生物に限らず、魔石や魔核、常時発動型の魔道具など魔力が籠っている物は無理です」
「それは何故ですか?」
「魔力の波長は一つとして同じものは無いと言われています。そして波長が違う魔力同士は反発して相容れる事はありません。亜空間へ物を入れるには、一度その人の魔力を通過しなければなりませんので、無理なんです」
「あれ? でも先生は僕に魔力を流して色々と調べてましたよね?」
「本人に受け入れる意志があれば問題はありませんが、余りいい気分ではなかったでしょう? 後は無理矢理押さえ付ける方法がありますが、おすすめはできませんね。対象魔力の三倍以上の魔力量が必要になりますので」
う~ん……別にそんな嫌な感じはしなかったけどな………対象の三倍以上の魔力量か、それはおすすめ出来ないのは納得だな。
しかし、魔力で亜空間をねぇ、なんでもありな力だな……でも、もしかしたら俺のスキルでも同じような事が出来るかもしれない。
その夜、いつもの椅子で実験してみることにした。
でもよく考えたら亜空間ってどうやって作るんだろうか?
とにかく俺は椅子を魔力で包み込み、何処かに仕舞い込むイメージをした。
すると、まるで魔力に溶け込んでいくように、椅子が消えていった。
お? やった! 成功だ!! ……ん? 成功か? 椅子は何処に消えたんだ?
確か先生は魔力を通って亜空間へ物を入れると言っていた。だとすると、魔力は出入口の役割を果たしている訳で………でも俺は亜空間なんか作ってはいない。
なら、俺の魔力を通って行き着く先は………もしかして!
俺は目を閉じて集中した……自分の魔力の行き着く先、魔力の保存場所にそれはあった。
魔力で出来た、だだっ広い場所に見馴れた椅子がぽつんと置かれていた。
良かった、ちゃんと有って……今度は椅子があった場所に魔力を伸ばし、取り出すイメージをしたら、そこに椅子が現れた。
なるほど、どういう原理か分からないが、俺自身の魔力の中に収納したと言うことか。
これは、なかなか便利だな、空間収納ではなく “魔力収納” と言ったところかな?