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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十八幕】公国の悪意と王国の変化
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 一先ず、カーミラに関しては他種族に任せるとして、此方は魔王や公国、インファネースの独立と問題は山積みである。議論が尽きない会議に皆が時間を忘れていると、ノックの音が室内に響いた。


「会議中失礼致します。もうそろそろお時間で御座いますので、準備のほどをお願いしたく存じます」


 室内へ入ってきた使用人が恭しくお辞儀をするのを見て思い出す。今日、国王様は王都へお戻りにならなければならない。窓から外を確認すれば既に日は高く、昼を過ぎていることが分かる。


「ブフ、そうであったな。ご苦労、下がってよいぞ」


 領主の言葉に使用人が退室し、議論で熱くなった空気は落ち着きを取り戻す。


「陛下、充分なおもてなしも出来ず申し訳ありません。次が御座いますなら、もっと落ち着いて過ごしてもらえるよう努力致しますわ」


「いやいや、存分に堪能させてもらった。祭りの賑わいに住民の活気、そして沢山の来客者。この都市が独立してどう変化するのか今から楽しみだよ。ありがとう、シャロット嬢。そして近い内にまた世話になる」


 予期せぬウェアウルフ騒動により、満足に歓待が出来なかったと謝罪するシャロットに、国王様は笑顔で礼を述べた。


 こうして朝から始めた会議は終了し、急いで国王様の帰還準備に取り掛かる―― とは言っても事前に用意は済ませており、後は事に移るだけなのでそう慌てる必要はない。


 ご来訪された国王様がお帰りになるのだから、インファネースにいる人達にも分かりやすく伝える意味を込めて、パレードを模して派手に帰還願おうと決めていた。


 やっぱり祭りと言えばド派手なパレードでしょ!! ―― 決め手はそんなアンネの安易な提案からだったが、意外にも国王様と王妃様がノリノリで賛成してくれた。





 昼過ぎの街中を、大人数の護衛騎士に囲まれた豪華な馬車と音楽隊が練り歩きながら街の外へと出ていく。当然ながらその馬車に国王様は乗っていない。本人は少数の護衛と共に転移魔術で第二防壁の門前に移動していた。ウェアウルフがいなくなったとしても危険がなくなった訳じゃないからね。


 唯一国王様が不満を持ったのは、そのパレードに参加出来なかった事だけ。命を狙われてるんだから自重して下さいよ。



「私の決断でこれからこの国は荒れ、インファネースにもどう影響してくるか分からない。くれぐれも注意を怠らぬように…… この街で静かに暮らせる日が待ち遠しい。それとライル君、もしよければ王都へ来て力を貸して貰いたいのだが、どうかね? 」


 見送りに来ていた王妃様と各商店街の代表達、領主やシャロット、第二王子であるコルタス殿下と一緒にいる俺に、突然国王様から指名され内心驚いた。


「私の、ですか? それは今すぐにでしょうか? 」


「いや、此方も諸々と準備しなければならない。時が来たら、君から貰ったこのマナフォンとやらでディアナに連絡しよう。その時に王都へ来てくれると助かるのだがね」


「…… それがインファネースの独立に必要ならば、謹んで国王陛下のお力となりましょう」


 少し迷ったけど、インファネースの為ならばと引き受ける事にした。それに王様の頼みを正面切って断る度胸は生憎と持ち合わせておらず、権力に弱いのは前世から変わらない。


 俺の返答に国王様は満足気な様子で頷き、門の外で展開した転移魔術で護衛と一緒に王都へ帰って行った。





「国王様は国が荒れると仰ったが…… もしや、貴族派と対立して国内紛争に勃発するなんて事も? 」


 不安によりつい声に出してしまった俺の考えに皆の顔が曇る中、コルタス殿下が口を開く。


「確かに、その可能性はあるな。父上の気持ちは既に王太子である兄上に固まっている。貴族派がどう動こうとも変わる事はないだろう。兄上が王となったら貴族派は終わりだ。もう形振り構っている余裕は無くなり、武力で抵抗してくるかも知れない」


「もしそうなってしまったら、このインファネースにどんな影響がありますの? 」


「それは実際に起こってみないと分からないな。でも安心しろ、俺が必ずお前とこの街を守ってやる。誰にも俺達の婚姻の邪魔はさせない」


 王妃様とシャロットから、結婚はインファネースが独立してからだと言われたコルタス殿下が燃えていらっしゃる。まぁ、待ち望んだものが漸く得られるのだからそれは仕方ないか。


「しかし、ライル君が王都に呼ばれるとはのぅ…… 陛下はそれほどに本気という事なのじゃろうな」


「それだけじゃないわ。陛下は御自身の退位と王太子の即位、そしてインファネースの独立をそう時間を掛けず一気に行うつもりのようね」


「確かにな…… ライルが呼ばれたのが良い証拠だ。コイツが関われば事は大きく動くだろうさ。当の本人には自覚はないだろうけどね」


 何故か代表達が物知り顔で話を進め、呆れたような視線を俺に向けてくる。


 いや、何か随分と評価されているな―― されてるんだよね? どうして皆そんな顔で俺を見るの?


「陛下から連絡があれば、私も王都へ戻るつもりです。なのでライル君には一緒に来て貰います。貴方とそのお仲間達には大いに期待していますよ」


 やべぇ、王妃様からのプレッシャーで胃に穴が開きそうだ。ウェアウルフとの事で少し手の内を見せすぎたか?

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